Daily 6
彼女は沢山のことを尋ねてくる。
僕の誕生日、好きな物、嫌いな物、得意なこと、苦手なこと。
事情聴取かと思うくらいの質問を食事を取りながら受けた。
あとは彼女の周りで起きた話を少し。
そんな中でもある程度の情報は手に入れられたかな。
なんと先日、ミハイルに意地悪は良くないと直談判したらしい。
確かにそんなことがあったらしいのだが結末が全く違うのだ。
ミハイルは意地悪をしたのではなく、女生徒が裁縫をしているのを破壊行動と勘違いをしてしまって声をかけただけだった。
その女生徒にもルカを通して確認済みだ。
然しこの女はそれをミハイルが苛めたと決めつけて悪にしたのだ。
本来であれば身分が上のものに対しての不敬罪に問われるところだが、ここは
裁判にかけるまでも無くただの子供の喧嘩で済まされてしまうだろう。
もっと決定的な証拠を見つけなければ。
僕は躍起になって調べた。
その途中、ミハイル達と接触してしまった。
ミハイルからと言うよりも、ミハイルの友達が僕に接触してきたという方が正しいのだが。
もう現場は修羅場である。
嘘でもミハイルにはルメルシュ嬢と一緒にいるところを見られたくなかった。
そしてまた今日も遭遇してしまったのだ。
今度はエリスも一緒だった。
少しごたつきはしたが、何とか収まったかと思えば今度はルメルシュ嬢のお守りが僕を待っていた。
前回も他の男達であれば庇護欲をそそられるような表情でこんなことを言われた。
『ごめんなさいセリス様。アイリったら皆の前であんなこと言っちゃって…。でも、皆に知られても良いって思えるくらいセリス様の事が好きなんです!』
うん、君のおかげで絶賛僕への周りの評価は右肩下がりだ。
これじゃあ幾ら皇太子といえど、何時廃位させられてもおかしくない。
一応、両陛下には事情を話してあるのでそんなことにはならないと思うが。
そんなこんなで昼休みの時間にエリスと会い情報共有を済ませ、僕ははしたなくもテーブルの上に伏せていた。
「ねー、ホントごめんってば。」
「次ミハイルに手を出したら許さないからな。」
「わかってるよ!……はぁ。何も知らないミハイルが不憫で仕方ないよ。」
知られても構わないが、ミハイルは素直すぎるのでルメルシュ嬢やその取り巻きにバレる可能性が非常に高くなる。
それはなんとしても避けたいので結局教えなかった。
事が終わりを見せた時にミハイルには本当の事を言おうと思っている。
ミハイルとの平和な結婚生活の為にも頑張らなければ!
「話を戻すがミハイルの周りで変わったことはある?」
僕は気を取り直して情報交換を再開した。
「そうだね〜、今のところは特に。そっちは?」
「一般クラスを中心にだが僅かにルメルシュ嬢を皇太子妃にって声が上ってるみたいなんだよ。理由としてはミハイルと違い、誰にでも優しく気遣いのできる少女、まるで聖女の様だと持ち上げられている。」
僕からすればミハイルこそが聖女に相応しいと思うけれども。
「聖女ってカンジじゃないでしょ。そんな尊い女性なら普通恋人達の仲を裂こうとはしないよ。」
ごもっともだ。
全て素の性格で行っていた事であれば大分恐ろしい女性だ。
でも僕は彼女には裏の顔があると踏んでいる。
彼女のことをもう少し詳しく調べる必要があるな。
「そういえば、聖女って言葉で思い出したんだけど今年って確か予言の年だよね?」
エリスの言葉でふと思い出したことを口にする。
5年前程だろうか。
帝都ジルヴァーナにある大聖堂に所属している大神官ルベルに神託が下った。
『星が五回空を回った時、清らかなる乙女が聖地に降り立ち人々を浄化せん。』
要約すると5年後に清い乙女が現れるということだが、それが誕生を意味するのか覚醒を意味するのかはまだ分かっていない。
まぁ、この件とルメルシュ嬢との関連性はほぼ無いので気にする必要もないのだろうけど。
「…そうだっけ?わたしはあまりスピリチュアル的なものは信じていないから覚えていないや。」
エリスは呆気からんとそう言ったが何か気にしているようではあった。
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