第19話 [人気アイドルも寝顔には敵わない]
「「ただいま〜」」
「おっ邪魔するのだ〜!」
華と春海さんが話し合いをした後、なぜか華が積極的に迎え入れようとして、僕が渋々折れた。
「さてさて! それじゃお兄ちゃんはソファに座って休憩してて! あたしは春海さんとちょっと話し合いをしなければならないので……」
「? わかった」
話ってなんなんだろう……。
気になるけど、『女同士の会話は聞かない方がいい…』ってお父さんが言ってたなぁ……。
大人しくソファに座っておこう……。
「ふぅ〜」
それにしても今日は疲れたな。
人助けしたり、いっぱいジュース飲んだり、大人気アイドルに会ったり……。
んー……ちょっと眠い……。
ちょっとだけ寝ちゃお……。
「…………すー、すー……——」
ソファにこてんと寝転がると、すぐに僕の意識が途絶えた。
◇
—優花視点—
「さって! こ〜んなもんなのだ」
うちの名はご存知の通り春海優花。
ダサい男どもに襲われそうになっているところに、笹田七美くんという子が助けに入ってきてくれたので、恩返しをしている最中なのだ。
……というか“男”……?
あの見た目は完全に美少女が男装している風にしか見えなかったのだが……。
と、まあ、そんな可愛い男の子に助けられたのだ。
再開したあと早速恩返ししようとしたけど、七美くんの妹ちゃんがブラコンで警戒心MAXだったけど、『メロメロにする方法を伝授しよう』と言ったらあっさりオッケだった。
この兄妹チョロそうで心配になるのだ……。
さて、回想をしているうちに料理が完成したのだ!
今作っていたのはペペロンチーノ。
冷蔵庫などに入っているものを使わせてもらい作ったのだ。
……一応こんな見た目だが大学生、だから自炊もちゃんとできるのだ……。
「よし、さ〜てさてと、七美くんと華ちゃんをお呼びするのだ〜」
リビングの方を見ると、ソファで横になっている七美くんの姿が見えた。
眠っているのだろうか。
「ほれほれ七美くんよ、うちの料理ができたの……だ……」
ソファの近くまで寄り、七美くんを起こそうとした途端、うちはフリーズしてしまった。
ここ数年、うちアイドル業をしていて、“癒し”に飢えていたのだ。
そんな飢えを満たすどころか溢れるぐらい可愛い生命体が目の前にいたのだ。
「んゅー……すぴー……」
「かっ……可愛すぎるのだぁ……ッ!!」
気づけばうちは呼吸が荒くなり、サウナにいるかのように体温がみるみる上がってゆく。
そして、自然とうちの手は七美くんの頭に引き寄せられていた。
だ、大丈夫……。
華ちゃんは自分の部屋でうちが伝授した相手をメロメロにする方法を実践してるし、すぐに七美くんを起こせば大丈夫なのだ……。
そーっと、七美くんの頭に手を乗せ、さらっさらの髪を撫でた。
「ん〜? んー♡」
「ぐはぁっ!! 限界突破してしまうのだぁああ!!」
こ、これはうちの心に刻まれたのだ!
七美くんは……うちなんかよりも何十倍も可愛くて、世界を揺るがす力を持っているのだ……。
そう確信した瞬間であった。
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