第2話・上
ひどく悪い夢を見た。体を起こし、不安になって横を見る。少女はいつもの通り穏やかな寝息を立てている。僕の右腕に怪我はない。
あれはなんだったのか、考えれば考えるほど不安になって、それでも記憶にこびりついて離れそうにない。
僕が起き上がったからか、二人が目を覚ました。
僕を含め二人の少年と、一人の少女。名前はない。年は、多分十四歳。少女だけは一つ下。三人で寝るには狭い土と草の家だから、誰かが動けば目が覚める。
「おはよう、めずらしく早起きだね」
少女が言った。僕は普段二人より早く起きることはない。
僕はつとめて気取られないよう、心配させないように応えた。
「うん。なんでだろね」
外に出ていた少年が戻ってきて、首を縦に振った。少年は無口で、長い付き合いだからわかるが今のは「外に人の痕跡はなかった」という合図だ。
今日は寝床を変える必要は無さそうだ。
と思っていたが、昼になって煙が見えた。誰かが焚き火をしている印。残念ながらすぐに移動しなければならないとわかって憂鬱になる。日が暮れれば森の中では動けない。
疲れた足に鞭打って歩く。僕よりも体力がない二人に速度を合わせているからそこまで辛くはないが。建材になりそうな草木を拾い集めながら、限界まで進む。
途中で川を見つけた。水は澄んでいて浅く、流れも早くないので、今日はここに寝泊まりすることにする。
「冷たっ」
何日分かも分からない汗と土埃を洗い流す。
「あはは、つめたいね」
特に少女は嬉しそうにはしゃいで、僕たちに水をかけてくる。どうせすぐ汚れるとはいえ、体はきれいにしたいものだ。
水浴びを終えると、疲れが溜まっていたのか急に眠気に襲われる。軽く均した土の上に草を敷いて、簡単に木を組んで屋根を作る。
寝転がる。歩き通しだったのもあって、僕はすぐに眠りに落ちた。
「おやすみ」
薄い意識に少女の声が聞こえた。
「さよなら」
聞き慣れない声が、少し後に聞こえた気がした。
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