第18話 テオとミルシェ

「おれの妹を虐めんなっ!!」


「痛っ!?」


 言いがかりも甚だしい叫び声をあげながら、私の後ろ髪を力いっぱい引っ張る手がある。

 この突然の暴挙にも、そろそろ慣れてきた。

 頭は痛かったが、髪を押さえるついでに私の髪を掴んでいた手を引っ掻いてやる。


「いてぇっ!」


 引っ掻かれて慌てて引っ込められた手に、背後を振り返った。

 そこにいたのは予想どおり、先日の闘技大会で突然私の髪を引っ張ってきた男児だ。

 以前メンヒシュミ教会を見学に来た時に、マルセル三号と命名している。


「なんでここにいりゅの!? 秋からの教会にはいないはずらってレオにゃルドさんが言ってたのにっ!」


「おまえこそなんでいんだよっ! 七歳以下の赤ちゃんは教会には通えないんだぞ!」


「赤ちゃんなにょは、マルセル三号の方れしょっ!!」


「なんだよ、マルセル三号って……」


 私を指差して大声をあげるマルセル三号に、ニルスが私の前へと出てきて視線を遮った。

 人付き合いは教えてくれなさそうだったが、護衛的な仕事はしてくれるらしい。


「赤ん坊なのは、テオの方だよ。ティナお嬢さんは九歳、テオは八歳なんだから」


 ……今、そんな話してないよ!?


 そしてマルセル三号改め、テオは年下だったようだ。

 体が大きいので、てっきり同い年か年上かと思っていた。


 常にほんわかとした笑みを浮かべているニルスは、穏やかな声音でテオの言葉を訂正する。

 どうやらニルスは、独特のテンポに生きる人らしい。

 おっとりとしていて、微妙にずれている。


 ……それにしても。


「テオだって。弱そうな名前」


 いつだったか熊のぬいぐるみへと名前を付ける際に、レオナルドが出した名付け案が『テオ』だった。

 その時は濁点のない音の響きが弱そうだと思ったのだが、キャンキャンとうるさく吼える子犬の名前だったようだ。


「弱くねぇっ!!」


 つい口から出てしまったつぶやきに、弱そうと称されたテオが反応した。

 こちらへと掴みかかろうとしているのか、ニルスが制止の言葉をかけながらテオの体を拘束している。

 ニルスの拘束でとりあえずの安全を手に入れた私は、完全にテオを無視した。


「……この子は秋にはいないはずら、ってレオにゃルドさんが言っていたんれすけど、なんでいるんれすか?」


「テオは不真面目だから、三ヶ月で覚えるはずのことを覚えられなかったんです。それで、もう三ヶ月教会に通わせてみようってことで……」


 成績不振の話は本当のことではあるが、テオにとっては不名誉な話である。

 他人ひとの悪い噂を話したくない性質たちなのか、ニルスは困ったように眉を寄せて、小さな声で教えてくれた。


「……べんきょうする気がないんにゃら、来なければいいにょに」


 メンヒシュミ教会へ来ること自体は個人の自由なので「来るな」とは言えないが、私が通う間は来てほしくない。

 いないはずと聞いて安心して文字を習いに来てみたら、いないはずの悪童がまだいて、突然言いがかりを付けられたかと思ったら髪を引っ張られるだなんて、災難なんてものではなかった。


「離せよ、ニルス! その卑怯者におれの強さをわからせてやるんだっ!!」


 ……うん? なんで私が卑怯なの?


 どう考えても突然後ろから髪を引っ張ってくるテオの方が卑怯者である。

 そもそも私には、髪を引っ張られる理由すらわからないのだ。

 闘技大会でバルトが鉄拳制裁を与えたのも、今ニルスに拘束されているのも、みんなテオ自身が原因である。


「ティナお嬢さん、テオに何かしたんですか?」


「知りましぇん。いつも突然後ろから髪を引っ張ってくるテオの方が卑怯ら、ってことはわかりますけろ」


 理由わけがわからずニルスと首を傾げていると、焦れたテオが叫んだ。


「おまえのせいで闘技大会が見れなかったじゃないかっ!」


 楽しみにしてたのに、と続いたテオの言葉に、牢屋に入れておくという罰は、罰として効果があったらしいとわかる。

 わかるのだが、テオの主張はさっぱり理解できなかった。


「自業自得じゃん?」


 テオが闘技大会の日に牢屋へと入れられたのは、理由もなく私の髪を引っ張ったからだ。

 あれが本当に私の側に非があっての行動であれば、牢になど入れられてはいない。


「突然他者ひとの髪を引っ張るようならんぼう者を、人がいっぱい集まるとうぎ大会ににゃんて入れられるわけないじゃん」


「おまえのせいだっ!!」


「勝手にわたしのせいにしないで!」


 何度順路立てて説明しても、テオが理解する様子がない。

 ひたすらに私が悪いと喚き散らしては、ニルスの拘束を解こうと暴れた。


「何を騒いでいるのですか」


 やがてテオの喚く声が聞こえたのだろう。

 導師アンナが外へと出てきた。


「その卑怯者が悪いのに、ニルスがおれの邪魔をするんだっ!」


 ビシッと私を指差して、テオがアンナの支持を得ようと私を悪者にして叫ぶ。

 私とニルスはというと、テオのあまりにも頭の悪い態度に、すでに閉口気味だ。

 呆れてものが言えないのだが、黙って言われているわけにもいかない。


「ニルス、導師アンナにありのままを話してくらさい」


 私の言葉よりは公平性があると思われるだろう、とあえて私は口を挟まないことにした。

 喚いている本人と、言いがかりを付けられている人間の発言よりは、騒ぎを止めようとしている年長者の言葉の方が大人も聞きやすいはずだ。


「ティナお嬢さんの髪の毛を、テオがいきなり引っ張ったんです」


「いきなりじゃないっ! そいつがミルシェを苛めてたからっ!!」


 喚くテオに、アンナは深々と溜息をはく。

 どちらが本当のことを言っているのかは、これ以上続ける必要もなく理解されていそうだ。


「……ミルシェ、そうなのかしら?」


「ちがいます。わたしは、おねえちゃんのお名前を聞いていただけです」


 テオの乱入で放置されることになっていたが、ミルシェはまだいたらしい。

 出会って早々面倒なことになっているが、テオのせいでこれから怖がられたらどうしてくれようか。


 ……うん? 俺の妹、とか言ってた?


 テオ曰く、『俺の妹』がミルシェである。

 言われてみれば、黒髪がテオと同じだ。

 七歳以下はメンヒシュミ教会に通えないということを考えると、ミルシェは最大で八歳、最小で七歳になる。

 兄のテオが八歳だというのなら、七歳と考える方が自然だ。


 ……下町の子が教会に通うには、ちょっと早すぎない?


 テオとミルシェの服装を見れば、あまり裕福な家庭の子ではないと判る。

 貧しい家庭の子は小さくても何かしらの仕事をしていることがあるので、七歳になってすぐにメンヒシュミ教会へ来ることは少ないとレオナルドから聞いたことがあった。

 それなのに七歳になってすぐメンヒシュミ教会に通っているということは、早いうちに教育を済ませてしまおうという考えよりも、この暴れん坊の兄の抑止力として通わされているのではなかろうか。


 ……だとしたら可哀想。こんな他者ひとの話を聞かない兄のお守りとか。


 ミルシェに対して一人で勝手に同情していると、アンナによるミルシェからの聞き取り調査は終わったようだ。

 ミルシェは単純に私と仲良くなりたいと思ってくれていたらしい。

 勇気を出して話かけてくれただけなのだが、そこへテオが乱入してきて、勝手に妹を苛めるな、と暴れ始めたそうだ。


「……どうやら、テオにはまだメンヒシュミの祝福を受ける資格はないようですね」


 学ぶ気がないのならメンヒシュミ教会には来るな、と言うような言葉を、やんわりとアンナは口にした。


「夏の貴方は他の子の邪魔ばかりして……まったく学ぶ姿勢を見せなったのに、秋になったら今度こそちゃんと学ぶとわたくしと約束したでしょう。知の神メンヒシュミに誓って、学びという祝福を受けたいと願うから、再び教会に通うことを許したのですよ?」


 その約束を守らず、他の学ぶ気のある人間の足を引っ張るのは許しません、と導師アンナは静かに告げる。

 諭されたテオは一応口を閉ざし、振り上げていた腕を下ろす。

 その仕草にテオが落ち着いたとみたニルスが腕の拘束を解くと、それを待っていたかのようにテオは私の頭をポカリと叩いた。


「痛っ!」


「これ、テオ!」


 まったく反省していなかったと判るテオの行動に、アンナがテオの肩を捕まえる。


「うるさいっ! そいつが悪――」


 最後までは言わせなかった。

 基本的に平和主義で争いを好まず、ある程度の理不尽も飲み込んで我慢する私ではあったが、限度というものはある。


 ……つま先でを蹴らないだけ冷静だね、私。


 足の裏でテオのお腹を押すように蹴り上げると、アンナに肩を捕まえられていたテオは見事に尻餅をついた。

 これまでずっと我慢していた私に、まさかやり返されるとは思っていなかったのだろう。

 テオは何が起こったのか判っていないような顔できょとんっと瞬き、私に蹴られたと理解すると火が付いたように泣き始めた。


「かっこわるっ! これまで散々わたしにしてらこと、自分がやり返されると泣き出すとか、そっちのがひきょう者れすよ」


 弱虫、と吐き捨てるようにトドメをさすと、何故か私もアンナに怒られた。


「ティナさん、乱暴はいけません」


「解ってましゅ。だから今まで我慢してたんれす。この子にいきなり髪の毛をひっぱりゃれるのは、今日が初めてじゃないんれすから」


 これまでのテオからの暴力と暴言の数々を、覚えている限り全てアンナにぶちまけた。

 おとなしい無口な子どもと思われていたようで、全部を語り終わる頃には若干引かれていた気もする。


 大人に諭されても理解を示さず、さらに殴ってきたのだから、そろそろ殴り返すのは当然であり、私は悪くない。

 そう主張したら、「女の子なのだからお淑やかに」だとか「暴力はいけません。まず話し合いを」と、逆に私が諭されてしまった。

 これまでそれを実行していての結果が今日である、という主張は聞き入れてはくれないようだ。


「……解りましら。次からは子どものしたことらって飲み込まずに、ぼうりょく事件として騎士に訴えましゅ」


 どこの世界でも子ども同士の争いとして片付け、教師は動いてくれないらしい。

 だったら警察や弁護士に訴えろ、というのが日本の新常識だ。


 その程度の軽い考えだったのだが、この言葉はテオよりもニルスに脅迫としての効果があった。

 グルノールの街は日本とは違う。

 警察に近い役割を黒騎士が担っており、その黒騎士の一番上に立っているのは私の保護者だ。

 私に非がない以上、これを実行したらテオがどうなるか、とニルスに訴えられて、さすがに反省した。

 突然髪を引っ張られるのが痛いし困るというだけで、まさかテオに対して死ねとまでは思っていない。

 レオナルドがそこまで極端なことをするとは思えないが、私が自覚するのは必要だろう。

 レオナルドの妹として扱われるのだから、私の言葉はある程度理不尽な暴力と同じ力を持つ、と。


 自分の発言の危うさに気づき、教えてくれたニルスに礼を言い、アンナに言葉を取り消す。

 ただし、限度を越えたら拳でやり返す、という発言だけは撤回しなかった。

 アンナも、ニルスの説明で納得した私に対して、もう暴力を止めろとは言わない。

 私に限っては、まだ手や足を出して反撃する方が優しい対応なのだ、とアンナも思い至ったらしい。







 ……喧嘩両成敗扱いなのは納得いかないけどね。


 あのあと、アンナの裁定で私とテオの本日の授業は中止ということになり、テオは家へと帰された。

 私は迎えが来るまでメンヒシュミ教会を出ることができないので、教会内で時間を潰す必要がある。


