第17話 [クレープとカップル用ジュース]

 僕はおとなしく席についた。

 このお店ではクレープやパフェ、色々な甘いものを注文できるらしい。

 来て良かったと思い始めてしまった。


「華は何頼むの?」

「ふっふっふ……。秘密♡」

「えー? 気になる……」

「店員さーん、あたしはこれでお願いします」


 うーん……。僕は何頼もう。

 チョコパフェも美味しそうだし、ミニケーキも捨てがたい……。

 んー……よし決めた!


「僕はこのクレープでお願いします!」

「了解しました! しばしお待ちを」


 クリームたっぷりでイチゴも入っている美味しそうなクレープを頼んだ。


 結局華は何を頼んだんだろう?





「こちら、イチゴとクリームたっぷりのクレープになります」

「おおお……美味しそう!」


 運ばれて来たクレープはすごく輝いて見える!

 あ、よだれが……。


「可愛い……」

「そうだね! このクレープ可愛いね!!」

「違う、お兄ちゃんが……」

「ムゥーー!!」

「なんでもなーい!」


 もう……可愛いよりかっこいい方がいいのに……。


 悶々とした気持ちを抱えながらも、僕はクレープを一口食べた。


「お、美味しい〜〜!!」

「カーッ! ぐうかわ」

「華どうしたの? もしかして僕のクレープ食べたいの? 一口だったらいーよ!」


 僕は一口だけ食べたクレープを向かいにいる華の口元に近づけた。


「はぅっ! い、いただきます! むしゃあ!」

「あーー! 一口が大きい!!」

「ご、ごめんお兄ちゃん。あとであたしの頼んだやつ一緒に飲も!」

「ううう……わかった……」


 クレープが一気に三分の一消失した……。

 ま、まあ華の分けてくれるなら許してあげてもいいかな〜。

 何頼んだんだろう……。


「お待たせしましたー。カップル用ピーチジュースになります。ごゆっくりどーぞ!」


 僕たちの席に運ばれてきたのは、二つのストローが特徴的なジュースであった。


「は、華……? これ間違って」

「いいや間違ってないよ! さっ、飲もうお兄ちゃん!」


 キラキラとひた瞳で僕を見つめてくるけど……流石にこれは……。


「は、恥ずかしいよ……」

「え〜〜? でもこのジュース、この店ですごく美味しいって評判らしいよ?」

「ぐ……」

「しかもカップル用で特別仕様にもなってるらしいよ!」

「う…………しょ、しょうがないから僕も飲むよ! は、華もその量飲めないでしょ!?」

「ふっ、計画通り……! でもちょろすぎて不安になる」


 決して物につられたってわけじゃいからね!

 華がどうしても一緒に飲みたいっていうから……僕が飲みたいわけじゃないからね!!


「それじゃー飲も!」

「うん」


 一緒に飲み始めたけど、やっぱり恥ずかしい……。

 美味しいんだけどなぁ……。


「んんん……」

「んふふふ♡」


 華はすごい幸せそうに飲んでいるけど、僕の顔とか耳は赤くなってる気がする……。


 この尊い光景に、店員や客が釘付けになっていたことは、七美は知らない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る