第3話 資源集めとGDプリンター稼働開始
「た、助かったぁ、ていうかマイキー、助けてくれてありがとう!」
「ふん、礼を言えるだけお前はまともだな。ゾンビだが」
「和竜も偉いぞ。よくぞ粘ってマイキーを連れて逃げてきてくれたな!」
和竜の狭い額を指で撫でてあげると、くぉるるると嬉しそうな鳴き声をあげた。
「さて、とりいそぎ作品は修理しなければならないが、その前に資材集めをしろ」
「そういえば、GDプリンターで何か作る時は材料が必要になるって。でもどうやって集めればいいんですか?」
「石でも土でも木でもプラスチックでも、ほぼ何でも材料になりはするが、一番向いてるのが鉄などの金属類だな。理由は簡単だ。製作物がプラスチックと鉄なら鉄の方がはるかに頑健だし、武器にした時にSPを消費せずにダメージを与えやすい」
「その分、動きが遅く重くなるとかは?」
「そのまま歩けばある程度は重さを反映するだろうさ。だが、お前の想像上の何かを現実にしてるんだぞ?鉄塊がそのまま動くわけなかろう」
「そっか。そりゃそうでしたね。えーと、それで資材集めか。それ用の機体を出せばいいのかな」
「SPをほとんど消費しないでも金属類を切断できるような装備を持ってるの、いくつかあるだろう」
「えーと、鉄の爪っぽいのを最初から装備してるようなの、確かに、いくつもありますね」
「よし、そいつらを召還したら、まずは手始めにこの部屋にある不要な金属類をばらして素材にするんだ」
「了解であります、マイキー教官!」
メ○サーと和竜はとっくに保管庫?に戻してあった。SP消費は少しでも抑えたいからね。
そして出撃を待つ作品群の中から、ゴ○グとハイゴ○グを選んで召還。模型製作用テーブルの上で待機させつつ、キッチンから、かなり長いこと使ってなかった鍋やフライパン、トースターや電気釜なんかを持ってきて床に並べた。
「えーと、そしたらとりあえずばらばらにしてけばいいんですかね?」
「そうだな。まずはフライパンでいいだろう。SPで爪の表面をコーティングするだけで、さくさく切れる筈だ」
その様に念じてみると、二体は床に飛び降り、その爪にSPの光の刃を淡く纏わせて、すぱすぱとフライパンを切り裂いていった。さらに驚いたことには、切り裂かれた鉄片は姿を消していき、ステータス画面には、鉄xグラムを入手しました、というメッセージが幾度も続いた。
「お前の作品が素材集めを命じられて収集した材料は、すべて自動的にお前のインベントリーに収納される」
「いわゆるアイテムボックスって奴ですか!?容量上限は?」
「レベル
「えーと、今の自分のレベルは、って25にまで上がってる!」
「あの鎧付きのスケルトン・ナイトが大きかったんだろうな。さて、さらに素材集めを効率化する為に、まずは部分強化だ」
「ゴッ○とハイゴッ○の爪を鉄素材に換えるんですね?」
「そうだ。GDプリンターを展開して、そこに改造する対象機体の部分をかざさせて、後は改造したい内容を念じればいい。ステータススクリーン上からも操作は可能だ」
最初は手動でやってみた。まずはふっくらボディーの○ッグさんから。爪はこっちのが大きめだしね。
床に立つゴ○グさんの目の前にGDプリンターを展開。バーチャルな画面上でゴッ○の爪を触って選択し、改造メニューから、鉄を材料に選び、変質を選択。ゴ○グさんの立派な爪は黒い鉄爪に変わり、GDプリンターの経験値も2増えた。ハイ○ッグの細い爪十本も同様に改造すると、二体は、さっきの倍以上の速度で床に積まれた料理道具類なんかを素材に換えていった。消費SPはさっきまでの1/5から1/10以下に減っていた。
自分は調子に乗って掃除機やテレビまで解体させてしまった。いや、後悔はしていない。だってもう料理も掃除もたぶんしないし、テレビも不要品だしね。人類絶滅してるんだから。
「そしたら、その二体には、このアパートの他の部屋でも同じように金属類を集めさせろ。その間に、お前はここで製作するんだ」
「ラジャー!」
ゴ○グとハイゴ○グは仲良く並んで廊下部分に出ると、左右に分かれて素材集めの任務にとりかかった。
「えーと、それで、何を作れば?」
「経験値を得るには、数を稼がねばならんのは分かるな?」
「え、ええ」
「そして、今のお前のGDプリンターのレベルだと、大きな物は作れない。だから小さな物をたくさん作り、そいつらにも素材集めをさせろ。それも常時だ」
「蟻さんの様に、ですか」
「そうだな」
マイキーの視線の先には、棚に飾られていた1/35のミリタリー・フィギュア達がいた。背の高さは、およそ5cm未満くらい。試しに、素材のストックからプラスチックを材料に選んで、GDプリンターのメニューから、複製を選択。3秒もかからずに、足下から描き出された1/35フィギュアは実体化し、床に足をつけて立った。
1体につき、こめるSPは1。ユニークスキルGDプリンターの経験値も1貯まった。これは、かなり効率が良いのでは!?