 ……宗教はともかく、歴史の授業はちょっと興味があったんだけどな。


 テオのせいで、授業開始一回目からして授業に遅れることが決定してしまった。

 宗教を押し付けられるのには抵抗があるが、どんなものか知ることぐらいはしたいと思っていたので残念だ。

 暇つぶしにメンヒシュミ教会の敷地内を散策する。

 私の勉強の助けに、と付けられているニルスは黙って後について来ていた。


「あれ? ニルス君じゃないか。どうしたの? 今日から騎士団のお嬢様のお手伝いじゃなかった? まだ授業の時間でしょ」


 不意に頭上から声が聞こえ、反射的に顔をあげる。

 二階の窓から真っ直ぐな黒髪の女性がニルスに向かって手を振っていた。


「彼女はここの研究者のアラベラさんです」


 そう私に説明をしてくれて、ニルスは二階の窓を見上げる。

 アラベラと紹介された女性もようやく私がいることに気が付いたようで、目が合うと少しだけばつが悪そうに笑った。


「ティナお嬢さんはテオに絡まれて、導師に残りの授業を受けることを禁止されたんです。今はお迎えが来るまで時間を潰そうと散策を……」


「テオに? そりゃ、災難だったね。あの暴れん坊、夏の間中誰かれ構わず泣かせてたから……」


 なかなかに気風の良さそうな女性だ。

 ハキハキとした物言いに、何故か私までもが罰を受けているという鬱憤がいくらか収まった。

 少しだけ楽しくなってきたので、「逆に泣かせてやりました」とアラベラに報告をする。

 その報告を受けたアラベラはポカンっと瞬いたあと、大きな声で笑い始めた。


「上がっておいでよ。教会の庭を散歩してたって、なんにも面白くはないだろ」


 そんな誘いを受けて、再び建物の中へと入る。

 ニルスの案内で進んだ場所は、メンヒシュミ教会の図書室だった。


「本がいっぱい……」


 もしかしなくとも、城主の館よりも蔵書がある。

 ぐるりと室内を見渡すのだが、本と本棚の森のようだ。


「ここで暇を潰していけばいいよ。本なら売るほどあるからね」


「れも、わたしはまだ字が読めましぇん」


「そういう時はニルス君を使うんだよ。この子はお嬢様のお相手をするために付けられてるんだから」


 ざっくりとした説明ではあったが、アラベラの説明にニルスの役割を理解する。

 やはりニルスは私の従者として付けられていた。

 勉強で解らないところがあれば助言を与え、メンヒシュミ教会内での行動に困ることがあればすぐに対応できるよう、躾けられた少年だったのだ。

 隣の席に座っていようとも、ニルスが今さら同じ授業を受ける意味はない。


「何か読みたい本はありますか?」


 どの棚にどんな本があるのかを説明してくれながら、ニルスがそう言ってくれたので、ちょっと無理そうなお願いをしてみた。

 本来であれば今日受けていたはずの授業内容を知りたい、と。

 私の要求にニルスは少し考える素振りを見せたが、一番小さな本棚から一冊の本を取って戻ってきた。


「今日の授業はおおまかな歴史の解説です。本当におおまかな解説なので、詳しくは次の授業からやることになっているから、聞き逃しても大丈夫ではあります」


 そう前置いて、ニルスがこの世界の歴史をざっくりと教えてくれた。

 この世界の歴史というよりは、成り立ちだろうか。


 ……宗教と歴史が絡んでるって、ちょっと不思議。


 宗教の歴史と考えれば不思議でもなんでもないが、世界の歴史と宗教の成り立ちが絡まりあって存在している。

 漠然と進化の過程は無視して「この世界は神様が作りました。人間も神様が作ったものです。だから生物で一番偉いのです」だとか人間に都合の良いことだけを教えられるのかと思ったら、違った。

 進化という認識と、神が様々なものと作った、という考えが同時に存在している。


 まず、神様が宇宙を作り、海や陸といった物を作った。

 その上に様々な動物を作り、放った。

 動物たちはそれぞれに進化し、増えたり減ったりしながら神様と共に過ごしていたが、ある時神様そっくりな姿をした人間という種族ができた。


 このあと人間が増えすぎたり、戦争をしたりして、神様が人間を見捨てて天界を作り、そこに移り住んでしまう。

 こうして歴史から神々は姿を消した。

 あとはどこにでもある国の成り立ちが始まる。


「……追想祭は昔からあるって聞いたんれすけど、どのあたりのお話れすか?」


「追想祭というと、慙愧ざんき祭だね。慙愧祭はちょうど神様が地上を捨てた頃……というか、神様の怒りに触れた一番の原因だ」


「え? そうなんれすか?」


 村に住んでいた頃は小さな悪戯をして謝る祭りの日だったのだが、歴史を習うととんでもない謂れの祭りだったらしい。

 神の実在はともかくとして、歴史の転換期であることには間違いなかった。







 授業終了の鐘がなると、ニルスによる簡単な歴史講座も終了した。

 一階に下りて建物から出ると、すでにバルトが迎えに来ているのが見える。

 教室とは違う方向から出てきた私にバルトが驚いていたので、何があったのかは包み隠さず話した。

 その途中でニルスとは別れる。

 彼も家に帰るのかと思ったら、彼はメンヒシュミ教会で生活しているらしい。

 今日は私の世話が彼の仕事だったが、普段は研究に没頭して生活面がどうしても疎かになる研究者たちの世話をするのが仕事だと教えてくれた。


 ……十二歳でもう家を出て働いているのか。


 なんとなく二十歳になったら一人前扱い。

 成人である、と思っていたのだが、やはり成人年齢も日本とは違うようだ。

 バルトに聞いてみたら、十歳になれば働いている子どもは普通にいるし、十五歳になれば成人として結婚もできるとのことだった。


 ……十歳で働いてるのが普通って、私もそろそろ働いた方がいいってことですね!


 この小さな体格の私に出来る仕事があるだろうか、と悩み始めると、背後から追いかけてくる足音がある。

 なんだろう? と振り返ると、大きな鞄を持ったミルシェが私の方へと走ってきた。


「あの、ティナおねえちゃん、今日はテオがごめんなさい」


 ぺこりと頭を下げて、ミルシェがテオの非礼を詫びる。

 小さくて素直そうで誠実に見えるミルシェは非常に可愛らしいので私もでたいのだが、可愛いという感情よりも同情がどうしても先にきてしまう。

 あの兄の引き起こす騒動を、こうやって毎日のように尻拭いさせられているのではないだろうか。


 ミルシェの言うことには、授業中にじっと椅子に座っていることができない暴れん坊のテオがメンヒシュミ教会に通わされているのは、暴れん坊すぎて家へは置いておけない、というのが理由だそうだ。

 七歳になった頃から、両親がこれ幸いとばかりにメンヒシュミ教会にテオの子守を押し付けているらしい。


 ……赤ちゃんが来る場所じゃない、って自分で言ってたくせにね。


 初めて会った時に舌っ足らずな私をそう言ってからかってきたテオ自身が、親に赤ん坊と同じ扱いを受けていた。

 そして、被害者はメンヒシュミ教会の人間と、同時に授業を受けることになる生徒たちだ。

 どうりで、普通は面識さえ持つはずのない研究者がテオの名前を知っていたわけである。


 ……ちゃんと躾けしてから教会に通わせてよ。


 テオ自身が学べないのは自業自得で終わる話だが、巻き込まれる他の生徒が災難すぎた。

 そして、私もその災難な生徒の一人である。

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