Episode 4
エントランスでの殿下達との交流から約2週間が経過した今日この頃、変わったことが御座います。
一つ、積極的に皆様との親睦を深めようと努力をした成果が出たのです!
なんと私にも遂にお友だちが出来ましたわ!
皆様、ご自身のお父上が大好きな方たちばかりでよく武勇伝を聞かせてくれますの。
身内話をしてくださるということは私のことを心から信頼をおいてくださっているのですね。
昼食も空き時間にも一緒に過ごしてくださる方がいるなんて、今までよりももっと毎日が楽しく感じます。
本日もこれからお友だちの方々と昼食を摂りに食堂へ参りますの。
「あら、マルガレッタ。またその様に間食なさって、お体を壊しても知りませんよ?」
「テレーゼ様ったら意地悪ですわね。ジェーンハルト様もそう思われませんこと?」
テレーゼ・イヴァノン伯爵令嬢とマルガレッタ・ベルベネット子爵令嬢。
お二方はお母様が姉妹らしく、従姉妹同士の関係なのだとか。
たくさんのお友だちが出来ましたが、二人とは毎日一緒にいる程の仲ですわ。
因みに学級も同じでしたの!
きっとこれは神の思し召しだったのですね。
そして、あともう一つ変わったことがあります。
「セリス様!今日もお昼は一緒にランチしませんか??」
「えぇ、僕で良ければ。」
なんと殿下とルメルシュ嬢が一緒に腕を組みながら歩いていく光景をよく見るようになったのです。
私でもあ…あんなに近くに身を寄せたことなんてないのに!
破廉恥ですわ!!
そして、例に漏れることなく勿論その姿はお二人も見ているわけで
「またですか。ジェーンハルト様がいらっしゃると分かっての行動なのかしら。」
イヴァノン嬢は溜息を吐きながらそう言った。
イヴァノン嬢、殿下たちからはこちらはわからないと思うのですが。
「それに殿下を名で呼ぶだなんて。男爵令嬢風情が失礼極まりないですわ。」
ベルベネット嬢も彼女に続いて殿下たちの事を話す。
あの、お二人ともルメルシュ嬢に対して厳しくはありませんか??
はっ!
私、何度も群像劇の小説を読んで学びましたわ!
ここはもしかして良き友として二人を宥めなければならない場面というやつですわね。
コホン、と一つ小さく咳払いをすると柔らかい笑顔で令嬢二人に声を掛ける。
「お二人共、落ち着きましょう?ただ仲が良いだけですわ。貴女達が気にかけることはありません。でも私の為に心配して頂き有難うございます。」
ふふっ、完璧ですわ。わ
自信に満ちた笑顔を浮かべていると、この世の方とは思えないほど恐ろしい顔になった二人に詰め寄られてしまった。
「何を仰ってるのですか!殿下はジェーンハルト様の婚約者様でしょう?!」
「あの様な礼儀もわからぬ者を許してはなりませんわ!!殿下の優しさに漬け込んでジェーンハルト様を蔑ろにするなんて許される行為ではありませんわ!」
お二人共圧が凄いですわ…。
私が殿下と一緒にいることが一切ない代わりに、他の令嬢が殿下の隣を独占している光景は確かにあまりよろしくないのでしょう。
然しルカからは接見は控えるようにと言われてしまっていますし…。
この場合はなんと言って場を治めれば良いのでしょうか?
「行きますよ、ジェーンハルト様。」
何と言えばいいのかと考えているとイヴァノン嬢に腕をグイグイ引かれながら何処かへ連れられてしまう。
その先に見えたのは殿下とルメルシュ嬢の姿。
これはまさか…。
「あの、もしかして殿下の元へ向かわれてます?」
「当たり前です。あのような光景は見るに堪えません。」
まだ心の準備が出来てないのですが!!
どんどんと食堂へ入っていった陛下達との距離が詰められていく。
そして遂にたどり着いてしまった。
「突然失礼致します殿下。少しお時間を頂いても宜しいでしょうか?」
凛とした佇まいを崩す事なく、そして私の腕も離すことなくイヴァノン嬢は殿下へ話しかけた。
こうして見ると令嬢がとても恰好良くみえますわ。
「あぁ、貴女は確かイヴァノン伯爵家の御令嬢ですね。僕に何か御用でしょうか?」
殿下とイヴァノン嬢が何の会話をしているのかよりもある事に気を取られて思わず集中が途切れる。
そのある事とは、普段と変わらない表情と姿勢の殿下に対し、未だに殿下と腕を組み続けているルメルシュ嬢が子鹿の様に殿下の後ろへと身を隠そうとしている行為。
「なってませんわ。」
二人の会話を遮るように私の声が食堂に響き渡る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます