第12話 [保健室にて]
試合も順調に進み、僕が最初にボールを蹴る番となった。
「よ、よしいくぞ〜? ていやっ!!」
ボールを思い切り蹴ったつもりだったけれど、ただかすっただけでバランスを崩し、そのまま後ろに転んで頭を打ってしまった。
「う——」
そしてそのまま気絶をしてしまった。
「な、七美ぃぃ!!」
「七美くんが倒れた!」
「先生を呼べ先生ぃぃ!!」
「このボールは死刑だ……ッ!」
「バカなこと言ってねぇではよしろボケナス!」
あたりは大騒ぎ。
それに気がついた先生が駆けつけた。
「おーい、どうしたお前ら」
「な、七美くんが倒れて頭打って気絶しました!」
「なにっ!? よし先生が運んでおこう。お前らはそのまま続けていてくれ」
◇
「失礼します……っと、誰もいないのか……」
倒れて気絶した生徒をおぶって保健室にやってきたが、どうやら保健室の先生は運悪くいないようだ。
「打ち所が悪かったのだろうから、寝かせておけば眼が覚めるか……」
近くにあったベッドにおぶっていた生徒を転がせた。
「よっと。そういえば急いでいたが、誰が倒れたん……っ!?!?」
「うーん……うーん……」
そこには魘されているが、寝顔も一つ一つの動作もなんとも可愛らしい生命体がいた!
(って違う! 確かこの生徒は……笹田七美。男なのに可愛いと前々から思っていたが、眠るとさらに可愛くなるのか……!?)
「んむー……」
「しゃ、写真を撮りたい……ってダメだ! 生徒の写真を勝手に撮るなど言語道断!」
お、落ち着け……相手は怪我人だ。
というか頭を打ったのなら、正しい手当が……はっ、そうだ!!
「ふ、ふふふ……そう、これは手当だ……」
“手当”をするべく、この七美の頭に手を近づけた。
そして優しく頭を撫で始めた。
(これは手当だ。だから大丈夫……そう、大丈夫だ……)
そう自分に言いかけせながら七美を撫でていた。
だが、撫でているところは打ったところと全く関係のない前髪あたりであった。
「ん……ん〜〜」
「はぅっ!!」
気持ちよかったのか、二ヘェっと口角を上げていた。
(なんなんだこの破壊力S級の笑みは……!)
そろそろ本当に何かを破壊されそうになったので、パッと手を離した。
すると七美はもう一度唸り、こう言った。
「んん……もっとぉ……」
「…………」
先生は無言で立ち上がり、無言でグラウンドまで向かった。
——この後、先生vs生徒たちで圧勝したという伝説が生まれた。
(あれは……あれは反則級だろぉおお!!)
心の中で悶絶する先生であった。
◇
体育の先生が立ち去った後、この部屋に入ってきたのは保健室の先生であった。
「ふー、疲れた……。おや? 誰か寝ているのか。さて、もうひと頑張り……ぃいっ!?」
(な、なんなのあの可愛い生物は……本当にこの世に存在するものなのか……っ!?)
ベッドのすぐそばで七美の可愛さに当てられ、悶絶していた。
その場で立ち尽くしていると、二人の生徒がこの部屋にやってきた。
「すみませーん、この子が体調悪そうなので連れてきました」
「うぅ……ごめんね、わざわざ……」
そして、先生のすぐ近くまで近づいてきてしまい、七美を見てしまった。
「あれ? なんか先生顔が赤……はぅあっ!?」
「……? っ!?」
(ああ……二人とも手遅れか。っというか私もとうに手遅れだー!!)
やってきた二人の生徒の内の一人である、顔色の悪い子はみるみる精気が戻っていっていた。
「な、なんだかだるさがなくなってきた……!」
「あたしももっと元気が出てきたよ! な、なんなんだこれは!?」
「ふ、ふふふ……この可愛らしい子のためならば一日に三十時間ぐらい働けそうだ!」
三者三様、皆それぞれであったが、なぜかパワーアップしていた。
そし同じように、三人はもうすでに七美にメロメロになっていた。
「おーっす! 授業サボりにきました〜。って、うわっ!? なんなんだそいつ! 可愛すぎるにも程があるだろォォ!!」
今度はピアスに金髪、ギャルの生徒が保健室にやってきていた。
「う……うーん……」
少々うるさかったのか、七美は寝返りをうって反対側を向いてしまった。
「「「「っ!?」」」」
四人は起こしてしまったか不安になったが、七美はそのまま眠り続けていた。
「み、みんな。起こしちゃ悪いから、ね?」
「そ、そうですね……」
「残念です……」
「チッ、お、起こしたら悪いからな。だがもう少し見ときたかったぜ……」
保健室の先生以外はこの部屋から退散した。
【後書き】
やばいやばい……。
書き溜めてた分が無くなっちまう……!
うぉー!残りの夏休みを使うのだーーッ!!
(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾
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