第12話 生徒会選挙近し
時は流れ二月、遂に生徒会選挙が迫ってきた。
最初はヤル気がなかった狭間だけど、選挙に勝てば副会長碧馬と付き合える不純な動機がヤル気にさせた。
彼は積極的に選挙活動して知名度アップに努めた。だけど正直手応えの実感はなかった。まぁ、当選したらラッキー程度にしか期待しないことにした。
すると狭間の前に取り巻きを引き連れた翔馬が現れた。
「今日の勝負で全てが決まる」
顎をあげニヤケ勝ち誇った表情の翔馬が言った。
「あぁ……ん?」
手を差し出し握手を求める翔馬に狭間は眉を潜めた。それが友好ではなく、対抗心剥き出しのハンドだったから。
しかし、躊躇したが、狭間は嫌な相手でも拒否するほど器の小さな男ではない。だから心良く彼の手を握った。
「まぁ、よろしくな」
「ふふ、僕は全力で君に勝つつもりだからよろしく」
その握る手の力がヤケに強かった。分かりやすい翔馬の対抗意識を知って狭間は苦笑いした。
「ふふ、だけど君は終わりだよ」
去り際翔馬が意味深に呟き立ち去った。
◇ ◇ ◇
翔馬の自信には根拠があった。それは翔馬に強大なバックがついているからだ。
重篤寺重工の絶大な財力と政界、財界、芸能界に繋がる人脈に加え、母親譲りの白い肌に青い目と金髪の美しい容姿のおかげで、女子生徒から絶大な人気を誇る。
だから、たかだか下請け部品工場の
それが翔馬の自信の秘密だった。
「んっ……」
廊下を歩く翔馬のスマホから着信が入った。ディスプレイに表示された送信者の電話番号と名前が映し出された。
ピッ
翔馬は人気のない場所に移動してから通話ボタンを押した。
「源蔵か……どうした?」
『……』
「……あぁ、ホームレスと孤児の件か……構わない。社会に不要な存在は消す。必要なのは選ばれし人間と、我々支配層の為に都合良く働く
『……了解』
プッ……
まるで感情が喪失したかの様な源蔵の返事だった。
「ふふっ実に順調だ」
非情な命令を下したあとにもかかわらず翔馬は、非常に機嫌が良かった。スマホを胸ポケットに仕舞うと、なに食わぬ笑顔で黄色い声援を送る女子生徒に手を振った。
翔馬が向かった先は生徒会室。まだ彼は中に入る資格はないのに、ノックもせずにドアを開けた。
そこには書類にサインをする碧馬が副会長席に座っていた。
「あら、噂の転校生さんですね」
「ふふっそれはそれは、自己紹介する手間が省けたよ。さて、本題だ……」
焦りか、それとも自信によるものか? とにかく翔馬は碧馬になにかを告げるつもりだ。
「僕が生徒会長になったら彼女になって欲しい」
「……急なプロポーズね」
「そうさ、ふふっまさかこの僕のこの僕の断わるつもりかい?」
「……自信過剰な男は嫌い」
書類の束をトントンと机の上で叩いて整えてから、不機嫌そうな表情を浮かべた碧馬は席を立った。
「待てよ」
翔馬に背中を向けた碧馬の足が止まる。
「君は確か、真東京大学法学部を目指しているらしいね?」
「……それがどうしました?」
「僕の指示一つで君は一生東大法学部に合格出来なく出来るし、その逆も可能だ」
「それって脅迫ですよね?」
背中を向ける碧馬の表情は分からない。だけど、震える様に聞こえる声は、動揺と怒りが混じり合っている様に思えた。
「それに、君のご両親の会社、ずいぶんと経営が傾いてるそうじゃないか?」
「……なにが言いたいのですか……」
「君が良ければ僕の会社がバックアップするよ」
「……」
無言の碧馬は歩き出し入り口に向かった。しかし、ドアを閉めると振り返った。
「詳しい話を聞きましょう……」
彼女を見る翔馬はニヤけた。彼は難攻不落の高嶺の花に手が届きつつあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます