6 ヘリ
翌朝は驚くほど快適な目覚めだった。
6時に起床し窓から外を眺めると小学生の夏休みを思い出すような快晴で空が青い。
気温はさすがに高いが不愉快な程ではない。
2か月サボっていた日課のランニングを再開した。
歯を磨き、顔を洗いTシャツと短パンジャージの軽装に着替えてスマホ、イヤホンを持ってランニングシューズを履く。
音楽を聴きながら走ると余計なことを考えないで走ることができる。
いつものコース、8km程を走ったが中々に体力が落ちていた。
「お疲れ!頑張ってるね!」
家のそばまで来ると隣家の近内さんが声をかけてくれた。
庭に水を撒いていたようだ。
「おはようございます、久しぶりに走って疲れました。」
「最近走ってなかったよね。続けないと駄目だよ!」
近内さんとは俺が生まれてすぐ位からの付き合いで
去年まで家のそばにある自衛隊に定年まで勤務していた。
眼鏡をかけており体型は丸々としているががっちりしている。
朗らかで昔からよく話しかけてくれる。
ランニングの後に少し会話するのが日課になっていた。
「奥さんは元気ですか?」
「まあまあだね、最近は元気になってきてるよ。」
奥さんは胃半分の切除手術をして静養中だった。
バタバタバタと独特な音が上空から聞こえる。
自衛隊のヘリコプターからのプロペラ音だ。
自衛隊駐屯地で離着陸しているのだが結構大きな音がする。
いつもは駐屯地からヘリコプターの音が聞こえる事はあまりない。
だが今日は朝から何台も離着陸を行っているようだ。
「ヘリ、今日は頻繁ですね。」
「そうだね」
近内さんは真剣な表情で上空を見つめる。
自衛隊にいた最後の頃はだいぶ上の地位にいたようだが詳しくは聞いてない。
「じゃあ、会社に行く準備します。」
「はい、明日もちゃんと走るんだよ!」
シャワーを浴びスーツを着て出勤の準備をする。
その中でも彼女のことを思い出す。
昨日の出来事がありのまま思い起こされる。
あれだけの状態で生きていることができるのか。
潰れた顔は元通りになるか。
全身を打っていた、障害は残るのだろうか。
昨日寝る前に何度も考えたことを今朝も考えている。思い出している。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます