朝とルール~①~

「ゆーうーひー!起きろー!」


私の朝は、双子の兄、"三石みついし 裕飛ゆうひ" を起こすことから始まる。起こすと言っても、難しいことではない。名前を呼んでカーテンを開けるだけ。裕飛の目覚めは良い方だと思う。


「うーん…。」


こうして、突然の朝日に眩しそうな顔をしながら伸びをしたあと、寝惚けた声で私の名前を呼ぶ。ほら、3…2…1…。


「おはよ。かえで。」


きたー!ほわほわの声と素敵な微笑み!まだ目が開ききっていないところが良い!大好きな人のお目覚めだ!




裕飛と私は血が繋がっていない。1ヶ月ほど前、私のママと裕飛のパパが再婚した。ということで必然的に、同い歳だった私たちは双子になった。

中学2年生の夏休み。紹介したい人がいるとママに連れられて行ったファミレス。そこで初めてお互いを知った。再婚したいと告げられ、私たちは賛成した。籍を入れるのは私たちが高校に入学したタイミングと決まり、しばらくは今まで通り別々で暮らすことになった。ママとパパが再婚するまでの間は、時々お互いの家にお泊まりしたり、一緒に遠出したり。私たちはどんどん家族になっていった。

そうして、とにかくたくさんの時間を共有する中で、私は裕飛を好きになった。それはまた、裕飛も同じだったみたい。


『ねぇ楓。俺らって、本当に兄妹になるんだよね。』


ママとパパが籍を入れる前日。普段はバカみたいにうるさい裕飛が、珍しく静かにそう言った。


『そうだけど。え、嫌なの?』


兄妹になること…というより、一緒に住むことを楽しみにしていた私は、少しの不安を抱えながら裕飛の言葉を待った。


『嫌だよ。だって、だってさ。…兄妹は、結婚出来ないだろ?』


『お?思ってたのと違うぞ?』


『兄妹になるから言っちゃダメだと思ってたけどさ、さすがに無理だわ!俺、楓のこと好きになっちゃったから!まじ無理!なんで兄妹なんだよ!最悪!』


なーんだ。そんな理由か。途端にニヤけが止まらない。本当に裕飛は素直で可愛い。


『でも、仕方ねぇよな、今更。これから兄ちゃんになるやつに、好きって言われたら嫌だよな。ごめん。忘れて!俺は兄ちゃんになる!良い兄ちゃんになるぞー!よろしくな妹!』


私がニヤケている間に色々と思考が180度変わってしまった裕飛。まずい。ニヤケている場合じゃなかった。


『まって裕飛!落ち着いて。私も好き!好きになった!だから私たち両想いだよ!大丈夫!』


『は?』


『それに私たち、血、繋がってないでしょ?だから結婚できるの。』


『…え。それまじで言ってる!?』


『まじまじ!本気!だから、恋愛しても結ばれない、なんてこともないの!その上一緒に住める!どう?兄妹って最高じゃない?』


『うわぁ!なにそれ!まじ最高!』


こうして、私たちは血の繋がらない双子でありながら、お互いの想い人となった。

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