第2話 一年ぶりの再会
翌朝、
ぼんやりと窓の外を
「ふわぁっ……」
両手を上に伸ばし大きく伸びをしたところで、丁度セットしていた目覚ましのアラームが鳴り、思考が一気に
目覚ましを止めてからベッドを抜け出し、そのまま服を脱ぎ風呂場へ一直線。
シャワーを浴び、寝汗を
バスタオルで身体を
都内の気温は、三十度を超える暑さらしく、まだまだ秋の気配漂う東北とは違い、残暑続きといったところだろうか。
天気予報を確認し終え、
毛布を畳み、ベッド周りを整えてから、スマホの充電器をキャリーケースへ入れて準備を整えた。
最後に手持ちのリュックに新幹線のチケットとディスティニーのペアチケットが入っているのを確認してから、玄関で靴を履き、そそくさと家を出る。
まだ通勤時間帯前の住宅地は、小鳥のさえずりと時々通る軽トラックの音だけが鳴り響いているだけ。
この静けさは向こうにいる
最寄り駅のから地下鉄に乗り込み、新幹線が止まる仙台駅へと向かった。
改札口を通り抜け、ホーム下にある待合室で自分の乗車する新幹線の発車時刻までの時間を潰す。
ディスティニーに行くのは実に五年ぶりなので、俺はスマホで公式ホームページを開き、どんなアトラクションやショップがあるのかを事前にチェックしておく。
去年あたりに新エリアが新設されたらしく、『姫と野人』や『ベイ・ミニマム』などのゾーンが増設され、新アトラクションも楽しめるらしい。
そんなことを検索しているうちに、乗車予定の新幹線の時間が近づいてきた。
俺は売店で眠気覚ましのコーヒーを購入してからホームへと上る。
ホームへと上り、チケットに表示されている座席の
ホームドアが開き、先頭に並んでいた人から次々と乗車していく。
俺は自分の座席を見つけ、
直後、停車していた新幹線がぬるっと
仙台駅を出て、あっという間に都会から田舎へと車窓が変わっていく。
東京駅まで約二時間ほど、俺は今日は寝れないだろうと判断して、眠りに
目を覚ましたときには、新幹線は既に上野駅を出発し、間もなく終点の東京駅へと到着しようとしていた。
地下なので周りの景色は見えないけれど、恐らく地上には多くの高層ビル群が
俺は席から立ち上がり、キャリーケースを通路に下ろしてドアの方へと向かっていく。
東京駅に着く前にスマホをちらりと確認すると、華からメッセージが届いていた。
『着いたら連絡してね、待ってるから!』
どうやら、華はもう既に到着して、俺を待ってくれているらしい。
連絡が来ていたのが二十分ほど前なので、約束の三十分前には待ち合わせの場所へ来ていることになる。
それほどまでに、華が俺と久々に会うことを楽しみにしてくれているのかと考えると、思わず胸が熱くなってしまう。
俺は『もうすぐ到着する』と返事を返して、スマホをポケットにしまった。
新幹線の扉が開き、俺は緊張した面持ちで東京駅のホームへと降り立つ。
アスファルトに覆われた都内は、やはり東北と違って気温が高く、まだまだ厳しい
俺は階段を降りて、JR線との連絡改札口をくぐり、待ち合わせ場所である広場へと到着する。
辺りを見渡しても、華の姿は見られない。
仕方がないので、スマホで電話を掛けようとした時だった。
「うわっ!」
いきなり後ろから、大きな声とともに思いきり肩を掴まれた。
俺はビクっと身体を震わせて一歩身を引き、ぱっと後ろを振り向いて警戒態勢に入る。
しかしそこに居たのは、くすくすと肩を揺らしながら笑う、見知った黒髪の美少女だった。
「あははっ、驚かせちゃった?」
目の前に現れた
「お前な……久々に会っていきなりそれはないだろ」
「えぇ、いつもこんな感じでしょ?」
「まあ、それはそうなんだけど……」
今は俺の心境が違うから、心臓に悪いんだよ!とは流石に言えないので、奥歯をぐっと噛んで
俺は改めて
「久しぶり華。一年ぶりくらいか?」
「久しぶり
俺はまじまじと華を観察する。
華は高校卒業時にあった時よりもさらに人まわり大人びた顔立ちになっていた。
肩甲骨あたりまで伸びる艶のある長い黒髪に、前髪はぱっつんと綺麗に整えられており、そこから覗く切れ長の目に、形の良い鼻筋にぷるんとした唇。
白のノースリーブにニットパンツの組み合わせは、華のモデル体型にマッチしていてとても似合っている。
「なんか、前会った時とだいぶ変わったな」
「えっ……そうかな?」
きょとんと首を傾げる華。
肩にかかっていた髪がはらりと下へ落ちる。
そんなひとつひとつの仕草さえ色っぽくて、俺はごくりと生唾を呑み込んでしまう。
「なんかこう……都会に洗練されたというか、いい意味で垢抜けたというか……」
「本当に⁉ やったぁー」
俺が指摘すると、華は嬉しそうにその場でぴょんぴょんと跳ねた。
「こっちにきたら、みんなレベル高くて、馬鹿にされないようにって一生懸命努力して頑張ったんだよ! これで私も、やっと東京に馴染めたかな?」
「あぁ……むしろ馴染みすぎててびっくりしてる」
「そっか……へへっ」
俺に褒めてもらえたのが相当嬉しかったらしい。
華は頬に両手を当ててニヤニヤしている。
なんか、これ以上可愛い姿を見ていると目に毒な気がしてきてしまい、俺は無理やり話しを本題へと戻す。
「今日は付き合ってくれてありがとうな。早速だけど、ディスティニーに向かおうぜ」
「うん、そうだね! いこいこ! あっ、乗場こっちだよ」
そう言って、華は何の気なしに俺の手を握り、そのまま
「お、おい……落ち着けって」
とは言うものの、俺は不意に掴まれた華の細い指先へと神経が集中してしまい、それどころではなく、ただ華に手を引かれるがまま、京葉線のホームへと歩いて行くのであった。
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