Episode 7
それからは比較的平和に1日が終わり、誰かに何処かへ誘われることも無かったので真っ直ぐ屋敷へと帰路についた。
相変わらず学院内で私の通った道のあとは私への謂れ無い言葉や今日のルメルシュ嬢との出来事の噂で溢れかえっていた。
本当に皆様お喋りに余念がありませんわね。
ガタンゴトンと馬車に揺られながらぼんやりと外を眺めていると、笑い声を上げながら追いかけっ子をする子供たちや井戸端会議をする奥方達が目に入った。
ふとジェーンハルト家が治める領地リブリエでの記憶が思い出される。
まだ領地にいたあの頃は幼くて
幼かった頃の自由な時間が懐かしい。
時折屋敷に遊びに来ていたあの少年は元気にしているのだろうか。
領地にある本邸で過ごしていた時期に何度か遊んだことのある少年。
貴族の子息と言うわけでもなく、かと言って庶民の子供にも見えない姿の彼は不思議と本邸のメイドや執事達とも仲が良かった。
何方かのお子様だったのかしら。
今頃何をしていらっしゃるのでしょう。
思い出に耽っているといつの間にか帝都にある
ここには現在私と私の身の周りをお世話してくれるメイドが数名と執事が1名しか在住していない。
両親は領地の
他の貴族の方達が主に帝都で生活する中、お父様は公爵と貴族界では最高位の爵位を持っていながらも真面目に領地を治めていた。
『領民が居てくれるからこその身分だ。責務を放棄することは赦されない。』
お父様がよく私に言って聞かせてくれた。
最早彼の口癖でもある。
怠慢を嫌う父は他の貴族達とは違い1年の8割以上を領地で過ごしている。
それに伴って母上も領地で過ごすことが多い。
勿論私も殆どを領地で過ごしてきましたが、レーライン学院への入学に伴い帝都へ移ってきたのでした。
「おかえりなさいませお嬢様。」
彼は私の生まれる前から公爵家に使えている執事で、現在はこの家の世話を任されている。
「本日もお早いご帰宅で御座いますね。」
「はい。暫く殿下とはお会いしておりませんので。」
今までは学院の帰りに殿下から出掛けようとお誘いを頂いていたので同伴していたが、ルカから接見は控えるようと言われた日からはパタリとその誘いすら無くなってしまった。
今頃殿下はどう過ごされているのだろう。
「そうでございましたか。あぁ、お嬢様!」
フィンが何かを思い出したかの様に声を掛けてくる。
「早くお着替えを致しましょう。お嬢様にお客様がお見えです。」
お客様ですか?
なんとも珍しいこともあるものですわね。
その時の私は呑気にそんなことを思いながらメイドに手伝ってもらい普段着慣れたドレスに見を包んだ。
…あの、普段より派手目なのは如何してなのかしら?
少しの疑問を連れてドレスルームから出れば執事から待ち人が応接室にいると伝えられた。
お部屋の扉をノックしてから入室すると何処か懐かしい面影を摸した方がソファに座っていた。
「久しいな!元気にしていたか?」
「……エリスさん?」
その人だと認識するのに随分と時間がかかってしまった。
何故ならばこの人は幼い頃によく領地の邸に遊びに来ていたあの時の少年だったからだ。
今では軍服のようにも見える真っ白の洋服を着こなしているようです。
彼とは殿下と会うよりも前に出会い、気づけば姿を消していた。
十年以上の月日を経ての邂逅だった。
「あ!覚えててくれてた?嬉しいなぁ〜。会わなかった間元気にしてた?」
飄々とした雰囲気は小さかった頃と変わりはないようですね。
「えぇ、それなりには。エリスさんこそどうされていたのですか?」
あの時は何も無くお別れをしてしまったので彼のその後が全く分からない。
どう過ごしていたのか気になっていた私は懐かしさもあり、いつもより緩んだ顔で尋ねていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます