唯一無二の双子

「おーい、三石みついしー。みーつーいーしーかーえーでー!」


「…え、あ、はい!」


"三石みついし かえで"。

自分の名前なのに、ぼーっとしていると反応が遅れてしまうくらいには、まだ少し慣れないフルネーム。


「今ぼーっとしてただろ。しっかりしろよー。今日の放課後、委員会の集まりあるってさ。」


担任の先生から言われた言葉に少し落胆しつつ、すぐ裕飛に連絡をする。


『裕飛ごめん!今日の放課後委員会になった。遅くなると悪いから先帰ってていいよ!』


送ったと同時に『既読』が付いて、画面を見つめながら返信を待つ。そして送られてきた言葉を見て、思わず笑顔になった。


『まじ!俺も補習だった!だからちょうど良い時間じゃね?ラッキーじゃん!』


…さっすが私たち!裕飛はこれを送ろうとしてたから、瞬間的に既読が付いたんだ。こういう奇跡が積み重なって、何だかんだ毎日一緒に帰ることができている私たち。だから毎日が放課後デートだ。

そしてなんと、今日はパパもママも帰りが遅い。だから夜ご飯も一緒に食べることになっている。せっかくだし、駅前で食べてから帰ろうかな!なんて考えていると、再びの通知。


『今日夜飯食ってから帰ろーぜ!俺も考えるから、楓もどこがいいか考えといて!』


…ほら、さっすが私たちでしょう?むしろ、本当に双子なんじゃないかと思ってくる。気が合いすぎる。そんなことを考えてみたけど、すぐにやめた。本当の双子だったら、今の最高に幸せな生活はなかった。恋をした相手と合法的に一緒に住めて、合法的に一緒にいられる。そんな経験が出来ているのは、やっぱり血が繋がらない双子だから。私たちはこれでいいし、これだから良いんだ。

夜ご飯のことを考えながら、つられて鳴りそうになったお腹を慌てて抱えた。

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