第11話 [体育の授業]
二人の喧嘩が収まったあと、僕はごく普通に登校した。
「白銀さんおはよー」
「おはようございます、七美くん」
白銀さんは読んでいた本をパタンと閉じ、僕に目を向けた。
「……あら? 何やら疲れているように見えますが……」
「あ、うん。ちょっと朝色々あって……」
「こ、これはチャンス!!」
「え? チャンス?」
「な、なんでもないわ!? それより一時間目は体育だから用意した方がいいのでは?」
「はっ、そうだね!」
なんだか急にクラスのみんながそわそわしだした気がする……。
っていうかそろそろ着替えないと!
クラスにはいつのまにか男子は僕だけしかいなかった。
なぜかクラスメイトの男の子たちは僕が着替えの教室に行く前に着替え終わっているのだ。
なんでだろう……。
◇
「えー、今日はサッカーをするぞー」
サッカーかぁ……。
僕は運動音痴でスポーツ全般苦手なんだけど、サッカーはその中でもかなり苦手な方なんだよなぁ。
だって蹴ろうとしても蹴れないんだもんっ!
それはさて置き、体育の先生は女性の先生なんだけれどボーイッシュな見た目をしていて、男女問わず人気な先生だ。
「早速チーム分けするぞー」
僕のチームはみんな運動神経がいい人ばかりだった……。
「み、みんな。僕、サッカーがすごい苦手で足手纏いになるだろうからごめんね……?」
僕は多分……いや、絶対に足手纏いになると思ったから先に謝っておいた。
「いいや! 七美がいるだけでやる気が……ウオオオオオ!!」
「気にする必要なんてないぜっ!」
「チアとかやったら俺ら優勝しちゃうぜ?」
「ち、チア……だと!? 最高にハイってやつじゃあないか……」
「足手纏い……サッカーだけに? なんちゃって!!」
「「「「…………」」」」
さっきまでみんな血気盛んって感じだったけれど、一気に気温が下がったようで無表情になっちゃった!
僕がなんとかしないと……!
「え、えっと……面白かった、よ?」
僕は少し微笑みながらそう言った。
すると——
「て、天使か……」
「いや、女神だろ……」
「
「ありがたやぁ……ありがたやぁ!」
「うっ(絶命)」
「お前らのチームが羨ましいぞ……」
「南無阿弥陀……」
よくわからなけど、助けられたのかな……?
あといつのまにか対戦相手のチームが来ていた。
◇
『ピーッ!』っと、笛の音が鳴り、試合は開始した。
「テーム
「「「おおお!!」」」
「お、おー……?」
いつのまにかチーム名が付いていたのだろうか……。
しかもなんで七? 七人いないのに……。
でも僕も頑張らなくちゃ!!
最初は僕たちのチームからボールを蹴ってスタート。
「へい、こっちパス!」
「おうよ!」
「ふはは、貧弱だぜェ!」
パスをつなげながらどんどんと前に進んでいっている。
え? 僕はって?
僕はただ後ろからついて行っているだけです。
ゴールのすぐ近くまで来ると、チームの一人が僕にパスをしてきた。
「七美! 決めたれぇ!!」
「え、えぇ? え、えっと、その、と、と……えぇい!!」
ボールを蹴れたのだけれど、さっきまでの勢いは無くなってひょろひょろのボールになってしまった。
「「「「「——」」」」」
みんなが無言で僕を見つめていた。
「は……恥ずかしいぃ……」
顔が真っ赤になっているとわかるほど自分の顔が熱くなることがわかった。
だがしかし、なぜかキーパーの人は棒立ちの状態をキープしていて、ひょろひょろのボールを止めることなくそのままシュート。
「やったな七美!」
「お前のおかげだ!!」
「ふ、このチームにキーパーなど無駄無駄ァ!」
「ななっち、イェーイ!」
「い、いえーい? え、どういうこと……?」
僕のおかげ? キーパーがなぜか動けなかったからじゃないの?
だが周りで見ていたクラスメイトたちもこう言っていた。
「今のは七美のファインプレー」
「流石七美。略してサスナナ」
「七美万歳!!」
「七美くん可愛い〜〜!」
「今宵は宴じゃあぁ! 麦茶を持ってコォイ!」
「やれやれだぜ……!」
っていうかみんなに見られてた!
恥ずかしい〜〜……!!
【後書き】
※七美くんを一人で着替えさせるのは、みんなが紳士だからです。
書き溜めていた分がどんどん消化されてゆく……。
応援お願いしますぅぅ……。_:(´ཀ`」 ∠):
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