失敗

 蝉の声で目を覚ました。


 今日は何か夢を見ていた気もするが、そうでない気もする。実に不思議な感覚だ。夢の内容はと聞かれると何も答えられない。


 蝉の鳴く日なのに、あの夢を見ないのは初めてかもしれない。いやそうではない。思い返してみると、あの畳の部屋に通うようになってからだ。確かに孤独を感じることは少なくなったように思える。


 七月も中盤に差し掛かり、大会が近くなってきた。完璧に引かないと。私はそう言い聞かせて朝の弓道場に立った。まだ朝だと言うのに、もう暑く汗が顔を伝うのがわかった。


 足踏み、胴造り、弓構え、打起こし、引き分け、会。離れまでの体の動きを丁寧になぞる。しかし思い描く理想の動きとは裏腹に、私の射法は乱れた。


 止めていた息を吐いて離れ。案の定的中しなかった。安土に突き刺さる不格好な音が響いた。焦燥感に駆られ、弓を投げ出しそうになるのを堪えて残心。揖、射の終わりを告げる。


 練習で完璧にできなかったら、本番でもできないだろう。どうにかして完璧に引かないと。だが、そう思って練習すればするほど的中しなくなった。


 考えたくもないのに、大会で甲矢と乙矢両方が外れるという最悪の事態を想像してしまう。どうして完璧になれないのだろう。

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