日本をダメにした犯人探し その3

日本をダメした直接的な犯人は、選挙で投票に行かない国民であること、そして、それによって政権に居座り続ける腐敗しきった自民党が共犯の立場を占めていることについて述べてきた。

選挙で投票に行かない理由がいくつか存在していたことも前回の話の中で確認した。曰く、「選挙にあまり関心がなかったから」「仕事があったから」「政党の政策や候補者の人物像など、違いがよくわからなかったから」「適当な候補者も政党もなかったから」。これらの理由から、投票を棄権する人達の中には政治に対して無関心な人が多く含まれていることがわかる。選挙に関心がないのは、政治で何が行われているかに関心がないから、というわけだ。では、なぜ政治に関心がないのだろうか。政治の話が難しくてよくわからないから、という人が多くいるのではなかろうかと筆者は思う。よく理解できないから興味が持てない。これもよくわかる話だ。では、政治の話を理解できない、と言う人達は教養に乏しく、考える力が弱いから理解できないのだろうか。

日本人の学校教育の普及率は極めて高い。ほぼ100%と言ってよい普及率が長年続いている。識字率が非常に高い、ということもよく知られた事実だが、学校教育の普及率の高さと関連があることは容易に想像でき、これを否定する人はいないだろうと思う。2008年度には義務教育である中学校の卒業者のうち、実に97.8%が高等学校に進学している。もちろん、個人ベースで見ていけば、進学した先の学校内ので成績の良し悪しはもちろんあるわけだが、少なくとも進学できるだけの学力と理解力、学習能力は備えているわけで、教養もそれなりに持っていると考えてよいだろう。そんな人達が本当に政治の話が理解できないほどに、理解力が乏しいと考えるべきなのだろうか。そう、多くの人が政治の話を難しい、よく理解できないと感じるのは政治が高度に難しい問題だからではない。政治家が、自分の利権を優先させるために使う意味のよく分からないな理由を、そうとバレないように難しい言い回しで誤魔化そうとしてるからに過ぎないのだ。やましいことがない正当な理屈というモノはシンプル、かつ、わかりやすいものだ。なんだかよくわからない理屈になってしまうのはこれを誤魔化そうしている証左しょうさに他ならない。

しかも始末の悪いことに、全国展開している大手新聞、雑誌、キー局となっているテレビ局などは、この政治家どもの意味不明な言い訳をそのまま垂れ流して報道する。「○○氏は××と発言しました。」ハイ、終わり。これを聞いた有権者は、なんだかよくわからない話が出てきたけれども、マスコミはアタリマエのことのように報道しているし、きっと自分の理解力がたりないだけなんだろう、と思うわけだ。さらには自分のバカさ加減を周りに知られたくない気持ちが働いて、自分なりの解釈までつけて、なんでそうなるのかがわからなかったことはおくびにも出さないように振る舞う、ということすらやっていることだろう。聞いていて意味が分からない話なんて面白くないし、興味が持てないのもアタリマエなのである。

ジャーナリストの本来の役割は政府や政治家の言ったことをそのまま垂れ流すことではない。その発言が意味する本当のところをきちんと国民にしらせることにある。政治家の言ったことをそのまま伝えるなんて、日本語さえわかれば誰でもできる。それをするだけなら、ジャーナリストなんて無用の長物だ。

マスコミの本来の役割は政府が行ったこと、国会が議論して決めたこと、司法が法の番人としてその役割と正しくまっとうしていること、そうしたことに目を光らせ、誤ったことをしているようであればそれをきちんと国民に伝え、正しい方向に導く、そうした監視能力をきちんと機能させることにある。しかし、現在のマスコミにはこの機能が全く存在していない。

自民党が政権政党である限り、甚だ不本意ながら、自民党の総裁選は国の首相を決める選挙に等しい意味を持つ。この話を書いている現時点では、自民党の総裁選が間近に迫っており、連日テレビや新聞のニュース等はこの話題で持ちきりだ。しかしながら、マスコミが、あるいは、ジャーナリストを自称する輩がやっているのは、誰が自民党の中で人気があって優勢に立っているか、という票読み報道ばかりだ。本来、この局面においてやらねばならないのは、どうでもいい票読み報道ではない。退陣する政権の行ってきた政策の評価であり、良かった点、悪かった点をはっきりとさせる総括だ。そして、現在、候補に挙がっている人物がこれらにどう関与していて、総裁に選出された際にはどのような影響を政策に与えるか、ということをわかりやすく国民に伝えることなのだ。これを真面目にやっているマスコミやジャーナリストは皆無だ。

