第8話 [氷の女王vs最強委員長]

「ん……んー……? ……はっ!?」


 僕はガバッと起き上がって目を覚まして。


 ここは……どこだっけ? 何してたっけ。

 ——あ、そうだ。放送で呼ばれてここにきたらちょっと怖い風紀委員会の人がいて……。


「よぉ、お目覚めか」

「あ、はい……ってうわぁ!!」


 すぐ隣にはちょっと怖い雰囲気を醸し出してた風紀委員会の委員長こと、神崎彩音さんが足を組みながら座っていた。


「え、えと……なぜか眠ってしまってすみません……」


 ビクビクと怯えながら僕は神崎さんにそう謝った。


「あぁ?」

「ひぃ!」

「別に怒ってねぇよ。オレは別に寝ても嫌な気持ちにならねぇし、寝たい時に寝ればいいだろ」


 あ、あれ……? ここに呼ばれた理由は寝てたことだ怒られると思ってたけど違うのかな……?


「あのぉ……僕はなんでここに呼ばれたのでしょうか」

「あー……。お前は人違いだった」

「そ、そうなんですね……。よかったぁ」


 安堵の溜息を吐いた。


「ササダナナミだよな?」

「はい、そうですよ?」

「じゃあ“ナナ”って呼ばせてもらうわ。ナナ、困った時はいつでもオレに相談しろよ? 解決してやっから!」


 神崎さんはニカッと、まるで太陽のように明るい笑顔でそう僕に言った。


 神崎さんは全然怖い人じゃない……? 逆にすごくいい人だったのかもしれない。


「はい! ありがとうございます!」


 僕も負けじと満面の笑みでそう返した。

 すると……。


「んんんん!!」


 突然胸を押さえながら僕から視線を逸らした。

 どうしたのだろうか……。


「だ、大丈夫ですか……?」

「問題ねぇよ!!」


 さっきまでの怖い雰囲気は無くなっていて、すごく喋りやすい空気に変わっていた。


「……って今もう五時!? 僕はそろそろ帰らせてもら——」


 この部屋にかかってある時計を見ると、そろそろ五時になりそうな時間だった。

 僕が帰ろうとした途端ドアの方から「ドガァン!」という爆音が聞こえてきた。


 音のした方を見ると、なんと吹雪がドアを壊してこの部屋に入ってきていた。


「ふ、吹雪!?」

「なーくん……やっと見つけたぁぁ!」


 吹雪がこの部屋に入ってきて、僕に駆けつけ用とした途端、神崎さんが僕の前に出てきて竹刀を構えた。


「おい、テメェはナニモンだ」

「…………あなたこそ誰ですか。なーくんをこんな場所に閉じ込めて……」


 一触即発。

 この部屋の空気を表すのならば、この言葉が一番合っていた。


「なーくんから、離れろ」

「はっ! まずは自己紹介からだろぉが。ナニモンかってオレは聞いて——」

「なーくんから……離れろ……!」


 彩音が喋り終える前に吹雪は一瞬で距離を詰め、彩音の目の前まで来ていた。

 ちなみに七美は何が起きているか全く分かっていない。


「——っ!!」


 彩音は構えていた竹刀を振るったが、空ぶっていた。

 竹刀が空ぶっている隙に、吹雪は七美をお姫様抱っこして彩音から距離を取った。


「ん? え? あれ、なんで僕は吹雪に抱っこされてるの……?」


 今の動きが早すぎて七美は何もわかっていなかった。


「なーくん逃げて。あいつはヤバイ。勝てるかわからないぐらい強い……!」


 吹雪はそっと七美を下ろしたが、焦っている様子だった。


(な、ナニモンだよあいつ! これでもオレは剣道の段とってるクソ親父に勝ったぐらい強い……。だが見切られた……だと!?)


 彩音も相当混乱していた。


「く、くくく……テメェが相当強いのはわかったが……今は関係ねぇ。ナナを守るってさっき決めたからな……!」

「なんなんですか、あなた。なーくんを守るのは私の役目なのですが」


 不敵な笑みを浮かべながら竹刀を左の腰に添える彩音。

 睨まれた者を凍てつかせそうなほど冷たい視線を送る吹雪。


 戦いの火蓋が切って落とされ——


「二人ともストォーーップ!!」


 落とされることはなかった。


「喧嘩はダメ! 吹雪は昔から一緒で大事な幼馴染だし、神崎さんもすごく優しい人だってわかったから、どっちも傷がらついて欲しくないの!」


 七美はぎゅっと両手を強く握りしめ、青色の瞳は揺れて涙が今にも溢れそうだった。


「ご、ごめんなーくん。そんなつもりじゃなかったの……」

「わ、悪りぃ……。ほら、もう戦うつもりなんかねぇから。な?」


 二人は七美に抱きつき、頭を撫で続けた。


 氷の女王vs最強委員長。

 勝者は七美だった。



【後書き】


ちなみにこの二人強さは、異世界転生とか異能力バトルに巻き込まれてもまあまあやっていけるぐらい強いです。

ま、七美くんも可愛さで無双しちゃいますけどねぇ!

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