4 フラッシュバック
警察官の聞き取りは形式的なもので状況の確認だった。
向こうからの質問に丁寧に答える。
無駄に反抗的になってもろくなことはない。
この警察官は年代は40代前半だろうか。
身長は165cm位、182cmの俺は見下ろす形となる。
声がだみ声で、目がひどく充血している。歯が異様に白い。
「はい、これで終わりです。行っていいですよ。」
「あの被害者は、えっと、お亡くなりになったんですか。」
聞いても答えてくれないだろうが駄目元で聞いてみる。
警察官は俺の顔をちらりと見て
「えーあなた、だいぶ顔色が悪いですよ。
早く帰って休んだ方がいいです。」
と言って答えず去っていった。
予想通りだ。
少しイラっとしたが確かに精神的にも体力的にもクタクタになっている。
もう何もしたくない、家に帰って寝てしまいたい。
俺は駐車場に停めていた車に乗り込み自宅に向かう。
辺りはすっかり暗くなっている。
外は暑いままだが車の中はクーラーで涼しく、気分がいくらか和らぐ。
いつもより周辺の状況を注意深く確認しながら車を走らせる。
長い直線や信号待ちの度にフラッシュバックが繰り返される。
飛び降りた女性のなびく長い髪。
まっすぐ地面を見つめる目。
地面に落ちた時の音。
起き上がる動作。
俺に向けた潰れた顔。
俺を指した血だらけの指。
何度も何度も彼女が死ぬ。
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