第22話 贈り物とお茶会

 追想祭の翌日、離宮にクリストフから大量のチーズケーキが届いた。

 どうやら完全に私の好物だと認識されたようだ。

 複数の店の商品が集められたらしく、形やトッピングがさまざまで、見ていて楽しい。


 ……問題は、これが置物じゃなくて、食べ物ってことだけどね。


 見た目にも拘られた王都のチーズケーキは見ていて可愛らしいのだが、どんなに愛らしくとも食べ物は食べ物だ。

 傷む前に胃の中へ納める必要がある。


 一口サイズに切ってもらったものを全種皿に載せ、残りは侍女と使用人たちとで食べてもらう。

 お客様にお出しする、という消費方法もあるのだが、私を訪ねてくるような知人は残念ながら王都にはいない。

 レオナルドが白銀の騎士の詰め所へ顔を出したいというようなことを言っていたが、いつの予定かは判らないので、取っておくことは避けた方がいいだろう。


 チーズケーキは追想祭への参加の御褒美的な贈り物だったのだが、さらに翌日から身に覚えのない贈り物が届けられるようになった。


「えっと……なんですか、これ?」


 贈り物が届きました、とジゼルが運んできたのは、一抱えもある箱が三つと巨大な花束だ。

 差出人の名は聞いたことも、関わった覚えもない貴族である。


シルクのドレスと靴、流行の菓子と帽子、それから宝石のついた髪飾りと……」


「いえ、違います。中身を聞いているのではありません」


 私の元まで運ぶ前に贈り物を確認したジゼルが中身についてを報告してくれるのだが、私が知りたいことはそこではない。

 箱の中身が知りたいのではなく、なぜ、見ず知らずの相手から突然贈り物が送られてくるようになったのか、だ。


「申し訳ございません。ドレスと靴は功爵家のグレゴワール様から、お菓子と帽子はメンヒシュミ教会から、宝石のついた髪飾りは……」


「送り主を聞いているわけでもありません」


 必要な情報だとは思うのだが、今私が求めている情報ではない。

 私が知りたいのは、なぜ自分ところへと贈り物が届けられたのか、という理由だ。


 ……メンヒシュミ教会なら、なんとなく追想祭の御褒美かな? とは思うけどね。


 なんとなくそうであろう、と理由を引っ張りだしてくることはできるが、納得はできない。

 グルノールの街でも精霊の寵児として追想祭に参加したが、それだけだ。

 特に後日お礼が届くようなことはなかった。


「贈り物をいただく理由がありませんので、送り主に返しておいてください」


 特に絹のドレスや宝石のついた髪飾りなど、高価すぎて受け取るのが怖い。

 狙いのわからない高価な贈り物など、厄介ごとの予感しかしなかった。


 爵位の問題か、ジゼルは送り返すことへ難色を示したので、贈り物の受け取り拒否はヴァレーリエに任せる。

 これで謎の贈り物問題は片付いたかと思ったのだが、さらに翌日贈り物の数は倍に増えた。


「……だから、なぜ、わたくしのところへ、見ず知らずの方から、贈り物が届くのですか?」


「アルフレッド王子の、エスコートの影響のようです」


 今度こそは、と贈り物の中身でも送り主の名前でもない情報がジゼルの口から出てくる。

 昨日私の求めに応じられなかったことで、ジゼルはジゼルなりに私を理解しようとしてくれているようだ。

 離宮の外での噂を、ジゼルなりに調べてくれていた。


「アルフレッド王子はフェリシア王女に続く次期国王有力候補です。そのアルフレッド王子のエスコート相手ともなれば、懇意にしておくのは当然の判断かと」


 ジゼルの説明によると、アルフレッドが異性をエスコートすることは極稀なことらしい。

 アルフレッドが公的な場で女性をエスコートしたのは、アルフレッドが王爵を得て婚約を解消する前に、当時はまだ婚約者であった女性の誕生日にしたのが最後なのだとか。

 それが突然、まだ子どもとはいえ異性のエスコートをしてみせた。

 いつかは異性の伴侶を得ると思われているアルフレッドが、ようやく新しい相手を選んだと邪推されるのは仕方のないことかもしれない。


「……アルフレッド様は、けっこう普通にエスコートしてくださると思うのですが、わかりました。つまりは誤解ですね」


 やはり受け取らない方がいい贈り物だと判断できて、すっきりした。

 送り主の思惑が次期国王かもしれないアルフレッドへのご機嫌取りだというのなら、嫁になる気も、必要以上に親しく付き合っていく予定もない私の機嫌をとっても、得はないだろう。


「誤解以外の贈り物も混ざっているようですよ」


「誤解以外、ですか?」


 ジゼルが贈り物の箱に添えられた手紙を抜き取り、私へと差し出す。

 こちらも開封されて中を改められた形跡のある手紙は、開いてみれば流麗な筆跡で目が滑る内容が書かれていた。


「……なにこれ、怖い」


 別に脅迫文やアルフレッドへの取り成しを要求されているわけではない。

 そういった意味では、確かに誤解ではなく私宛の手紙だ。


 どこで私の姿を見たのか、そもそもどうやって私が離宮に滞在していると突き止めたのか、追想祭でのメンヒリヤの娘の装いが美しく可憐だっただとか、神殿へと王子のエスコートで連行される姿が怯えているようにも見え気になる、もし現在の扱いに不安があるのなら力を貸したい等など。

 前向きに捉えるのなら好意的な、後ろ向きに捉えるのなら付き纏い行為一歩手前の文面が綴られている。


「……ディートフリート様の悪筆日記の方が可愛く感じられます」


 ディートフリートからの手紙は近況という名の日記に近いのだが、この手紙は違う。

 私には少々早いと思うのだが、間違えようもない恋文だ。

 私の容姿を褒める言葉が続いたかと思うと、時折詩的な文面が織り込まれてくる。


「ドレスも宝石も要りません。気味が悪いので、全部送り返してください」


 とにかく面識のない相手からの熱烈な恋文というところが、気持ち悪い。

 私も相手について知っているのならまだしも、どこで姿を見られたのかも、どこから私の素性を調べたのかもわからなかった。

 ついでに言うのなら、これは恋文だ。

 私自身はまだ子どもだと思っているのだが、相手は女を見る目で影から私のことを見ているということだ。

 気持ちが悪いなんて、可愛らしいものではない。


「しかし、こちらの手紙は杖爵家の……」


「どこの誰でも一緒です。十一歳になったばかりの子どもにこんな手紙を送ってくるなんて、正気を疑います」


 あと数年もすればこの世界での成人に達しはするが、まだまだ胸もお尻も小さな子どもだ。

 子ども相手に恋文を送ってくるような変態と、交流など持ちたいとは思わない。


「……こちらのお誘いはいかがですか?」


 恋文と贈り物を送り返すようヴァレーリエへとお願いしていると、これまでの手紙とは明らかに違う白い封筒をヘルミーネが差し出してきた。

 上品な文字と嫌味のない香りに、なんとなく差出人への警戒心が薄くなる。


「ミカエラさん? 覚えのないお名前ですが……?」


 ヘルミーネが薦めてくるぐらいなのだから、私となんらかの関わりがある人物なのだろう。

 ヘルミーネは私が人見知りをする性格だと知っている。

 なんの理由もなしに赤の他人を薦めてくることはないはずだ。


「グルノールの館に滞在していらした、ジークヴァルト様の奥方です」


「え? ジーク様の女神様おくさま?」


 ジークヴァルトの妻と聞けば、人見知りな私の警戒心も完全に霧散した。

 まったく知らない人間と会うのは嫌だが、ジークヴァルトの妻ともなれば、それだけで親近感が湧く。

 グルノールの館では、ジークヴァルトには世話にも可愛がられもしていた。

 そのジークヴァルトが女神と呼んで愛を誓う奥方だ。

 私としては珍しく、会ってみたい気持ちがムクムクと湧き上がる。


「離宮に籠ってばかりもいられませんし、これも社交の勉強です。ジークヴァルト様の奥方ともなれば、ティナさんの性格についても旦那様から聞いていらっしゃるでしょう。多少の失敗ならば、お目こぼしいただけると思います」


「つまり、ミカエラさん、さま? で、貴族とのやり取りに慣れろ、ということですね」


「言葉遣いが乱れていますよ」


「申し訳ございません。間違えました」


 言葉遣いが乱れたと指摘され、すぐに言い直す。

 聞こえの良い言葉に直すだけなので意味は変わらないのだが、淑女はその言い方が大切らしい。







 ミカエラからの誘いを受けることにしたことはよかったのだが、意外にもレオナルドが同行してくれなかった。

 護衛にはアーロンがいるし、護衛としては頼りなくとももう一人ジゼルがいる。

 家庭教師としてフォロー役にヘルミーネも同行してくれるということで、あまり人数が多くても先方が大変だろう、とレオナルドが辞退したのだ。


 ……正直、ジゼルと入れ替わってほしいよ。


 お茶の誘いに乗ることを決めたのは自分だが、レオナルドと別行動になるとは思わなかった。

 地道な努力を続けるジゼルには申し訳ないのだが、ジゼルがいるよりもレオナルドが一緒にいてくれる方が心強い。

 袖を引っ張って拗ねてみたり、上目使いでおねだりしてみたりとしたのだが、珍しくもレオナルドの意見は変わらなかった。

 というよりも、少し前からクリストフからの呼び出しがきているらしい。

 護衛の数が一人では不安だから、とこれまでは出かけることを悩んでいたそうだ。


 ……ジゼルは相変わらず、護衛として数に含まれてないね。


 ジゼルは護衛として数に含まれないが、ジークヴァルトの館を訪問することは、それだけで護衛的な意味では安心できるらしい。

 ジークヴァルト本人が白銀の騎士であり、その息子もまた白銀の騎士だ。

 館を訪ねる時間帯に二人が在宅中というわけではないが、ティモンの子どもが白銀の騎士を目指して修行中であり、その剣術の師として毎日のように引退した白銀の騎士が館を来訪しているのだとか。

 下手をすれば、アーロン一人とその他大勢の白騎士が警備を務める離宮よりも守りが堅い。


 ……そういえば、王都に来てから初めてお城の外に出るような?


 まさか、レオナルド抜きで自分が王城の敷地外へと出ることになるとは思わなかった。

 街へ出るといっても向かう先は貴族街と、平民が暮らす内街に比べると王城に近い。

 外出に慣れようと思ったら、案外いい距離感なのかもしれなかった。


「本日はお招きありがとうございます、ミカエラ様」


「ようこそお出でくださいました、クリスティーナさん。わたくしジークと同じように『ティナ』とお呼びしても構わないかしら?」


「はい、ミカエラ様」


 貴族街に館を構えるジークヴァルトの妻は、生まれから貴族の令嬢だったそうなのだが、驚くほど気さくで穏やかに微笑む。

 貴族のご夫人と聞いて想像する姿からは真逆の女性だ。

 というよりも、私の思う貴族がテンプレ悪役というだけで、本来の貴族は領民を守り、いざことが起これば先頭に立って先陣をきる存在だったはずだ。

 だから民から信頼され、愛され、御領主様と呼ばれる。


 ……あれ? こう考えると、レオナルドさんってもう領主みたいなもの?


