第3話 啓示
俺達は異世界転生してからついに魔物との戦闘を経験し、それを食す。命の奪い合いを体験した。と言っても攻撃と止めは俺が刺した。次の戦いが有れば、晃達に任せても良いだろう。
それから最終目標である神による世界崩壊を止めるべく、神を殺す計画について考えるが俺たちにとっては、神とはあまりにも非日常的な存在。それを殺すという考えはいくら頭を捻っても答えは出てこなかった。
そんな俺達に突如、頭の中に声が響いた。
『神の意思に反せし逆賊共よ。我が計画を阻止したいのならば知の無い汝らに我が啓示を与えん。
我が名は神ゲルニクスなり。我が声に従えば汝らに新たな道が見えるだろう。
では良く聞け。これより貴様らが進む道に、"黒を黒で塗りつぶせし者が現れん。"これを見て、何をすべきか、汝らが決めよ』
神の啓示。これから10年後に世界を崩壊させようとしている神からの手助け? 一体どういう風の吹き回しだ?
「おい、今の声が仙人コロスケなんたらってやつか?」
「神ゲルニクス。神の意思に反せし人間を殺し、世界の崩壊を目論む存在……。晃、一文字も合ってない……」
「お、おうすまねえ」
「でも今手助けするって聞こえたよな? これから進む先にとか言っていたけど、塁は何か見えるか?」
塁は首を横に振る。どうやら今日中に起こる事では無いようだ。
こんな草原のど真ん中で近日起こるかも分からない未来を言い渡されても困る。結局今の俺達には意味がないと判断したところで、突然香織が一方向に指を差しながら喜び飛び跳ねる。
「ねぇ! あれって街じゃない? 意外と王国のすぐ隣に街があったのね!」
「距離は此処より2.3km。あの感じ、多分何かの駐屯地か、砦だと思う……」
「え、塁は一体何キロ先まで見えるんだ?」
「限界は100kmまで。王様が言っていたとおり、軍師に見合った能力かも知れない……」
その指差す先にはとてもまだ小さくとしか見えないが、辛うじて建物が立ち並ぶ場所だと分かった。距離も歩いて行ける距離で、俺は新しい街に着くということを少し楽しみにして、若干走り気味で歩き始めた。
◆◇◆◇◆◇
歩くこと約40分。その間に何度か戦闘はあったが、その全てが凶暴な狼で、俺の知る異世界の『魔物』がいない分、この辺りは平和なんだろうと思った。
因みに俺たちにはスキルレベルというものがあるが、俗に言うステータスを上げるレベルは無く、転生によって手に入れた能力による身体能力補正だけを頼りに、スキル熟練度を上げることでスキルレベルを上げて戦闘する形になる。
だから無理に戦闘する必要もなく、練習という名目でスキルを他所で使いまくるのもレベル上げの方法の一つとも言える。ただ実戦経験が浅くなってしまうのが唯一の難点か。
なので俺は狼との戦闘に度々晃や香織を参加させつつ、死体は解体・吸収した。塁は情報分析役で、詩織は万が一怪我をした際やスタミナの減少に気が付いた時の回復役に回す。
そんなこんなで俺が街に到着した頃には既に俺は人間を止めていた。全身に黒い体毛が生え、嗅覚から聴覚も敏感になり、足も余裕にウ○イン・ボ○ト超える速さになった。
なので仕方が無く、香織に変幻の魔法をかけてもらい。人間の姿にしてもらっている。
到着した街は塁が言った通り街と呼べる場所ではなく、銀色の鎧を着た騎士が所々に剣を腰に携え、警備している様子で、物々しい雰囲気があった。
全体的な形から見て、此処は国境砦だ。銀色の騎士より砦の奥を見れば、真っ暗な鎧を赤いマントで羽織り首から赤い布を垂らした騎士がいた。
正に国と国の境界線が此処に当たる。
ただそんな物々しい雰囲気でも人々の活気はあり、小さな屋台を上げ、各々商売をしている人も見かけた。
例えば俺たちが来た方向から子供が黒い騎士の方へ走って行っても、黒の騎士は子供を抱き抱え笑い合う姿。ふと店の窓を見れば、銀と黒の騎士二人が酒を飲みながら愚痴り合う姿があり、全く緊張状態ではないことが分かる。
そんな光景に俺は少しでもほっと胸を撫で下ろした。
「普通に良い場所じゃねぇか」
「よし、とりあえずなんか色々揃ってそうな場所だし、特に危険も感じないから一旦ここで自由行動にしようか! お前らは王様から支給された金があるだろ? 俺は……まぁ、なんとか王国に申請だしてみるよ。じゃあ時間は1時間で、同じ場所に集合ってことで。解散!」
此処で自由行動に移した理由は、いくら詩織がスタミナ回復する方法があれど、精神的な疲労は回復できない。それと香織や詩織も小さな屋台でもアクセサリー屋等もあってか目をキラキラさせていたからだ。
なんか俺何かとグループリーダーみたいに仕切ってるけど、異世界転生を計画したのは俺自身だからな。何故か分からないが俺が仕切らないといけない気がする。
こうしてみんなと解散し、俺は王国との連絡方法と周辺の情報収集へ行った。やっぱりこういう街に来たらとりあえず情報収集だよな!
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