Episode 3
暫くの沈黙が続いた後、殿下が再び話し始める。
「えっと、話を元に戻すね。ミハイルが悪く言われてしまっていたのは以前からだけど、僕に対して文を送りつけて来たり、
寂しそうな顔をしたかと思えば今度は恐ろしい表情になっていますわ。
それよりも数少ない証拠を根拠にそんな事まで推測してしまうなんて!
殿下は本当に聡明でいらっしゃるわ。
私が殿下の名推理に感動していると、ルカが手に持っていた文の束を燃やしてしまっていた。
あぁ、まだ中を見てませんのに。
「えぇ、黒と言い切っても差し支えないでしょう。未来の国母に対する態度ではありません。」
ルカもなんて恐ろしい顔を!!
ここは落ち着かせないと!
「お二人共落ち着いてください。お手紙を頂いただけでその様にお怒りにならなくても…。」
「怒るに決まってるでしょ!」
殿下から両肩を掴まれ食い気味にそう言われる。
気迫が凄いですわ、殿下。
「僕とミハイルが婚約を交わしている事は周知されて然るべき事なんだよ?それなのに恋仲を裂こう
恋仲?!
恋仲だなんて…こう口に出されるととても恥ずかしいですわ。
赤面してしまっていると、殿下が気付かれたのか般若のような顔を収め普段の柔らかい笑みで見つめられた。
「僕結構ミハイルの事を溺愛してるんだけど、そろそろ気付いてくれるかな?」
「溺愛だなんて…は、破廉恥ですわ!」
恥しさが溢れてしまい両手で顔を隠す。
こんな真っ赤なお顔を殿下にお見せなんて出来ませんわ!
もじもじとしているのを見かねたルカが少々呆れた様子で発言する。
「あの、夫婦漫才は他所でしてもらっても宜しいでしょうか?」
ふ、夫婦?!?!
まだ婚姻を交わしておりませんのにそんな、気が早すぎますわ!
ルカったら私を羞恥心で殺害しようとしているのかしら?!
「殿下、何とかして下さいよ。このポンコツ。」
「ポンコツだなんて…。君の姉だろう?この様に悶える姿も愛らしい。」
「……ソウデスネ。」
私の極度の照れが落ち着いた頃には、今後如何するかを話し始めていた。
私的には一方的であればその様に気にする事はないと思うのですが、意見するとまたルカや殿下が噛み付いてきそうなのでやめておきます。
「ひとまず、周囲からのジェーンハルト様への誹謗中傷を無くさなければなりません。その為には…」
「その為には…?」
一体どんな秘策が?!
殿下と共に次に続く言葉を固唾を呑んで待つ。
「ジェーンハルト様!」
ルカから覇気のある声で名前を呼ばれこちらも背筋を伸ばし大きな声でお返事をしてしまう。
あら、はしたないことをしましたわ。
「まずは貴女の会話能力を底上げします!!」
????
私、こう見えて会話は得意な方ですわよ?
ルカったら何を言い出すかと思えば、そんなの心配するだけ無駄ですわ。
「何を言ってらっしゃるの?私、ご学友の方達との会話は結構弾んでいるのですよ?そんな会話能力の底上げなんて」
「正気ですか貴女は?!会話が弾んで円滑であれば皆様口を揃えて『極悪令嬢』だなんて呼びません!!」
そんな鬼気迫る勢いで言わなくても。
私、そんなにお喋りが下手なのかしら。
しゅんと肩を落として俯いているとグッと肩を掴まれる。
見上げれば満面の笑みのルカが自信有りげな表情でこう話し始めた。
「大丈夫です、ジェーンハルト様!貴女の欠陥はキチンと最後まで話を聞かないというところ。そこさえ直せば万事上手くいく筈です!!」
なるほど!
「…確かに、私ったら自身の感情に任せてしまって偶にお話の内容が分からなくなることがあります。そうですわ!淑女たる者、常に何事にも冷静に会話をせねば!!」
そう、ジェーンハルト公爵家の娘に産まれたからには社交界でも学院内でも完璧な淑女であることが求められます。
しかし先程からたまに悪口を言われている気分にたまになるのはどうしてでしょう?
いいえ、これは私の為に打ってくださった鞭。
殿下の従者を務めるルカの指南に従えばより一層高みへ近づけますわ!
「あと、ジェーンハルト様には大変申し訳ありませんがしばらくの間は殿下との接見を控えて頂きます。」
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