 砦の街であるグルノールでは、レオナルドは領主的な役割も果たしていたはずだ。

 だから騎士だというのに書類仕事が多い。

 そして、補佐には王都から派遣された文官もついていた。


「実はどうしてもティナさんと会ってお話しをしたい、というお友だちがおりますの」


「お友だち、ですか?」


 はて、誰だろう? と首を傾げる。

 ジークヴァルトの妻であれば私の性格についても多少は了解しているだろう、と失礼ながら貴族への振る舞いの練習台になって頂こうと思っていたので、少々困ってしまう。

 ミカエラの友人ということは、貴族である可能性がある。

 私をまったく知らない貴族に、アルフレッドのような寛容さは望めないだろう。


 内心で冷や汗を流しつつも淑女の笑みを浮かべて応えると、石造りの露台テラスへと案内された。

 日除けに傘が作られているが、中央には丸いテーブルと椅子が三脚あり、内一脚には先客がいる。


「はじめまして、グルノール砦の主……の妹さん。わたくしはソフィヤ。今日はミカエラ様にご無理をお願いし、同席させていただきました」


 ソフィヤと名乗った女性は優雅な所作で立ち上がり、礼をとる。

 深々と頭が下げられ、肩から金色の髪がすべり落ちた。


 ……えっと、これって挨拶じゃなくて、謝罪だよね?


 挨拶と考えるには、頭を下げる角度が深すぎる。

 初対面の女性に謝罪を受ける覚えもないので、この謝罪は『無理をお願いして同席』にかかっているのだろうか。

 不思議に思いつつも、つい傾げたくなる首を意識する。

 淑女は故意以外では内面をわかりやすく外へ出してはいけないらしいのだ。

 今生は言葉が不自由なのを補うようにボディーランゲージを取り入れてきたので、直すのは少し難しい。


「ごめんなさいね、ティナさん。ソフィヤ様は普段はお屋敷に籠りきりで、私が無理に引っ張り出して連れ回すぐらいでなければ生きているか死んでいるかもわからないぐらいなのですが、グルノールの主が王都に来ているとお話ししたら、是非ともお会いしてお詫びをしたい、と」


 珍しくソフィヤの側から他人ひとに会いたいと言い出したので、これは良い傾向だと願いを聞きたくなったのだそうだ。

 少しずつでも、外へと視線を向けてくれるのなら、と。


「そうですか。兄ではなくて申し訳ございません」


 なんだ、用があったのはレオナルドの方か、と少しだけ肩から力が抜ける。

 私に用があるのでなければ、レオナルドの妹として、十一歳の子どもとして振舞っても問題はないだろう。

 安心して促されるままに椅子へと腰を下し、ソフィヤと向き合うことにした。


「……ところで、兄にお詫びというのは?」


「義父が半年もグルノールへと滞在されたようで、さぞやご迷惑をかけただろうと……」


 ……うん? 義父?


 ソフィヤの言葉に引っかかりを感じ、改めてソフィヤをいう女性を観察する。

 色白でほっそりとした、たおやかな女性だ。

 歳は三十を少し越えたぐらいだろうか。

 ミカエラは友人と言っていたが、素直に友人と考えるには歳が離れている気がした。


「ソフィヤ様はベルトラン様の義理の娘で、カンタール家の跡取りを産んだお母様なのですよ」


「ベルトラン様の……」


 ……ということは、私の義理の伯母さまですね。名乗るわけにはいきませんが、はじめまして。


 なんとも不思議な気分になりつつ、心の中でだけ伯母ソフィヤに対して挨拶をする。

 それから、ようやくソフィヤの用件にも納得がいった。

 ベルトランがジャン=ジャックの帰還を待ち構えていた半年という長期間の滞在に対し、迷惑をかけたとレオナルドに詫びたかったのだろう。

 わたしの方しか来なかったことは計算違いかもしれないが、レオナルドにはちゃんと報告をしようと思う。


「ベルトラン様には滞在中可愛がって……」


 当たり障りないことを伝えて安心させてやりたかったのだが、滞在中のベルトランを思いだそうとすると言葉に詰まる。

 まだ祖父だと知らなかった頃は単純に生きた英雄の登場にニルスと喜んで付き纏いもしたが、黒騎士の闘技大会に参戦したり、黒犬オスカーを放し飼いにしたりと、好き勝手にしていた。

 さらに言うのなら、病弱と聞く孫の扱いや、ジャン=ジャックに対する拷問の形跡を私は知っている。

 嘘をつくことがあまり得意ではないという自覚のある私に、ベルトランの素行についてを当たり障りなく伝えることは難しかった。


「……可愛がって、いただいた……と、思います?」


 ソフィヤを安心させてやりたかったのだが、馬鹿正直にも言葉を詰まらせた私に、ベルトランがグルノールの街でどのように過ごしていたのかが想像できてしまったのだろう。

 もとから白いソフィヤの顔が、段々と青ざめてきた。


「義父が……義父が、本当に、ご迷惑を……っ」


「頭を上げてください、ソフィヤ様。ソフィヤ様が謝る必要はありません。ただちょっと困ったお爺さまだっただけです! レオナルドお兄様よりも、アルフさんにご迷惑をかけていたと思いますが、アルフさんはちょっと困った方にはアルフレッド様で慣れていますから、きっと大丈夫です」


「アルフレッド様にまでご迷惑を……っ!?」


 顔面蒼白という言葉がこれほどしっくりくる顔を見るのは初めてだ。

 ソフィヤの色白だった顔が青くなり、それが通り過ぎてまた白くなる。

 アルフをアルフレッドと呼ぶ人なのか、王子の方のアルフレッドと混同しているのかは謎だったが、フォローはするだけ逆効果になる気がした。







「……疲れました」


離宮いえに帰るまでがお出かけですよ、ティナさん」


 帰りの馬車で、精神的な疲労からつい力を抜いて背もたれに寄りかかってしまったのだが、気を抜くのは離宮に戻ってからである、と同乗しているヘルミーネに窘められた。

 窘められてしまった以上は私も淑女として背筋を伸ばすが、今日はもう本当に疲れたのだ。

 離宮へ帰ったらレオナルドの横にぴったりとくっついて甘え倒したいぐらいである。


「それにしても、英雄ベルトランは家人としては最悪ですね」


 気軽な茶会で少しずつ貴族というものに慣れていこうと思っていたのだが、あのあとも延々ソフィヤによるベルトラン懺悔が続いた。

 物珍しいお菓子がお茶請けとして出されていたのだが、おかげで味もろくに覚えていない。

 ベルトランの行いに対する謝罪など、伯母とはいえ他人からなんと言われようとも意味がないと思っていたのだが、頭を下げるたびにソフィヤの顔色が悪くなっていくのが外聞的によろしくない。

 第一印象から繊細に見えたソフィヤは、見たとおり体はあまり丈夫な方ではないらしかった。

 ミカエラは無理矢理外へ引っ張りだしているようなことを言ってはいたが、言葉の端々からソフィヤの体調を気遣っているのがわかり、言葉どおりに受け取るのではなく、健康を気遣って無理をさせない程度に外へと誘っているのだと考えて間違いはないと思う。

 頼りになるジークヴァルトの女神様は、やはり頼りになる方だった。


 ……むすこが死んだからって、息子まごを取り上げて義理の娘を実家に帰らせるとか、どんな鬼だ。


 ソフィヤが自分の意思で実家に帰ったというのなら、私がなにか思うようなことではない。

 ただ、今日聞いたミカエラの話によると、息子が死んだあとにベルトランが独断でソフィヤを実家へと戻したそうなのだ。

 まだソフィヤの息子である孫も一緒であれば心の慰みにでもなっただろうが、孫だけは自分の手元に確保した上でのことである。

 そして、その孫も年に十回は危篤になるとかなんとか承知の上で、グルノールの街に滞在して半年も放置していた。


 ……最低だ。ベルトラン様は最低だ。


 グルノールの街へと来た当初はたしかにレオナルドも私を放置していたが、ここまで酷くはない。

 あの頃はワーズ病で砦中が忙しかったし、ひと段落したあとで熱を出した時には側にもいてくれた。


 ……絶対にベルトラン様のうちの子にはならないよ。

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