第17話 がっこう ①

 シホとマホが家に来て、早1週間が経過した。


 まず変わった事が、これまではイオリとサオリが一緒の部屋を使っていたのだが、それぞれ別々の部屋を割り振った事だ。


 部屋はまだ余っているのに、寧ろ今まで二人で一部屋を使わせていた事の方が、申し訳なく思う。


 そして、その事に伴いシホとマホにも部屋を割り振りはしたけれど、眠る時に四人は一緒の部屋で寝ていた。


 ・・・筈だったのだが、毎朝僕が起きると何故かシホとマホどちらか、若しくは両方がベッドに潜り込むという事件が、二人がやって来て二日目から毎日起きる。


 どうやら二人は夜中にトイレに起きると、僕を探すらしい。


 イオリ曰く、僕は少し体温が高いようでくっつくと暖かくて安心するとの事だが、何となく違う気がしなくもない。


 普段から鍵をかけずに寝ていた僕に原因があるのは違いないけれど、一度鍵をかけて寝たら夜中に二人が泣きながら僕の部屋の扉をドンドンと叩き、ちょっとした騒ぎになってしまったので、それ以降は鍵はかけず、シホとマホのやりたいようにさせる事にしたのだった。



 ただ、その事で困った事をする二人も居る。


 シホ達が僕のベッドに潜り込む事を仕方なく受け入れて以来、僕は二人の安全の為にベッドを使わなくなり床に布団を敷き寝るようになったのだが、今日も起きると相変わらずシホとマホは僕の布団に潜り込み、服にしがみ付いて寝息を立てていた・・・が、それは別にいい。


 何故、イオリとサオリまでもが僕の部屋で布団を並べて寝ているのだろうか?


「あにうぇおはよぉ・・・」


 目が覚めてイオリ達も居た事に驚いている僕に、目を擦りながらサオリは朝の挨拶をする。


「うん、おはよう。・・・じゃなくて!何でシホやマホはともかく、イオリやサオリまで居るの!?」


 サオリはまだ眠いのかおはようと言いはしたものの、その目は殆ど開いていない。


 寝起きの悪さは相変わらずのようだ。


『ご主人様、おはようございます。』


 すると、僕の話声で起こしてしまったらしいイオリも、サオリと同様に此処にいるのがさも当然かの如く朝の挨拶をしてくる。


 サオリとは違って、イオリの寝起きはいいらしい。


 綺麗な長い髪が少し乱れている姿に、僕は不覚にもドキドキしてしまうけれど・・・今は置いておく。


「おはようイオリ。・・・キミたちが居る理由を説明してくれるかな?」


『シホちゃん達が潜りこむのを止めるぐらいなら、皆で寝ればいいと思いまして。』


 その答えは、理由になっていないよ。


「なるほど・・・とは言わないからね?イオリもサオリも、もう立派な女性なんだから、少しは自重してよ。」


『だから・・・ですよ?』


 悪戯っぽく口元に人差し指を当て笑いながら答えるイオリの仕草で、心臓の鼓動が更に早くなるのを感じると同時に、言い様の無い不安にも似た感情が湧いてくる。


 ・・・何だろう、これは?



 そんなやり取りから、今日も一日が始まった。




 シホやマホの着替えと洗顔はイオリ達に任せ、僕は朝食の用意をする。


 かなりの量を作らなければならないので、トースターやフライパンを全力で稼働させて準備をするのだが、どうやっても時間が掛かってしまうな・・・。


 これから畑を広げる計画もある訳だから、今後に向けて日が昇る前から作り始めるのも考えなければならないだろう。


 まぁ、朝食の準備もイオリ達が手伝ってくれるし、皆で話をしながら作るので中々に楽しいものだから、苦になる事はない。


 寧ろこの光景が、愛おしくすらある。



 そんなこんなで皆で朝食の用意を終え全員で朝食を摂り始めるが、食べている最中も人数が増えたからか、とても賑やかだ。


「だんなさま!マホ、がっこういきたい!」


「学校?どうしたの、急に。」


 マホの突然の発言に思わず聞き返してしまうが、またアニメの影響だろうか?


「マホ、べんきょうしてみたいの!」


「ボクも、まーちゃんとべんきょうしてみたいです。」


 僕は勉強したくないな・・・。


 余り得意ではなかったから。


 流石に言わないけれどさ。


「そうなんだ。でも、どうして突然?」


「きのう見たのが、たのしそうだったから!」


 やはりアニメの影響のようだが、沢山の子供達が楽しそうに遊んだりしている事が、羨ましく見えるのだろう。


 此処には僕達しか居ないのだから、そう感じる事は仕方がないのかもしれない。


「なるほどね。・・・そうか、学校か。」


 そう言えば以前にも少し考えた事があるけれど、イオリ達は読み書きを出来るのだろうか?


 いや?


 僕のタブレットを操作しているから、文字が読めるのは間違い無い。


 なら、書く事も出来はするだろう。


 ・・・よくよく考えると、今までは当然のように思っていたが、僕は文字を教えていないのに、彼女達が文字を読める事が不思議に思えた。


「あれ?僕、今まで気にしてなかったけれど、イオリやサオリも文字が読めないと、アニメのタイトルの漢字とかも解らないよね?これが刷り込みって事?」


 気付いたら全員が出来ていたから、気にもしていなかった。


 この子達は、学校に行っている訳じゃないのに。


 〈はい、そうです。文字に関しては全員刷り込みでの教育を行なってはおりますが、イオリに関しては培養槽に居た期間が短い為、別途で貴方が居ない時間等を利用して言葉を教えて居ました。勿論全てではなく、貴方が教えた事が多いのは言うまでもありません。〉


 ・・・やはり、そうだったのか。


 ノアの補助が必要だった部分って、こう言う所もだよな。


 だから、イオリはノアを先生だと言っていたんだ。


 なんだか、悔しいな。


 こんなにも僕は、彼女達自身を見ていなかったって事なのだから。


 そんな思いからか僕はつい黙ってしまって、暗い表情をしていたらしい。


『ご主人様は慣れない畑を作ったり、食事の用意をしたり、家事をこなしたりで大変だったんです。だから、気にやまないでください。それに、ノアも文字以外はご主人様に聞いてみたらいいと言っていたりしましたし。』


 〈当機も全てを把握しているはずもなく、人の感情を表現する言葉もありますので、分担して彼女達を育てていたのです。貴方が気にする事ではありません。〉


 そんな僕を気にしてか、イオリやノアから慰められるが・・・違うんだ。


 僕は恥ずかしいんだよ。


 僕の中に彼女達にこれだけ教えたのだからと言う、優越感というか自己満足のような気持ちがあったと気付いたから・・・。


 きっと、それも彼女達をきちんと見ていなかった原因の一つだって、やっと分かったからなんだ。


「イオリ、ノア、ありがとう。でも、気にしているのとは違うから、大丈夫だよ。」


 シホとマホは、自分達が変な事を言ったと思ったのか少し焦っているようだ。


 サオリやイオリも心配そうな顔をしている。


 ・・・僕は、後悔をしちゃいけない。


 省みる事がこれからのために必要なのだろう。


 それならーーー


「シホ、マホ。・・・それなら、学校を作ろうか。」


 僕は、僕に出来る精一杯を・・・するだけだ。



「学校を・・・作る?建物を作るんですか、兄上?」


「だんなさまが作るんですか?」


 不思議そうな表情で問い掛けるサオリとシホの言葉で、僕は変な言い方になっていた事に漸く気付く。


「ごめんごめん、ちょっと言い方を間違えてた。建物を作るんじゃなくて、皆で勉強や、遊んだりをしようって事だよ。」


 まだ何か語弊がある気がするのだが、主旨はおおよそ伝わるだろう。


『ご主人様、遊ぶのは判りますけど勉強・・・ですか?具体的に何かするんですか?』


 まだまだ、漠然としすぎていたらしい。


 僕はどうして言いたい事を言葉にするのが下手なのだろう?


「具体的に何かを勉強するとかじゃないんだ。・・・イオリやサオリもだけど、字を書いた事あるかな?」


「あたしは・・・無いですね。絵なら書いたりはしましたけど。」


『私もありませんね。サオリちゃんと一緒で、お絵描きくらいなら・・・』


 今の生活だと遊びで絵を描く事はあっても、自分の名前を書いたり、簡単な計算をする事ですら必要が無かったりする。


「うん。知識を持って居たとして、それは知っているだけなんだよ。だから、先ずは皆で文章を書いたり、絵を描きに行ったりしてみよう。それに、野菜を作る事だって勉強になったりもするんだよ。」


 皆で改めて何かをする事で、学べる事もあるはずだから。


 そういった、経験や思い出を作る為の・・・僕達だけの学校。


 記号ではなく、学ぶという概念としての学校なら彼女達にも意味はあると思う。


「兄上が何を言いたいのかは良く判りませんが、楽しそうなのでやってみたいです。」


「はい!マホもやりたい!」


「ボクもやってみたいです。」


『確かに私達、知識を刷り込まれているだけですし、いいと思います。』


 僕がここに来て失ったものもあるけれど、得たものも数え切れない程ある。


 きっと、これから得る物をイオリ達と共有する事で、彼女達を今より知る機会が生まれるだろう。


 だから、これは僕にとっても大切な事だ。


「よかった。じゃあ、僕は色々考えておくよ。でも今は、ご飯食べちゃおうか。今日いきなり何かをするのは、畑の作業もあるから難しいけど、また夜にでも、ノアや皆と相談するね。」


「はーい!マホもおてつだいするー!」


 そうして皆で朝食を摂り終えてから、僕は今日予定していた農作業をこなしながら考える。



 学校と言いはしたものの、具体的に何をするかとなると中々思い浮かばないな・・・。


 学校らしい事・・・ねぇ?


 一番最初にやる事と言えば、自己紹介とか?


 ・・・いやいや、幾らなんでもそれは今更すぎる。


 じゃあ、何かを教えるなら小学校の科目にするか?


 となると、算数?国語?


 社会・・・は、今更地球の事を勉強しても仕方ない気がしなくもないし、得意だった理科ならまだ何とか教えられそうだけど、何となくしっくり来ないんだよな・・・。


 それに、いきなり算数や国語を教えるとかよりも、文字を書いた事が無いなら、まずはきっちり50音を書けるかどうかを見るべきでは?


 彼女達は、自分の名前だって書いた事が無い訳だし。


 ・・・あっ!それならーーー



 そして畑での作業を終え、晩ご飯を食べている時、僕は昼間思いついた考えを話す。


『私達の名前を書く、ですか・・・?』


「うん、呼ぶ事はあっても、お互いの名前を書いたりした事はないよね?アニメやゲームから名前をとってはいるけれど、ちゃんと皆の名前には意味があるよ。」


『名前の、意味・・・』


 名前を付ける際に、赤ちゃんに命名する時の本を読みもしたからね。


「・・・だから、最初に自分の名前の意味を、知って貰おうと思ったんだ。」


「確かに、あたしの名前の意味って考えた事なかったです。」


『ええ、私もです。』


「マホもしりたい!」


「はい、ボクも知りたいです。」


 皆、賛成のようだ。


 マホとシホだけでなくイオリとサオリも楽しそうで、僕も嬉しくなる。


「じゃあ、そうしようか。」


「はい、兄上。」


『ご主人様、どこでやりますか?居間だと狭いかもしれませんよ?」


 そう言えば、場所は考えていなかった。


 折角なら、雰囲気作りもしたいから・・・青空教室なんて、いいかもしれない。


「外に机を設置して、そこでやろう。青空教室だよ。」


『それは素敵ですね。当然、私達もお手伝いしますよ。」


 今思い付いたけれど、机や椅子を手作りしてもいいだろう。


 上手く作れなくても、それはそれで経験になるし。


「じゃあ、机や椅子も皆で作ってみようか。その方が、僕達による僕達だけの学校って感じがしないかな?」


『いいですね。』


「・・・あたし、なんかワクワクしてきました!」


 待てよ?


 そうなると少し問題もあるな・・・。


 野菜とは違い、木材を保管してはいないのだ。


 ゆくゆくはやらなければならないだろうが、殆ど林業を知らない今の僕達には、木を一から切り出すのは危険すぎる。


 それに確か、木材として使う為の自然乾燥には数ヶ月以上の時間が掛かるとは聞いた事があるし、様々な形に加工する為の労力は勿論だが、専用の機械若しくは道具が必要にもなるだろう。


 ・・・もう少し考えて発言すべきだったと思うも時既に遅く、皆期待に満ちた表情で僕を見ていたので、今更難しいと言うのも言い出せそうには無くなっていた。


 こうなったら、ノアに聞くしかないな。


「ノア、申し訳ないけどある程度加工された木材とか塗料って、用意して貰う事は出来るかな?」


〈塗料は問題ありません。お話を聞く限り、作成に必要な形状の木材は乾燥の工程もあるため、調達に1週間はかかります。〉


 乾燥が必要って事は、方舟にも木材は在庫が無いって事だ。


 素材として保管されていないのは、今まで使う事がなかったから仕方がないな。


「じゃあ、お願い出来るかな?工具は・・・農機具の場所にあったから、大丈夫だとは思う。」


〈かしこまりました。〉


「ありがとう。そうしたら、材料がくるまでに何色を使うか決めて、みんなノアに伝えておいてね。」


『分かりました。楽しみですね!』


「あたし、色は決まってますよ!緑がいいです!」


「マホはなににしようかなぁ?」


「ボクもなやみます・・・」


 僕も何色にしようかな?





「今日は、皆で出掛けてみない?遠足ってやつだよ。」


 そうして、今後何をするかを決めた翌日に朝食の席で僕は、特別な準備を必要としない直ぐにでも出来る事を提案してみた。


『遠足ですか?ご主人様、畑の作業は今日しないのですか?』


「うん。ここ数日で畝は作ったから、1週間位肥料が土に馴染むまでする事はないし、目的地があるわけじゃないんだけれど、皆で出かけてみたいと思ってね。」


 イオリとサオリも手伝ってくれるおかげで、以前より早く作業が進むために毎日農作業をする必要は無くなってきた。


 正直、調整の影響でイオリやサオリの方が僕より体力がある為、彼女達の力に寄る所が大きいのだが。


「いいですね兄上。お弁当を持って行きましょう!」


「マホもー!おべんとー!」


「ボクもいきたいです!」


 サオリやマホ、シホも賛成のようだ。


『そうですね。マホちゃんやシホちゃんも、お家でアニメを見ているだけじゃ退屈でしょうし。私も以前に連れて行って頂いた施設で、ひつじさんとか、ウシさんをまた見てみたいですから。』


 あの施設か。


 ・・・なるほど、それはいい考えかもしれない。


 近くに少し高い丘があったと思うから、そこでお昼にするのもいいだろう。


「ひつじさん!マホも見たい!」


『お馬さんも居ましたよね、確か。』


「おうまさんですか・・・ボクも、見てみたいです。」


 イオリの言葉に、シホとマホも目を輝かせながら頷く。


 僕の提案にイオリが肉付けをしてくれて、三人が乗り気になり言い出して正解だったと、そう考えていた時だった。


「姉上は・・・連れて行ってもらった事があるんですね。あたしも知ってたら、行ってみたかったです・・・」


 サオリだけ寂しそうな顔をして、元気なく呟く。


 言われてみれば僕は、彼女を海や温泉、それとお花見ぐらいにしか連れて行ってはいない。


 公平に扱っていたつもりだったのに、家畜を管理している施設の事を忘れていて、意図せずサオリが除け者のようになってしまっていた事に気付き、少し罪悪感が湧いた。


『私もまだ、執事が上手く言えなくて、ひつじさんと間違えて、そこから見たいとご主人様にお願いしたので、たまたまなんですよ。サオリちゃんに黙っているつもりはなかったの。ごめんなさい。』


 イオリはサオリの表情を見て、僕と同様に少し苦しくなったのだろう。


 サオリの頭を撫で、慰める。


「サオリを連れて行かなかったのは、思い付かなかった僕が悪いんだ。本当にごめん。」


「いえ、兄上や姉上が頑張って食べる物を作ったり、あたしと遊んでくれたりしていたのは判っているので、二人が黙っていたなんて思っていません。ただ、寂しかっただけなんです。」


『じゃあ、これからはもっと一緒に遊んだり、出かけたりしましょう?勿論、マホちゃんやシホちゃん、ご主人様も一緒に。』


「はい!姉上!」


「はい、イオリねぇさま。」

「わーい!」


 最近イオリに助けられてばかりだな。


 イオリはマホ達が来てからの一週間で、よりお姉さんらしさが増した気がする。


 彼女にばかり負担が行かないように、僕も頑張らないといけないな。



 遠足に行くと決まり目的地も決めたので、皆で朝食を摂り終えた後、お弁当をイオリ達と作る事にした。


 朝食の片付けをする際イオリにだけ聞こえるように感謝を伝え、彼女達全員に何が食べたいのかを確認して、みんなでお弁当を作り終える。


「だんなさま、ノアちゃんは連れて行けないの?」


 すると、出かける準備を終え出発しようとした時、マホがヒトガタを指差しながら連れて行きたいと言い出した。


 一緒に行きたいのは分かるけれど、恐らく稼働時間の問題で難しいだろう。


「うーん、今日は流石にお留守番かな?あのヒトガタはあんまり動けないから、連れて行けないんだ。ごめんね。」


「ノアちゃん、そうなの?」


〈はい。この機体では施設に着くまでは大丈夫ですが、彼方には充電の設備が無い為、帰る事までは出来ないのです。マホ、申し訳ありません。しかし、何処でも会話が出来ますから留守番ではありませんね。〉


 言われてみれば確かに、ノアは常に一緒にいるようなものか。


 マホもノアの答えに納得したようだ。


 ・・・この子はまだ小さいのに、自分の事だけでなく他人にも気を回せる優しい子だな。


「確か、東に2キロくらいだったかな?マホやシホも居るからゆっくり行こう。」


〈改めて端末に地図を表示しますので、そちらを参照してください。マホやシホも体力には問題はないはずですが万が一もありますので、貴方の言う通り休憩をしながらがいいでしょう。〉


『私も二人の様子を見ていますよ。』


「あたしも!」


 勿論、イオリ達だけに任せるつもりは無いけれど、彼女達の頼もしさは本当に心強い。


「わーい!楽しみだね、しーちゃん!」


「そうだね!まーちゃん!」


「シホちゃん、マホちゃん、あまりはしゃぎすぎないようにね?」


 初めてのお出かけを前にしてはしゃいでしまっているシホとマホに、サオリも仕方がないなと言わんばかりに二人を嗜めている。


 少し前までは彼女がそうであったのに、シホとマホが来てまだ1週間位でサオリもまた、随分と成長したように思えた。


 そんな光景が可笑しくもあり微笑ましくて、僕はつい笑ってしまう。


「兄上!?なんで笑うんですか!」


『サオリちゃんが、お姉さんみたいな事を言うからですよ?温泉の時にはしゃぎすぎて、ご主人様に抱っこされてたじゃないですか。』


 イオリも、温泉の時の事を思い出して可笑しくなったようで、クスクスと笑っている。


「姉上まで!もうっ!」


 サオリは恥ずかしくなったのだろう。


 顔を真っ赤にして先に歩き出してしまう。


「サオリおねえさま、待ってー!」


 それに続いて、マホとシホも歩き出し、僕とイオリも後を追いかける。


 この光景が、ずっと・・・続いていくといいな。

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