第20話 [一緒にご飯]
春海さんに起こしてもらい、僕たちは夜ご飯を食べることにした。
どうやら春海さんはペペロンチーノを作ってくれていたみたいだ。
「ふぁああ! 美味しそう……!」
「んぐふっ……」
「ん? 春海さんどうしたんですか?」
なんだか顔が赤いような……。
「な、なんでもないのだ! 寝顔もいいけどこっちも中々……」
「はっ!? お兄ちゃんの寝顔を見られてしまったのか……! あたしのバカ!」
華も何か言ってるけど、せっかく作ってくれた料理が冷めちゃうから食べちゃおう!
「いただきまーす。んむ! 美味しい!!」
春海さんが作ってくれた料理は、ほっぺたが落ちそうなくらい美味しかった。
「ふ……ふふ……。どうですか、お兄ちゃんの前では人気アイドルなんか道端の石ころのように存在が薄くなるんですよ……」
「そんなこと百も承知なのだ……。ちなみにうちは一発で見抜いてたのだ」
「はっ、強がって。あたしのことが羨ましいですかねぇ〜?」
「んなっ!? そんなわけないのだ!!」
「図星ですか、はいはい」
「ぐぬぬぬ……!」
ん……?
僕が料理に夢中になってたら、なんか二人が喧嘩してる!?
と、止めないと!!
「二人とも喧嘩はダメだよ!」
「う……ごめんなのだ……」
「はぁい、お兄ちゃん。あっ! じゃああたしに“あーん”して?」
「へっ!? なんて羨ましいのだ……」
「まあ別にいいけど」
「えっ!? それが普通なの!?!?」
春海さんがすごく驚いてるけどこれって普通なんだよね?
お母さんも華も、吹雪も『これが普通だから!』ってずっと言われ続けてるから……。
しかも華は昔から甘えん坊だったからあーんとかもよくしてあげていた。
昔に比べたら回数は減ったけれど、今でもよくあーんを要求される。
……そういえばお父さんも出張に行く前にあーんを要求されたなぁ……。
味変わらないのになんでだろう?
「はい、華。あーん」
僕はペペロンチーノをフォークで巻き取り、華の口元までそれを近づけた。
「あーんっ♡ んん〜〜♪」
「ぐぬぬぅ……。うちへの見せつけてか……!」
パクっと一口で食べると、満面の笑みを浮かべていた。
華はこうしてらものすごく美味しそうに食べてくれるから、全く嫌ではない。
……ってあれ!? なんだか春海さんがこっちを睨んでる!
春海さんはあまりこういうの好きじゃなかったのかな……。
悪いことしちゃったなぁ……。
「うちもされたいのだ……ッ! けど流石に出会ったばかりでこれは図々しすぎるのだ……。とほほ……」
今度は落ち込み始めちゃった!?
ど、どうしようかな……。
「あ、あの……。春海さん」
「なんなのだ!? もしかしてあーんしてくれるのだ!?」
「えっ、あーんされたかったんですか?」
「…………あっ」
春海さんはカーっと顔を赤くしてそっぽを向く。
なんでされたいのかはわからないけど、これで機嫌が治るならしてあげよう!
「春海さん、はいっ、あーん」
「ふぁーー!! あ、あーん!」
春海さんがパクっとフォークを食むと同時に、ドアがガチャリと開く音が聞こえた。
「ただいま〜…………。あら〜、誰かしらこの女は〜?」
お母さんが帰ってきた。
お母さんは笑顔だ。だけれどいつもの笑顔なんかとは比べ物にならないくらい冷え切った笑顔をしている。
少しだけ目を開け、春海さんを睨みつけていた。
「お、お母さん……。これは……」
「詳しく説明させてもらうわ〜……」
そのあとなんとか僕たちは弁解するのであった。
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