第9話 [夜、妹、襲来。兄、気づかず!]

 喧嘩を収めた後、僕と吹雪で家に帰っている。

 神崎さんは委員会の仕事がまだあるらしいので部屋に残っている。


「さっきはごめんね、なーくん」

「喧嘩したらめっ! だからね!!」


 僕は自分の口元に人差し指でバッテンを作った。


「ぐふぅ……可愛い」

「もう! ちゃんと聞いてるの!?」

「もちろんよ。くっ、だが動画に収められなかった……!」


 吹雪に説教を続けながら帰ってるけど、さっきからずっとニマニマとしているから反省しているかわからない……。

 全くもう……。





「ただいまぁ」

「お兄ちゃんお帰りぃいいいい!!」

「ぐぇ」


 華が廊下を走って僕にダイブしてきた。

 僕はその衝撃に耐えられずに、後ろに転倒してしまった。


「あ痛てて……」

「お、お兄ちゃんごめん! だだだだ大丈夫!? びょ、病院……救急車呼ばなきゃ!!」

「は、華? 僕は全然大丈夫だから……」

「ごべんねお兄ぢゃんんん!!」


 もしかしたら華はパニックを起こしてるのかもしれない……。

 ここは兄として落ち着かせないと!


「お兄ちゃ——うむっ!」

「大丈夫だよ、華。ちょっと転んだだけだから」


 僕はハグをし、華の頭をなでなでし始めた。


「むふ〜〜♪ お兄ちゃん……すんすん」

「ちょ、ちょっと!? 匂いは嗅がないで! 恥ずかしいから……!」

「えぇ……? もうちょっと〜〜」


 華はトロンとした表情に変化していた。


「し、しかもここ玄関だし!!」

「ん〜? …………はっ! ご、ごめんねお兄ちゃん!!」

「今度から気をつけてね。……恥ずかしかったし」

「うん。…………でもあのハグは中々……」

「ん? 何か言った?」

「何でもないよ!!」


 何か聞こえた気がしたけど、気のせいだったかな……?


 僕は気にせず家に入った。

 その後は特に何もなく、ご飯を食べたりお風呂に入ったりして眠りについた。




—華視点—



 今朝あまりお兄ちゃんとイチャイチャできなかったので、帰ってきた時についつい飛び込んでお兄ちゃんを押し倒してしまった。

 もちろんお兄ちゃんが怪我していないかと焦ったけれど、その後が衝撃的すぎた。


「まさかお兄ちゃんからハグされるなんて……! もう一回されたいな〜〜」


 お兄ちゃんにハグされた時は一瞬で落ち着けたし、優しさの権化に包まれているような感覚だった。

 例えるならば……まあ非科学的存在であるけれど“女神”というのがベストだろう。


 だってお兄ちゃんあったかかったし、匂いもすごくいい匂いだったし……。

 はっ!? 鼻血が飛び出しそうだった……。


 ——今は夜十一時。

 みんなもう寝ている時間だけれど、あたしはどうにも落ち着かなくて寝付けない状態だ。


 明日も学校があるのに……。


「——そうだっ!!」


 あたしは“ピコーン!”といいことを閃いたので、それを実行するべくお兄ちゃんの部屋へと直行した。

 お兄ちゃんの部屋の前に立ち、一度深呼吸をする。


(お兄ちゃんが寝てますように……!)


 ゆっくりと扉を開け、中の様子を伺った。

 奥からは「すーすー」という寝息が聞こえてきたのでお兄ちゃんは寝ているようだ。

 音を立てないようにそっとお兄ちゃんのベッドの横まで来た。


「すぴー……すぴー……」

「んぐっ!」

(お、お兄ちゃん流石! 可愛すぎる……!! ってダメダメ!!)


 あたしは自然とお兄ちゃんの頭を撫でようとして手が伸びていたが、なんとか抑えた。

 ミッションを成功させるためである。


 ミッション、それは……さっきみたいにお兄ちゃんにハグされた感覚に包まれたいっ!!

 ということであたしはお兄ちゃんのベッドに侵入することにしました!


「起きないでね、お兄ちゃん……」


 お兄ちゃんの布団をそっと浮かし、すんなりとベッドに侵入をした。


(い……良い! とても良い!! 布団に入ることで温もりを感じるし、目の前には『かわわわっ!』な、お兄ちゃんの顔がある!)


 数十分間これを満喫した。

 この時間がずっと続けば良いと思ったけれど、そろそろ戻らないと。


(名残惜しいけど帰らなきゃ……)

「んーーーー…………」

「ひゃっ!」


 な、なんとお兄ちゃんがあの時のように抱きついてきてくれている!


「ん〜〜、いかないでぇ……」

「んむっ! ふー……ふー……」


 今にも萌え死にしそうだが、口を押さえて息を殺していた。


 数分後、落ち着いたあたしはお兄ちゃんの方へ顔を向けた。

 すると


「ん〜〜……」


 ごろりと転がり、反対方向を向いてしまった。


(チャンスだったのにぃいい!!)


 チャンスを逃したことを悔やみ、あたしはお兄ちゃんの背中に抱きついた。


(あ……でとさっきよりお兄ちゃんのにおいが……。なんか眠くなって……)


 意識はそこで途切れ、眠ってしまった。

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