第14話 [帰還、そしてとある噂]

 どうやら僕が寝ていたのは体育の時間だけらしく、授業に支障は出なさそうだった。

 僕は空いている教室で制服に着替えた後、自分の教室に戻った。


「あ、あれ!? 七美もう戻ってきた!」

「くっ……お見舞いに行けなかったのが悔やまれる」

「無事でよかったよぉおおおお!」

「無事なの!? 後遺症とか残ってない!? 大丈夫か!?」

「そんなのあったら泣いてまうど〜!!」


 教室に入るや否や、みんなから一斉に質面責めにあった。


「え、えと……とりあえず僕はなんも無かったから大丈夫だよ。心配してくれてありがと!」


 みんなから心配してもらえていたから、つい笑みがこぼれてしまった。


「な〜んだ、女神じゃん。ぐはっ……」

「ふーん、可愛いすぎ」

「なんかお前ら冷めてるようでベタ惚れじゃねぇか」

「七美くんが無事ならば、私は幸せです……」

「退院祝いしよーぜ!」

「うぇーい!!」

「バカ男子ども……」


 僕は聖徳太子みたいにいい耳を持っていないか、みんなが何言ってるのかよく聞き取れなかった。


 でもみんな心配してくれてたんだね!

 嬉しい!!


 細かいことは気にしない七美であった。





 とりあえず僕の気絶事件は終止符を打ち、いつも通りの日常に戻っている。


 今は放課中ですることがないため、次の授業の用意をしている。

 すると、前の席の男の子から話しかけられた。


「ななっち〜、そういえばあの噂って知ってっかぁ?」

「あの噂? ううん、知らないや。どんな噂なの?」

「んぁ、それがな、実は今人気ナンバーワンアイドルの——“春海はるみ優花ゆか”ちゃんがここら辺に住んでるっつー噂だ」

「へ〜。でも僕アイドルとか疎いからわからないなぁ……」


 ぽりぽりと頰を掻きながらそう言った。


「去年デビューしたんだが、爆発的にヒットしてんだよ〜。すんげー美人らしいぜ!」

「はぇー! すごいね! そんなに美人な人なら一回見てみたいね!」

「…………だが七美も同等、いや、アイドル以上に可愛いのでは……?」

「ん? なんか言った?」

「い、いや!? なんでもないぜ!!」


 焦った様子で前を向き、そのまま僕と同じように次の授業の用意をし出した。


 それにしても人気ナンバーワンアイドルかー。

 どんな人なんだろう……。

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