ディスカイブ課金で異世界転生 ? ~namelessとかいう異世界に転生してしまった~

ねむ

プロローグ:nameless

 夏、草木が生い茂る日。


 早くから小鳥達が喧しい鳴き声で歌い、日々の暮らしを賞賛するかのように、忌々しい朝日が自分を照らす。


 今日もいつもと変わらない、素晴らしく平凡で、圧倒的に退屈で、 そんでもって最悪で、最低な一日だ。



「もう朝かよーーー」



 クタクタなスーツと、皺くちゃになったネクタイを身に纏い、お決まりの朝御飯のカップ麺を頬張る。


 お決まりのニュースを見ながら。

 お決まりの音楽を流しながら。



「さてと、そろそろ時間か」



 玄関先へ向かう足取りすら重く、まるで鎖に繋がれた囚人のように、今日も会社へと向かう。

 重たい扉を開け、燦々と眩い輝きを放つ太陽の光を浴び、そうして、昨日の自分の失敗を思い出す。



「また今日も怒られんだろうなぁ…」



 毎日の鬱憤を胸に抱き、ニヒリスティックになりながらも、また同じ日々の歯車を回すため、一歩ずつ前へ踏み出していく。


 この人生は虚空なのだ、と理解はしていても。




――――ガタンゴトン…ガタンゴトン…



( 次は?〇〇駅~ 〇〇駅~ )



「はぁ…」


 ただ、心が安らぐ時間は、電車内でのSNSを眺めている時のみ。

 だが、そのSNSさえも、日常を非日常に変え、心の安寧を奪ってしまうとは、この時は考えてもいなかった。


 眺めるようにSNSを見ていると、いつもの日常に。異物が紛れ込んでいるのに気がついた。



「ん…?知らない人からサーバーの招待が来てるな…? 」


「……どれどれ」






――――〇〇に招待されました。


namelessに参加しますか?



………人がオンライン

…………人がオフライン





??はい


?いいえ




 退屈な日常が、何か変わる事を期待しながら、そして、心の中でそんな事があるはずがないと言い聞かせながら、恐る恐る、"はい" と表示される文字に指を触れてみる。


――――刹那、自分の体は、端末の眩く煌めく液晶に意識を奪われた。




『 ようこそ 〇〇さん

お待ちしておりました。 』




――――くん。




 遠くから誰かが自分の名を呼ぶ声が聞こえる。

 それはとても透き通るような声で、どこか懐かしいような、また、どこか切なそうな声で。




君が――――世界を――――。




 そうして突然目が覚めた。

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