曲げられない
シヨゥ
第1話
強いやつは強い。それだけの事実に圧倒されている。
こいつには敵わないと分かっていた。
それでも戦わねばならない時がある。それが今だった。
ちょっとした行き違い。ちょっとした価値観のズレ。それだけなのに腹が立つ。
了見が狭いと言われればそれまで。でも俺には譲れぬただ一つの価値観。それを傷つけられた。その一瞬で体温があがったように感じた。まるで戦えと本能が叫んだような体感。
「戦わねば今まで信じつづけてきたものに申し訳が立たないぞ」
そう本能が叫んでいるような感覚。もしかしたら気のせいかもしれない。それでも圧倒的な力をもつ彼の前で拳を握る。爪が食い込み痛みがまた体を、心を燃え上がらせる。
わずかに残った理性でぐっとこらえて謝罪を求める。しかし声は喉からしか出ない。それでは通じない。逆に謝罪を求められる始末。
いつまでも平行線。焦れた。焦れて終いに拳が空を切る。
ボコボコにやられた。
しかしながら一矢報いてやった。「分かった」と言わせてやった。何度でも立ち上がりその言葉をもぎ取ってやった。
力づくだが価値観を認めさせてやった。
もはや彼はいない。ここに残っているのは圧倒的な達成感に浸る自己中心的な僕だけだった。
曲げられない シヨゥ @Shiyoxu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます