第2話 [違和感]

「——……はっ! 寝ちゃってた!!」


 僕はガバッと起き上がり、一気に目が覚めた。


「うわあっ! お、おはようございます。七美くん」

「お、おはよう、白銀さん。なんだか顔が赤い……?」

「だっ、大丈夫よ! 全くもって問題ないわ!?」


 目の前には白銀さんが立って僕を見ていたけれど、いつもの白い肌はほんのりと赤く染まっていた。

 周りのクラスメイトたちを見てみると、みんな顔が赤くなっていた。


 もしかして……風邪が流行ってる!?

 僕も気をつけないと……。


「って、それよりも今何時!? 授業は!?」

「あ、あー……。実はもう放課後なんだ……」


 クラスメイトの一人がそう言った。


「そ、そんな……。なんでみんな起こしてくれなかったのー!?」

「そそそ、それは、そのぉ……」


 みんなはなぜかそっぽを向いて僕に顔を合わせなくなり、黙り込んでしまった。


「——……先生も可愛さにやられたなんて言えないわね……」

「ん? ごめん、今なんて言った?」


 白銀さんが何かをボソッと言っていたけれど僕にはよく聞こえなかった。


「ううん!? なんでもないわ!」


 でも気のせいだったっぽい。


「うぅー……。授業二時間も寝ちゃったから、帰ったらたくさん勉強しないと……そうだ! 白銀さん、ノート貸してくれないかな……明日の朝返すから! ダメ……かな……?」


 紅蘭は七美よりも身長が高いため、七美が上目遣いとウルウルとした瞳で彼女を見つめていた。

 さらに追い討ちをかけるように、ぴょこぴょことした愛らしい寝癖がついていた。


「うぐふぅっ!! え、えぇ……何十枚、いや何百枚と貸しますわっ!!」


 フイッと視線を逸らし、鼻血が出ないように鼻を抑えていた紅蘭であった。


「やったー! ありがとうっ!!」

「「「「「ぐはぁっ!!」」」」」

「え、み、みんな大丈夫……?」


 満面の笑みでそう答える七美、クラスメイトたちは案の定悶絶していた。


「大丈夫よ!」

「俺たちの心配は無用!」

「これぐらいいつも通りだったじゃない!」

「我、この世に一片の悔い無し」


 皆は一致団結してなんとか誤魔化していた。


「そっか! それじゃあ僕は帰って早速勉強するから帰るね! みんなバイバーイ!」

「「「「「バイバーイ!」」」」」


 それにしてもなんだか違和感があったような……まあ気のせいか!

 それよりも学校で寝ちゃったからちゃんと反省しなきゃな……。


 少し重い足取りで帰る七美であった。

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