Episode 6
☆
ジェーンハルト一行が去った後、その場にいた者達は互いに意見を交換しあっていた。
「あれが公爵令嬢の余裕ってやつか。」
「前回よりも明らかにルメルシュ嬢を敵視していた。これは後々恐ろしい事が起こりそうだな。」
周りの者たちからは宣戦布告し合っていたように見えたようだ。
お互いに相手を挑発するような発言。
場はとても張り詰めていた。
アイリーンも今回ばかりは可愛らしい笑顔ではなく少し泣きそうな表情である。
「ごめんなさいセリス様。私ったら皆の前であんなこと言っちゃって…。でも、皆に知られても良いって思えるくらいセリス様の事が好きなんです!」
目尻に小さな涙を浮かべセリスの手をきゅっと握る。
それに答えるようにセリスもアイリーンの手を握った。
「ありがとう、ルメルシュ嬢。こんなにも喜ばしい言葉を聞けて…僕は幸せ者だな。」
第三者から見れば二人は似合いの恋人たちだろう。
相思相愛。
まるで二人の為にあるような四字熟語だ。
そう、第三者から見れば、だ。
★
本日の昼食はお魚のソテーとコンソメスープを戴きます。
イヴァノン嬢とベルベネット嬢もご一緒にですが、彼女たちは私とは違うお料理を頼んだようです。
意外と食べるのですね、イヴァノン嬢。
「納得いかないですわ。」
ポツリと呟いたと同時にベルベネット嬢が持っていたシルバーを置いた。
「何故ジェーンハルト様があの者を立てなければならなかったのですか?」
そう言った彼女の表情はとても悔しそうにしていた。
どうしてその様な顔をなされているのでしょうか?
本人に聞く前にまずは何の話をしているのか把握する必要がありますわね。
以前の私であれば何も考えず発言をしていましたが、ルカに指導をして頂いたお陰でまずは立ち止まって状況の把握をするという術を学びました。
今の私の会話術に死角はありませんわ!
「あの者とは誰のことでしょう?」
まずは誰についてのお話なのか。
「勿論ルメルシュ嬢ですわ!」
あら、先程の方のお話でしたか。
「図々しくも殿下を恋しいだなんて!貴族界ではジェーンハルト様がご婚約者である事は周知されていることです。それなのにあの者は目の前で!!」
「落ち着きなさいマルガレッタ。貴女の気持ちも分かるけれど食事中に大きな声をだすものではありません。」
各々思うところがあったようですね。
きっと私の発言が原因でこの様に激昂されているのでしょう。
また気付かぬ内に誤解を生んでしまったのかしら。
そうなのであれば誤解を説かなければいけませんね。
「マルガレッタ嬢。このご時世、自分の意見をハッキリと示せる女性はそう多くはありません。私は素直に彼女のその姿勢を良いものだと思ったからこそ賞賛致しました。…難しいかもしれませんが理解してくれると嬉しいです。」
可笑しい人と呼ばれても結構。
私は確かに彼女のハキハキと話す姿に見惚れ、素晴らしい人なのだと思ったのです。
マルガレッタ嬢にそう伝えると彼女はただ『口惜しいとはこのことですわね…。』とだけ言ってそれ以上は何も言いませんでした。
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