第11話 恐怖症
数日後、学校の後期の授業が始まり、講義を受けている時の事。
教室の前方では、学内では知らぬ人はいない
『はい、この傾向がある場合は~』
「うっ……」
俺は痛む胸元を抑える。
『んで、こっちの傾向がある場合は~』
「ぐっ……」
俺はさらに歯を食いしばり、胸元を手で押さえる。
「で、こっちのグラフ内のピンクで書かれた傾向は~」
「ぐはぁっ……」
遂には机に突っ伏して倒れてしまう。
「なぁ……さっきからどうしたんだお前」
隣に座る
「き……気にしないでくれ……これは己との闘いなんだ」
「あっそう……中二病もこの年でこじらせてるとやばいだけだからな。気をつけろよ」
「ふっ……
「だせぇ……」
とまあ、完全に『けいこう』『ピンク』
漢字が違う
ピンクに関しては、ピンク色の物体を見ただけで、脳内で勝手に『蛍光ピンクのパンツ』が連想されてしまう始末。
今だって、教授が話している会話が『グラフ線のようなピンクの蛍光パンツは、とても形が良くてスベスベだ』と勝手に脳内変換されてしまう。
ダメだ……全部頭の中が
「はい! というわけで今日の授業はここまでです!」
そう言って、烏星先生はおもむろに教卓の上に置いてあった
ブォォーッ、ブォォーッっと烏星先生名物法螺貝チャイムが鳴り響き、授業が終了する。
俺たちは学食へと移動して、昼食をとることに。
しかし、俺は食事が喉を通らず、ついには机に突っ
「なぁ、さっきからずっと顔色悪いけど、本当に大丈夫なのかよ?」
「平気、平気……体調的な支障はねぇよ」
「ならいいんだけど……また何かあったのか?」
來汰は食堂で頼んだ中華麺を啜りながら尋ねてくる。
「何があったというか、あれから逆に何もないから色々と考えちゃって変な思考にぶち当たっちゃってるというか、そんな感じだ」
「全くよ。そんな気になってるなら、直接本人に聞いてみればいいじゃねぇか」
「そ、そんなの。聞けるわけがないだろ?」
「なんで、中学時代からの仲なんでしょ? そのくらいのネタ、普通に話せるだろ?」
「いや……恥ずかしいというかなんというか……」
「はぁ……思春期こじらせた
呆れた様子でため息を吐く来汰。
来汰は手に持っていた箸をピシッとこちらへ行儀悪く向けてくる。
「それはただ、お前が意識しすぎてるから聞けないだけだ。いいか、よく考えてみろ。例えばお前が恋愛対象じゃない女友達にパンツを見られたとする。その後、メッセでその話題について振られたとする。そしたらお前はなんて返す?」
「そりゃもちろん『見苦しいものをみせてごめんね』って謝るか、『どうだ、俺のトランクスは一級品だったろ?』って笑いに変換するかのどちらかだよ」
「だろ。なら、華ちゃんに気がないっていうなら、同じ反応を返してくるとは思わないか?」
「……確かに」
そこで、客観的に物事を考えられたことで、俺は今まで悩んでいたことが馬鹿みたいに思えてきた。
でも待てよ……。
「もし反応が違ったらどうするんだよ?」
「あっ? そりゃ、
「その場合は、どうしたらいいんだ?」
「そりゃお前、告るなりなんなり好きにすればいいじゃねぇの?」
「いやいやいや、お前今の俺の立場だったら同じこと言えるか?」
「無理だね。俺だったら絶対にくぅーって
「ならなぜ提案した⁉」
「いいか? こういうのは
「ぐはっ……」
痛い所を突かれたのと、蛍光ピンクのダブルパンチを食らい、俺はまたも大げさに机へ倒れ込む。
うつ伏せになりながら、俺は思考を懸命に働かせる。
聞くって言っても、どう話を切り出せばいいのか分からねぇよ。
ディスティニー以降、華との連絡も取っていないし、どうやって話題を切り出せばいいのやら。
「もじもじしてねぇで、とっとと当たって砕けて来い!」
「砕ける前提かよ!」
とまあ、来汰にはっぱをかけられても、俺は華に蛍光ピンクのパンツの一件を尋ねる勇気が出なかったので、とある人へ相談することにした。
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