「そいつらは素材収集用の得物だけ鉄製で作ってやればいい」
「えーと、1/35の手のひらに収まるサイズっていうと、柄が5mmの刃渡り5mmもあれば十分大きいか。後でまとめて作ろう」
とりあえず俺は完成させたプラモの空き箱に収められたままの、部品がすべて無くなったランナーを大量に確保。
「えーと、自分の手だと素材化出来ないとか?」
「素材として収納すればいいだけだ」
手をかざして、収納、とつぶやいたら、まとめてランナーの山が忽然と姿を消して、プラスチックの材料がかなり増えた。
「一度作った物は、数を指定して複製が可能だ」
というマイキーのアドバイスを元に、とりあえず百体指定して、複製作業を開始。1/35サイズのWW2のドイツ軍歩兵のフィギュアの量産が始まり、一体につき3秒未満、作る毎にわずかに製作時間は短縮されていって、百体完成する頃には2秒ちょっとくらいで作れていた。
そして、その途中、50体未満でスキル経験値が100を越えて、スキルレベルが上がったとシステムメッセージが脳内に流れた。
GDプリンターが2倍のサイズになった。他にも、資源とSP消費量、製作時間が1%軽減されましたと表示された。
「スキルレベルが1上がる毎に倍のサイズが作れるようになる、か。消費資源や製作時間の削減も地味に大きいな」
百体のフィギュアは、最初に作った一体の後ろに十人x十人で整列して、俺の指示を待っていた。
俺は長さ1cm、刃渡り5mm、厚さ1mのフィギュア用ナイフを101個作成。フィギュア達は床に出現したナイフを手に取って、素振りする連中までいた。
俺はさらに思い立って、1/35サイズの双眼鏡をGDプリンターで作成し、最初に作ったフィギュアに渡して命じた。
「いいか、お前の役割は全体の指揮と警戒だ。お前にフランツの名前を与える。資源集めに励め。敵が近づいてきたら隠れるか逃げるかしろ」
フランツと名付けられたフィギュアは感動したように敬礼してきた。すると後ろでわいわいと騒いでたフィギュア達もびしっと整列しなおして敬礼してきた。
俺は嬉しくなって、1/35フィギュアの武器セット、ライフルやら短機関銃やらMG34やMG42やパンツァーファーストや対戦車狙撃銃やらを人数分、金属素材でさくさくと作って配布した。フィギュア達はさらに士気を高めて、部屋の外へと出て行った。
「あ、でも、階段の段差とか、どうするんだ?」
と気になって自分も外に出てみると、彼らは組み体操の様に互いを足場しながら、器用に段差を降りていき、外の通りに出て行き、手近な車に群がると、まるで蟻にたかられた虫の死体の様に、少しずつその姿を刻み取り、資源に換えていった。
「あれ、でも、俺が手を振れて収納していった方が早いんじゃ?」
「たわけが。まだ学んでおらんのか」
「うわっ、ついてきてたのか、マイキー」
「私はお前の護衛も兼ねているからな、部屋に戻るぞ」
「ああ、て、ちょっと待った!なんか、犬の魔物ぽいのがフィギュアに目を付けて襲いかかって」
「心配するな。武器も持たせてあるだろうに」
見れば、双眼鏡を構えたフランツがすでに迎撃体勢を整えさせて、襲ってきた野良犬ゾンビへ一斉射撃。細切れ以下にまで粉砕された敵は光の粒子になって消えていき、俺にはEXPとSPが入った。百体のフィギュアが一斉射撃してもまだ黒字になるらしい。微々たるものだけど。
そして俺は、フランツ達に向かい敬礼して、敬礼を返されてから、マイキーに急かされて部屋に戻った。資源はゴッ○さんとハイゴッ○のコンビとフィギュア達により、順調に増えていた。
「さて、お前のステータスを見て、わからなかったのか?お前が戦闘向きかどうかくらい」
「向いてないことくらいわかってましたけど、でも」
「勇気は評価する。だが、お前に消滅してもらっては困るのだよ」
「だけど、戦わないと経験値とか貯められないじゃないですか?」
「あのなぁ、メ○サーや和竜、あのフィギュア達の戦いから学ばなかったのか?」
「・・・つまり、自分自身で戦う必要は無い、と?」
「そういうことだ。お前は可能な限り、直接戦うな。お前が消滅すれば、お前の愛する作品達もまた消滅することになる。それがお前の望む結末か?」
「違うっ!」
「あのスケルトン・ナイトや、あれよりもっとやばい敵が今後はごろごろと現れてくるだろう。その時にいちいち死んでたり消滅の危機にさらされてたら、いくらSPがあっても足りない。お前なら、どうすればいいと思う?」
「えーと、作品達とかにSPや素材を稼いでもらいながら、フィギュアみたいな手勢をどんどん増やしていって、GDプリンターを成長させていって、もっと強い何かを作れるようになっていく?」
「そうだな、それが基本戦略となる。だが、それだけでは足りない。ここはいずれ目を付けられ、総攻撃の的にされる。防ぐにはどうしたらいい?」
「えっっ!?確か、神様が保護してくれてるんじゃ?!」
「それもずっとではない。主が直接力を振るえば、それは敵の神にも感づかれる。そうなれば、星一つなぞ、いつ宇宙の塵になってもおかしくはない。それは、我が主が望むところでもない」
「人類をまた生み出すよりも、地球みたいな星と環境を創る方が手間がかかるから?」
「一慨にそう言えぬところもあるが、それは真実の一側面ではある。神々の間の力関係や、異世界間の抗争なども考慮する必要がある」
「えーと、そんなレベルにまで到達するとなると、自分がいくら手駒を増やしても無駄なのでは・・・?」
「それは違うぞ。お前に頼んでいるのは、あくまでも、魂リソースの回収だ。相手になるべく目を付けられず、目を付けられたとしてもやり過ごせるようになるには、どうしたら良い?」
「それは、例えば、空中に浮いてれば地表からは攻撃を受けにくくなるでしょうし、結界みたいのに囲われてれば、相手の索敵にも見つかりにくくなる、のでは?」
「そうだな。だからお前は、それを実現する何かを創ればいいだけだ」
「創ればいいだけって、そうか。GDプリンターとSPさえあれば、想像できる物は何だって」
マイキーは嬉しそうにうなずいてくれてた。
俺は、記憶を
「とりあえず、この部屋くらいのスペースがあれば、いいかな」
そして結界を張らせるのは、某有名アニメに出てきた使徒の一体が思い浮かんだので、鉄よりも頑丈というセラミックを外郭に、中身をあの青い石で創ってみた。
考え事をしながらも、メッサーや木竜を集めた素材で修復しつつ改造したり、SPを最低限にしか消費しない造形を続けてGDプリンターのレベルは3に上がってたので、外観は縦横高さ40cmから80cmになってたので、一辺が50cmの直方体の何かはGDプリンター内で完成した。
「やった!出来た!」
「創ったのは褒めてやる。だが、まだ実体化させるなよ?」
「え、どうしてって、そうか」
「浮かせる対象として、また結界で覆う範囲としてこの部屋を指定しろ。資源集めに出してる連中を回収しなければならんし、それよりもまず移動手段を付けておかないとただ浮くだけの存在になるぞ?」
「なるほど、盲点でした。そしたら・・・」
あこがれてたのは、やっぱ飛○石が出てきたあの映画の中の、羽を羽ばたかせて飛ぶメカ達だった。
今のGDプリンターの上限サイズだと一品物としてそのままは作れなかったので、羽の骨組みだけをいくつかの部品に分けてまず製作。それから透明なプラスチックじみた素材を骨組みの内側にステンドグラスの様にはめ込んで、長さ2.5m、幅80cmくらいの楕円形な羽が四組作成できた。
目を閉じて脳内でイメージする。掘っ建て小屋みたいな部屋が申し訳程度の壁と屋根、それから四辺がベランダの様になって、四辺の隅に羽が取り付けられ、部屋の床の中央に浮遊&結界ソースとなる直方体をはめ込む台座を設けた。
素材集めさせていた○ッグさんと○イゴッグとフィギュア達を撤収させると、俺は台座に直方体をはめ込んだ。
脳裏に描いたイメージ通りになる様、GDプリンターが部屋の内外に展開されていきながら部屋は天井を突き破って浮上。
インベントリーには木材や石材、布や骨、肉、タンパク質、毛など、いったい何から採取したんだという素材もあって、まぁ、イメージした通りに、部屋はおよそ上空10mくらいに滞空し、四辺にベランダ、四隅に羽が取り付けられ、部屋と羽の上下左右の空間にまで結界が張り巡らされた。
部屋に逃げ帰った時は200近く残ってたSPは今や20くらいしか残っていなかった。いろいろ創りすぎたりしたせいだけど、後悔なんて無かった。
「これからどうするんだ?すぐにリベンジをかけるのか?」
マイキーが挑発するように言ってきたけど、俺は町の中心部に向けていた視線を別の方角へ、隣町の方へと向けて言った。
「いいや、転進して、少しでも安全にEXPとSPを稼いでいく。もっとレベルもスキルレベルも上げて、インベントリー容量も増やして、万全の体勢で戻ってきて、リベンジをする」
鎧付きのスケルトン・ナイトよりずっとやばい奴を相手にして、倒さないといけないしね。
マイキーもにやりと笑ってうなずいてくれたので、俺は
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