悪夢
大会前日、たくさんの人に応援されたが、それに答えられるのだろうか。いつもの恩返しをしたい。
夜、布団に入ると、嫌な感覚に襲われた。腕の力が抜け落ちる感覚。その後聞こえるのは、決まって安土に矢が刺さる音。
もう二度とあの音を聞きたくない。聞きたくないはずなのに、何度もその音が鳴る。もし、また外してしまったらどうしよう。もし、また自分の体が制御できなくなったらどうしよう。もし、また大切な人を傷つけてしまったらどうしよう。もし、また––––。
止まることなく溢れてくる嫌な仮定は、黒い渦を巻いていく。どうしよう、と思えば思うほど冷静な自分が失われていく。あの大会の日のように蒸し暑い。
耳鳴りなのか、油蝉の鳴き声まで聞こえる。呼吸が浅くなり、頬に汗が伝う。うるさい。複雑に絡みあった感情と、油蝉の鳴き声、季節外れの暑さに吐き気がした。
もし、また失敗して、傷つけてしまって––––嫌われたらどうしよう。ことやに無視をされる情景や、千鶴に冷ややかな目で見られる場面が嫌なくらい鮮やかに映し出される。
待って。行かないで。私を一人にしないで。そう叫ぶ私を知らんふりして二人はどこかへ行ってしまう。きっとこれは悪夢だ。こんなことは、起こらない。起こってほしくない。これも、独りよがりな願望なのだろうか。いや、そんなこと二人はしない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます