誰のために、何のために

 


 小説を書く時に読み手を意識しながら書くのか、書かないのか。書き手によってそれぞれです。

 私は最初はエッセイの一回目にも書いたように、ともかく自分の百合妄想を形にしたくて小説という表現にたどり着きました。

 だからそもそも読者というものを想定していませんでした。

 読むのも知り合い2〜3人だろうと思ってましたから、私のことを知らない人が読むわけないだろうと。

 けれど今では知り合いよりも全く知らない方たちの方が圧倒的に読んでくれているわけです。

 未だにそれを考えるととても不思議な気持ちになります。

 私は書き手としてめちゃくちゃ読まれてる、人気があるってわけでもないので、わざわざ選んで読んでくださる方がいることに定期的に新鮮な気持ちで驚いたりしています。

 読んでいてくれる人がいるなら、やっぱりその方たちが楽しい、面白い、読んで良かったと思えるものを書きたいと最近は思うことも増えました。

 私は器用に何でもできて書ける人間でもないので、あまり意識しすぎても自分に変なプレッシャーを与えそうなので、基本的には自分のために。でも読んでくれる方のことも忘れずに。そんなスタンスで書いています。

 でも時々誰か一人のために書いてみたくもなります。

 小説を書いてる人は読んでくれる人、自分の小説を楽しんでくれている人が大好きだと思うんですよね。私ももちろん大好きです。

 だから好きでいてくれる人が読みたいと思う理想の百合を書いてみたい。

 ピンポイントで狙って書き落とすようなことも時々してみたくなります。

 普段はたとえるなら、目の前に豆を撒くような感じなんです。誰かいたら、誰かしらに豆が当たる。当たらない人もいる。誰に当たるかは分からない。

 けど狙って書くのはダーツの矢を的の真ん中に向かって投げるような、そんな行為。

 それでもし上手く当たったら嬉しい。

 なかなかそういうことはしないですし、私はどうも狙って書くと、ことごとく外すので向いてないのですが。

 豆を撒くみたいに書いても、もしかしたらその一粒が誰かの心臓を射抜くかもしれないと考えると、それはそれで楽しくもあります。

 私は絵を描いている時からそうなのですが、百人に「何となく好き」と思ってもらえるより、三人くらいの人に「ものすごく好き」と思ってもらえる話が書きたい。

 好きの濃度が高い方が個人的には嬉しいので、いつかそんな話もたくさん書けるようになりたいです。

 

 

 そして何のために書くのか。もちろん百合が好きだから百合を書いているわけです。ミステリーが好きな人はミステリーを書くし、ホラーが好きな人はホラーを書く。だから私も百合を書く。自分のために。

 多分、自分の浮かばれなかった気持ちとか、浮かばれない気持ちを慰めるために書いているような部分もあります。

 現実で上手くいかないからこそ、小説では幸せな話を書きたい。

 それは自分の中の百合を形にしたいと思った時からあることです。

 それと同時に、最近は同じような気持ちでいる人の心をほんの少しでも癒せたらいいなと思うことが増えました。

 というのも、思った以上にセクマイの方が読んでいてくださってると知ったからです。

 女性が女性を好きでいることは、残念ながらまだまだ大変な部分もあります。

 結婚だってできませんし、同性同士に理解のない人もいます。

 それでも誰かを好きでいること、その相手が同性であっても、恋する気持ちってやっぱり幸せなんです。

 好きな人のちょっとした仕草にどきどきしたり、何気ない一言に喜んだり。でも時には切なくなったりもする。

 そういう気持ちは男女の恋愛と何も違わないんです。自分や相手の性別がどうであろうと、好きな気持ちは一緒です。

 女の人が女の人を好きになってもいいし、その気持ちや想いは誇れるものだと思うのです。

 私はユニ先生と作品に出会った時に、「女が女を好きでいてもいいんだ」と前向きに思えるようになりました。そっと背中を押してもらえたような。応援してもらえたような。

 だから私もそういう存在になれたらいいなと思いながら百合を書いています。まだまだ技術も筆力も足りませんが、微力でも誰かの力になりたいです。

 思うだけならただなので。

「幸せな百合を書きたい」というのが私のモットーでもあるので、これからも読んだ方が少しでも幸せな気持ちになれるような話を書けるようになれたらいいなと思います。 

 

  

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