そりゃ、そうだろう。まともにそれをやれば、自民党の悪いところしか出てこない。だって、自分達の利権ばかり追いかけていて、まともなことなど、ちっともやってきていないのだから。本来ならジャーナリスト達はこうした自民党の姿勢を糾弾しなければならないはずだ。しかし、いわゆる著名なジャーナリスト達にとって、これは都合が良くないことなのだ。なぜなら、彼らは自民党のお友達だから。取材、と称して自民党の幹部と仲良く会食する間柄だ。政治的中立という都合のよいキーワードを便利に使いながら自民党を直接批判することを避けてきた輩だ。真正面から自民党を批判することなどできないのだ。でも、それでは自分のジャーナリストとしての体面は保てない。そこで、時々、差しさわりがない程度の批判をちょっと口にしてみたりする。そして、政権批判だってできるんだ、という姿勢を見せちゃったりする。そして、これが視聴者のちょっとしたガス抜きになって、自民党への直接的な批判圧力を弱めるのに役に立っていたりするわけだ。票読み合戦を面白おかしくやって見せるのも、視線を自民党に釘づけにして他党からそらす意図があるのではないか、と筆者は疑ってみている。他党の露出度はさがり、自民党へ興味を誘導することができる。さらには、新しい候補者を、退陣する政権の対抗勢力として評することであたかも自民党の中から実力派の新しい有望な政治家が誕生するかのようなプロパガンダにもなる。そして、そうした政治家が総裁になれば今までとは違う新しい何かをやってくれる、そういう雰囲気が演出され、それまでやってきた悪政の印象を薄めることだってできちゃう。

自民党のホープと言われている政治家を改めて見てみるといい。みんな2世議員のボンボンだ。議員になるときにはすでに父親が残した支持者と資金があって、ぬくぬくと育ってきたボンボンだ。庶民の生活なんて見たことも聞いたこともないだろう。大体が、父の地盤を継いで政治家をやるなんて、江戸時代の領主様となんにも変わらない。時代錯誤も甚だしい。そして、地元でそうした政治家を支持する人達というのは、政策の良し悪しではなく、おらが村の殿様が一番、という盲目的な忠誠心だけで支持している。一種の宗教と同じだ。だから、ちょっとばかり、悪いことしたってその支持が消えてなくなることはない。

少々話が逸れた。今、特にテレビの報道などでよく見るジャーナリストなる輩は、ジャーナリストのフリをした自民シンパなのではないか、という疑いの眼をもって見ていただきたい。

そういう意味ではマスコミも同質だ。マスコミの幹部達も自民党の幹部と会食をしていた事実はたびたび取り上げられてきている。それがアタリマエなのだ。だから、菅氏の長男と総務省幹部が会食するなんてことがごく自然に発生するのだ。マスコミの内部で時折、まともな報道をしようとする動きが出ると、自民党は報道の中立性をタテにとってこれを押さえようと圧力をかける。政権政党なわけなので、それでもいうことを聞かなければ総務省から圧力をかけるぞ、というマエフリなわけだ。日本の電波利用の許認可権は総務省が握っているわけだから、総務省ににらまれれば商売ができなくなる可能性すらある。直接的に電波の使用を止めることはできなくとも、ビジネスを広げようとしたときに認可が下りなければ利益を上げられず、他局に後れをとり、ひいては衰退につながりかねないから、テレビ局の腰も引けよう、というわけだ。

そもそもが、普段政府の決定や考え方は頻繁に報道されている。総理大臣はつまり、自民党の総裁であり、自民党の政策や考え方は普段から多くの時間を費やして国民に報道されているとも言える。選挙などにあたっては、むしろ野党に多くの時間をあてて、その姿勢や政策の考え方などを伝えるくらいがであろう、というものだ。政権政党が報道の中立性を持ち出してマスコミに抗議するなんてあってはならない暴挙としか考えられない。こうした脅しに屈してしまったのが日本のマスコミなのである。彼らの報道する内容は、自民党に配慮されたものであり、自民党議員や政府高官がどんなに意味不明な理論をふりかざして、理不尽な答弁を国会の場で行ったとしても、その内容を直接的に批判することを極力避けようとしているのだと認識しておくべきだろう。

日本国民にもたらされる政治に関する情報は、そのほとんどがマスコミを経由する。そのマスコミ、そして、ジャーナリスト達が政権政党にへつらって、その主張を的確に糾弾できないことが政治を分かりにくくし、ひいては国民の興味・関心を薄れさせてしまっているのだ。さすがに、現在のコロナ禍における政府の出鱈目っぷりには、さしものマスコミにも少々厳しい論調が増えてきたような気がするが、それもこれも事態がここまで悪化して、そういう報道をしても全国民が味方になってくれる、という確信が出てきたからだろう。そこまで事態がひっ迫して初めて、自らの身にも危険が迫ってきてようやっと、わずかながらも厳しい報道を行うことができるという程度の、非常に嘆かわしい状況に日本のマスコミは置かれているのだ。この状況を変えるべく、マスコミ自身が相当の覚悟を持たなければ、今後も政府に媚びへつらうだけの提灯持ちみたいな報道しかできないことは疑いようがないところだろう。

戦時中の大本営発表みたいなことしかできないマスコミ、そして、金魚のフンみたいに政権にひっついて、そこで得た情報をしたり顔でクチにするジャーナリスト達。かれらが、日本をダメにした主犯と共犯を幇助していたことは疑いの余地がない、と筆者は思うのだ。


まだまだ、文句を言いたいことは山ほどあれど、一刻も早いコロナの克服を祈りつつ、今回は筆をきたいと思う。



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