8月

弓道大会

 弓道大会が近づいても、やはり射の形は一向によくならなかった。それどころか、日が経つにつれもっと悪くなっているようだった。



 それは大会当日もだった。八月上旬、蝉の良く鳴く暑い日だった。忙しい両親も応援に来てくれ、千鶴も青葉も来てくれた。調子が悪いことを私は誰にも打ち明けられていなかった。完璧でない私を他の人に見せた時点で、私は私でなくなるのだ。



 弓道場に入場する前、青葉と千鶴が私の元にやってきて激励の言葉をかけた。


 だが、その言葉が皮肉に聞こえ、そうでないと分かっていながらも、黒い感情がが渦を巻いて胃を持ち上げ、ついには口から出てしまった。


 我に返った時にはすでに遅く、千鶴はばつの悪そうな顔で顔を背け、青葉は驚いた様子で固まっていた。謝ることもできず、私はその場を去ることしかできなかった。


 ブザーみたいな蝉の音がやけに大きく聞こえた。素直になれない自分に腹が立ったが、改まって二人にごめんなさいと言うのも気が引けた。


 練習で失敗していたことは、本番にはできない。案の定矢は二本とも外れた。離れの感覚が手に鮮明に残っている。力を十分に蓄えずに離してしまい、矢は間抜けな音を立てて安土に刺さった。黒茶の土に刺さった矢の白がやけに目立った。格好悪い。自分を思い通りに操れないのは歯痒い。奥歯を噛んで残心。

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