悪夢の涙
目を覚ます。夢だったという安堵と、正夢になるのではないかという不安が頬を伝った。拭えば涙だった。透明な液体はカーテンから微かに漏れる早朝の光に照らされ輝いていた。
今日、大丈夫なのだろうか。失敗してしまうのではないだろうか。自分は決して一人ではないが、また壁を作ってっしまうのでないか。熱い涙が流れ続けるので、顔を埋めるしかなかった。
いつもは千鶴に起こされるまで寝ているが、寝るにも寝れなかったのでいつもよりずいぶん早い時間に起きた。
瞼が思うように開かない。きっと瞼が腫れているのだ。静かな廊下を歩き、台所に行く。まだ誰も起きていないようで、この世界には自分一人しかいないのではないかと錯覚してしまう。
保冷剤と濡らしたタオルを温めたものを持って、そさくさと部屋に帰った。手鏡に顔を映す。漫画のように腫れた瞼は滑稽だった。どこかのサイトで泣いた後に腫れるのは、血行が悪くなっているからだと書いていた。マッサージするのもよし、冷やして温めるもよし、だそうだ。
効果がありそうな後者を試してみる。まず冷やす。保冷剤の冷気が瞼の熱に吸い取られていく。気持ちがよかったのが逆に痛くなり、慌てて温めたタオルをあてる。温もりが疲れた目の奥までほぐす。あまりの気持ちの良さに寝そうになるのを、慌てて保冷剤で覚ます。
温めたタオルが冷めるまで交互に押し当てると確かに軽くなっていく。鏡を見ると、泣いたとは分からないくらいには戻っていた。少し目が赤いように思えるが、花粉だと言い張れば大丈夫だろう。
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