10月

弓の音

 弓道場で弓を引いているとことやの箏の音が聞こえた。箏の音が何かの音に似ていると思っていたら、弦を弾いた時に出る音だ。弓を引いている時にごくたまに、高い音が聞こえるのだ。その小さな響きを聞くと、私はなぜか安心できる。きっとことやの音に似ているからだと思った。


 この頃ことやは、よく学校に来ている。体調がよくなったというのは本当で、顔色もよくなり心なしか体つきもしっかりしてきた。


 文化祭で頑張った甲斐があり、部が存続できるくらいの人数は集まったと言う。楽しそうに話すことやを見ていると安心だ。


 部員がいるにもかかわらず、私はあの畳の部屋に通っている。でも、気づいた時にはもうそこにいるのだから仕方ない。

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