第8話 美少女とパーティ結成!
ひとしきり泣いて落ち着いたティナは、我に返った。
「ごめんなさい!急に抱きついたりして…。」
「ううん。とっても嬉しいごほう…、じゃない。力になれてよかったです。」
「?
ところでロックのスキルは大丈夫?
奪ったユニークスキルはどうするの??」
ロックは諸事情で、しばらく椅子から立てそうにない。
ティナが話題を振ってくれたので、このままスキルリバースを使ってみることにした。
「<スキルリバース>。」
『どのスキルを反転させますか?』
「どうするの?ロック。」
(さりげなく名前を呼んでくれるの嬉しいな。)
「反転して困るスキルは今のところないから、しばらくそのままでもいいんだけど、これに使ってみようと思います。
【成長抑制】で。」
『【成長抑制】でよいですか?このスキルを使用すると、スキルリバースはなくなります。』
(完全に消滅と、なくなるは違うのかな?)
スキルスナッチとの違いに疑問を抱いたが、気にしてもどうしようもないので続けた。
「OK!」
『【成長抑制】が反転し、【成長促進】になりました。【成長促進】の効果を倍増します。』
「おし!やった!!」
「どうなったの??」
「一緒に見てみましょう!ステータス!」
************
名前:ロック
Lv:3
HP:285
MP:28
体力:26
力:25
素早さ:27
器用さ:23
魔力:29
スキル:
【 】
【成長促進(パッシブ) ★★★★★】
【隠密 ★★★】
【民間療法(パッシブ) ★】
【スキルスナッチ ★★★★★】
************
「え!?
★5のユニークスキルになってる!??」
「ユニークスキル2つ持ち…。」
2人とも驚きのあまり、小刻みに震えている。
「効果を見てみよう…。」
++++++++++++
【成長促進 ★★★★★】・・レベルUP時のステータスの伸びが100%UPする。また、ステータス上限を突破することができる。
++++++++++++
「おお…。」
ステータスの伸びは予想はしていたものの、まさかユニークスキルになるとは思っていなかった。
ステータス上限突破については完全に予想外だったため、言葉を失った。
「すごすぎるわね…。」
「今までの悩みが嘘みたいだ…!ありがとう!ティナさん!!」
「お礼をいうのはこちらよ!
本当にありがとう…。ロック。」
ロックの手をとり、自分の胸の前で祈るように握るティナ。
女性経験のないむっつりが美少女に潤んだ目でこんなことをされたら…。
(て、手が胸にあたっちゃいそう…。
ティナさん、大きいな…。
ああ、手汗が…。)
感動の場面でも頭の中がピンク色になってしまうロックであった。
「そ、そうだ!
ヨムじいさんに報告にいきましょう!」
むっつりだけど誠実なロックは、ティナと密室、それも2人きりで手を握っている状況に耐えられず、そう提案した。
「そうね。おじいさんにもずっと心配をかけてたから、安心させてあげたいわ。」
目尻の涙をそっと拭って、ティナは可愛い笑顔でそう言った。
2人はヨムじいさんの家へいき、起こったことを報告した。
ティナのスキルを奪い、反転効果がなくなったこと。
奪ったスキルを使い、ロックの有害スキルが★5、つまりユニークスキルになったこと。
話を聞いて、ヨムじいさんは顔のシワをくちゃくちゃにして喜んだ。
「よかった…。2人とも、本当によかったの…。
それにしても、ユニークスキルまで奪えるとはの…。」
「ユニークスキルは、倒した時か同意を得たときだけ奪えるみたいなんです。」
「そうじゃったか…。だとしても★5の中でも規格外のスキルじゃ…。
やろうと思えば、ロック以外のスキル保持者はユニークスキル以外全て奪われてしまうわけじゃからな。」
「そ、そんなことしませんよ!
僕の目的は魔王を倒して故郷を取り戻すことですから!」
ロックは慌てて否定した。
「力を持てば人は変わる。
ロック、お主はこの世界を支配することもできるかもしれん。
だが、自分のためだけに力をふるうでないぞ。
いくら権力や富を手に入れても、自分のためだけに生きている者には手にいれられないものがある。」
「それは、なんでしょうか…?」
「心から信じられる、笑い合える人との繋がりじゃ。
いくら偉くなっても、苦労を分かち合えたり、喜びを共にできる人がいない人生は貧しいもんじゃ。
お主にはそんな道は歩んでほしくない。」
「…本当に大事なことがなにか。
ヨムじいさんに教えてもらったこと、絶対に忘れません。
故郷を取り戻しても、一緒にいてくれる人、いたいと思える人がいなかったらなんにも嬉しくないですもんね。
そんな人が増えるように旅をしていこうと思います。」
ヨムじいさんはニカっと笑った。
「お主ならわかってくれると思ったぞい。
これからどうするつもりじゃ?」
「おかげさまで身体もすっかりよくなったことですし、明日には発とうと思います!」
「もう少しゆっくりして行ったほうがいいと思うがの。
どこに向かうんじゃ?首都に帰るのか?」
「いえ。両親のいる首都には帰れません。
幼馴染のことが気になるので、いずれ様子は見にいきたいと思っています。
ないとは思いますが、もし同じように役に立たないスキルだった時にひどい仕打ちを受けるかもしれませんし…。
僕の1つ下なので、1年後までになにかあっても助けられる力をつけて戻りたいと。」
「うむ…。
バルキア帝国は世界にギルドの仕組みを作り上げて、他の国との関係も悪くないが、なにか闇があると感じる。
幼馴染が大事な彼女なら、そうしてあげた方がよいかもしれんな。」
今まで黙ってたティナがピクッと反応した。
「ふーん。彼女がいるのね。」
「か、彼女ではないですよ!
ただの幼馴染です!
僕が辛いときもいつも支えてくれた恩人のようなもので、恩返しをしなきゃと…。」
「ふふ。
じゃあ遠慮しなくていいのかしら?」
「え!?
ど、どういう…??」
ヨムじいさんはそのやりとりにちょっと驚いた。
「ティナ、お主がそんな風に笑って楽しく話すのを初めてみたぞい。
ロックはティナの心も救ってくれたようじゃの。」
「僕はただ、できることをしただけで…。」
「本当に救われたわ。
ロックが助けてくれなかったら、生きる希望を持てなかった。
この村のみんなやロックは私の恩人よ。」
「ティナさん…。」
「ティナでいいわよ。敬語もいらない。」
「え?でも年上ですし…。」
「女性に年齢のことをいうもんじゃないわ。
それに2つしか違わないでしょ?
ロックは年下の方が好み…?」
「す、すいません!
ティナさんはキレイなお姉さんでキレイで素敵です!」
むっつりで奥手なロックはテンパって聞かれてないことまで言ってしまう。
ティナも思わぬロックの言葉に頬を染める。
「おいおい。ここにじじいがいることも忘れんでくれよ。
若いもんはええのぉ。」
「あ…、すみません!」
「ええんじゃよ。
2人とも笑って話せるようになって嬉しいぞい。
それでロック。
次の行き先じゃが、どこに行けばいいかわからんじゃろ?」
「はい。この村の位置もわかりませんし…。
どこに行ったらよいか教えていただけますか?」
「この村はモンスター生息域の中にある。
川を下っていけばアラートフという小さな町があるから、そこを目指してはどうじゃ?」
「え?
ここはモンスター生息域なんですか?
皆さん大丈夫なんですか??」
「ここの村人はスキル持ちが多いからの。
いろんな事情で人里離れて暮らしてる者の集まりなんじゃ。」
(そういえばカイルさんも★3のスキル持ちだったな…。)
「そうなんですね…。
その町を目指したいところですが、生息域内を移動するのは今の僕じゃ厳しそうですね…。」
「そうじゃろ。
じゃから、もうしばらくこの村におった方がよいと言ったのじゃ。
この近辺でレベル上げしてから行ってはどうかの?」
「なにからなにまですみません…。
お言葉に甘えてもいいですか?」
「もちろんじゃ。
気の済むまでおりなされ。」
「私も一緒にレベル上げしてもいい?」
「ティナさんも?」
「ティナ、ね。さんはいらないわ。」
「ティ、ティナ…も?」
満足そうに笑うティナ。
「ええ。
そしてもしよかったら、一緒にロックと旅をしたいんだけど、ダメかしら…?」
「一緒に!?
僕と!?」
「それはいい考えじゃ。
ティナはまだ若い。
いつまでもこの村にいるわけにもいかんからの。
ロック、どうじゃ?」
「で、でも…。
若い男女2人だけなんて…。」
と言いつつ、頭の中では妄想が始まってしまうロック。
だって、むっつりなんだもん。
「おいおい。
男女でパーティを組むなんて当たり前じゃぞ。
そんなに意識してたらこれから冒険者としてやっていけんぞ。」
「私なら大丈夫よ。
ロックのこと信じてるから。」
(信じてるって言われても…。
それはそれで辛い…。
生殺しじゃ…?)
「ロックは冒険者として、そっちの訓練も必要じゃな。」
「はい…。
ティナ、僕とパーティを組んでもらえる?」
「いいの?
ありがとう!
よろしくね。」
「パーティ結成じゃ!
2人きりになったからって、スキル以外も奪おうとするんじゃないぞい。」
「ヨムじいさん、それセクハラ。」
(ジト目も可愛い…。)
こうして、美少女とパーティを結成することになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます