エピソード1 魔法………?少女



「…っつつ」



 頭が酷くズキズキする。

 目の焦点が合うまでに時間が過ぎ去った。


 そして、焦点が合おうとも、この状況が把握できないままでいた。



「あれ、ここは―――」



 霞む目をゴシゴシと擦りつつ、辺りを見渡した先に在ったのは、緑萠ゆる広大な大地と、そこに似つかわしくない1人の少女だった。


 ただ、何もない大地に心地いい風と、少女の声が吹き抜ける。




「………間違えて人、呼んだじゃん」




僕は、なんともメルヘンで、御伽噺に登場する人物のような少女に問いかける。



「――君は? そして、ここは?」



 この場所の事、そして今そこに居る少女自身の事も。

 すると、少女は取り乱すようにこちらの言葉に反応した。



「………えっと、ここはnamelessって世界で…、あっ、そっちの世界からは異世界って言うのかな…?」



「…そして私は………リリア=ヒメネス ……………って言うんだけど……言葉、通じるかな………。」


 言葉は出ないが、頷きはした。 


 予想していた答えとは違く、その返答はとても理解がし難いものだった。


 一応、状況を整理しておくと、ここはnamelessという世界らしく、こっちの世界で言う地球のようなもので、地球と何一つ変わらず生物が存在したりしているらしい。




「ヒメネスちゃんだっけ…? 此処が何処だか理解できたし、君の名前も分かった。 あんまり理解したくないけど………。何故自分がいきなりこの世界にいて、そして何故この平原で寝っ転がっているんだ……….、早く戻らないと……し、仕事に遅れる…………っ!」




 今日の仕事の予定を頭に思い浮かべながら、僕は小柄な少女を急かす。

此処が何処だって、その少女が誰だって今の自分にはどうでも良かった。

 ただ、仕事に遅刻して、上司に叱られてしまう。 その事だけが頭をよぎり、落ち着いていられなかった。


 そして、その少女は全てを悟ったように僕に語りかける。 顔に若干の謝意の表情を見せながら。




「ちょっと落ち着いて… 君が此処にきたのは私のミスだから!! ………、実は、ちょっと新しい魔法を練習してたら、魔力が暴走しちゃって、その魔法が歪んじゃって!なんだかんだいつのまにか転生魔法になっちゃったみたい!許して!な!あっ、因みにそっちの世界での時間は気にしなくていいかも…!」




 少女が、ポケットの中からずい、と差し出してきたスマホのようなものを覗き見ると、何がおかしいことに気がつく。




「…あれ、目を覚ますまで朝だったのに…?」




 スマホのようなものの表示は、14時を指している。

 自分が意識を長い時間飛ばしてしまったのだろうか。


 遅刻が確定したかもしれない事に落胆しつつ、また、不思議そうに時計を眺めていた。


 何故スマホのようなものが14時を示しているのか、その疑問を晴らしたのは少女だった。




「きっと、君の世界とこっちの世界では、時の流れ方が違うかも!」




 どうやらこの世界では、元いた世界との流れる時に、ズレが生じていた。


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ディスカイブ課金で異世界転生 ? ~namelessとかいう異世界に転生してしまった~ ねむ @nameless_alma

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