第3話 [お母さんと妹]
「ただいまー!」
学校から家まではほんの数分なので、早く帰宅することができる。
僕の家は普通の一軒家で、二階が僕の部屋である。
「お帰り! お兄ちゃん!!」
「ただいま、華」
僕がドアを開けると、目の前には肩あたりまで伸びた茶髪と、琥珀色の瞳を持った女の子が出迎えてくれていた。
この女の子は僕の妹である——“
明るくて元気、“天真爛漫”っていう言葉がよく似合う女の子だけど、中学校では科学部に入っているらしい。
「えへへー!」
「わっ!」
僕が靴を脱いで立ち上がったと同時に、華が僕の腕に抱きついてきた。
「歩きづらいよー……」
「別にいいでしょ〜? むふふー!!」
僕はそのまま廊下を歩き、ドアを開けてリビングにあたる部屋に入った。
「七美お帰り〜」
「ただいま、お母さん」
キッチンで料理をしているこの女性は、僕のお母さんである——“
華と同じ茶髪で、纏めた髪を肩に乗せているサイドポニーテール という髪型をしている。
目の色は僕と同じ青色だけど、糸目で見えていない。
「夜ご飯はもうちょっとかかるから、待っといてちょうだいね〜」
「わかったー。じゃあ少し勉強しておこうかな」
今日は寝ちゃったし、あとお腹が減りすぎてるから弁当も食べよう。
「お兄ちゃーん! 夜ご飯の後勉強教えてー!」
「ん? いいよ!」
「やった! お兄ちゃんと二人きりで……ふふふ」
……? 何か華がブツブツと言っていた気がしたけどよく聞き取れなかった。
僕は二階にある自分の部屋に向かい、そこで弁当を食べながら勉強をしていた。
ちなみに僕は“育ち盛り”だからいっぱい食べても食べたりない!
けど、全然背は伸びないし筋肉もつかない……。
◇
「ご飯できたわよ〜」
「はぁーい!」
お母さんに呼ばれたので下の階に降りて早速夜ご飯を食べることにした。
「「「いただきます」」」
あ、ちなみにお父さんは出張中だから三人でご飯を食べている。
「ん〜♪ やっぱりお母さんのご飯美味しい!」
「はぁ〜〜。本当に美味しそうに食べるからお母さん嬉しいわ〜」
「お兄ちゃん可愛いー!!」
二人とも僕のことをうっとりとした表情で見つめていた。
「むー! だから僕は可愛いよりかっこいい方がいいんだもんっ!!」
僕はほっぺたをぷくーっと膨らませながらそう言った。
「「はぁ〜〜、可愛い」」
けれど、さらに二人の顔がとろけていた。
それはまるでチーズみたいにとろけていた。
「もーーーー!!」
その後も楽しくおしゃべりしながらご飯を進めた。
◇
「「「ご馳走様でした」」」
お皿を流しに置いてリビングのソファでゆったりとしていると、華がとてとてと僕のもとにやってきた。
「お兄ちゃん勉強教えてー!」
「あ、そうだった!」
それで華に勉強を教えることになったんだけれど……。
「なんで僕の部屋なの?」
勉強をする場所は二階の僕の部屋がいいと言っていた。
「えー、別にいいじゃん。お兄ちゃんのケチー!」
「別に大丈夫だけど、リビングのほうが広くていいんじゃない?」
「お兄ちゃんの部屋のほうがいいもん。……二人っきりだし、くっついていられるし……」
「? ごめん、最後の方聞こえなかった」
「なななななんでもない!!」
華は手をあたふたとさせて慌てていた。
何故だろう……。
「いいから行くよ! お兄ちゃん!!」
「あーれー」
僕は引っ張られながら自分の部屋に連行された。
◇
「——で、ここがこうなるから……」
「なるほどー! お兄ちゃんありがとう!」
今は僕の部屋の狭い机で一緒に勉強をしている。
華がわからないところがある時は僕が教え、それ以外の時は自分の勉強をしている。
「あ、お兄ちゃんそこ間違えてるよ」
「あ、ほんとだ…………って、ん? 華、なんで高校生レベルの問題解けて——」
「あーー! もうこんな時間だよお兄ちゃん! 急いでお風呂はいらないと怒られちゃう!!」
華が大声をあげると同時に部屋にかけてある時計を指差した。
現在の時刻、十一時半。
「わっ、本当だ! お風呂お風呂!! じゃあ今日の勉強はここまでね!」
僕は慌ててドアを開けて階段を駆けた。
◇
僕はお風呂を入り終え、歯磨きもしてパジャマに着替えた。
あとは眠るだけだ。
「おやすみぃ……」
ベッドに入るとすぐに睡魔がやってきて眠りについた。
——七美が眠った数分後、ドアが静かに開き、二人の人影が入ってきた。
「お兄ちゃん寝てる……!」
「家族の特権ね〜」
入ってきたのは七美の母親と妹だった。
「勉強してる時も可愛かったけど、やっぱり寝てる時が一番!」
「今日も七美に勉強教えてもらったんでしょ〜? 本当は七美よりあなたの方が頭いいのにね〜」
そう、実は七美より華の方が頭が良く、彼女は高校卒業レベルまでの勉強は楽々なのだ。
「お母さんしーっ! これもお兄ちゃんとイチャイチャするためなんだから!」
「すー……すー……」
七美は二人に見守られながら眠り続けていた。
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