9月
部員集め
九月が始まったとはいえ、まだ暑さは厳しかった。茅蜩がしつこく鳴いていた。窓から見える空は真っ青で秋のカケラは微塵もなかった。
熱心に同じ曲を練習する青葉を眺めながら、どうしてそんなに練習するのか聞いた。
「箏曲部に一応所属しているのですが、実は部員が一人なんです。ちょうど去年度卒業した人が最後だったみたいで、僕が入学した時には廃部になっていたんです。
僕にできることとといえば箏くらいなので、先生に無理言って入部させてもらいました。でもこれから部を残したいのであれば部員を集めなさいって顧問の先生に言われたので、文化祭で集めなければなと。
部として存在し続けるには五人はいるみたいで。四人集めないと。」
「そっかだから練習頑張ってるんだ。」
青葉は、はにかんで頷いた。でもこの部分が難しくて、と言いながらも一生懸命弾いている。
「澪さん、文化祭何か予定あるんですか。」
弓道部は文化祭での出し物はない。クラスの模擬店も他の子に任せて大丈夫だ。
クラスメイトに役割決めの時に遠慮がちに空いている時間帯を聞かれたのを思い出す。苦い感情が心を取り巻いた。
ないと呟くと青葉は目を輝かせて
「じゃあ、澪さん。僕、二日目の午前中に体育館で独奏するんです。本当は舞台に立つのとか苦手なんですけど、箏曲部存続のために頑張ります。だから、澪さんに見てほしいんです。僕の頑張る姿を。」
と興奮した様子で言った。
「えぇ、いいわよ。楽しみにしてる。」
と頷くと嬉しそうに笑った。青葉の笑顔を見ると嫌なことを忘れてしまう。
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