破壊する人間の形

バブみ道日丿宮組

お題:壊れかけの神様 制限時間:15分

破壊する人間の形

「こんにちわ、大丈夫ですか?」

 天使が現れた。

 目の錯覚かと思うが、

「もしもし? 聞こえてます」

 幻聴まで聞こえる。

「あなたにお願いがあって、天から降りてきました」

「……本当に天使様なの?」

「そうですよ。あの天使です」

 そういうわりには、天使の羽根とか、輪っかがない。

「衣装が気になります? これはよそ行きの格好じゃないんです。お忍びできたんです」

 よそ行きの格好なら、羽根と輪っかがつくのか?

「天使と言っても、必ず絵本の通りの羽根、輪っかがあるものじゃないんです。って、そんなことはいいんです」

 いいのだろうか?

「あなたにお願いがあってきたんです」

 さっきも聞いた。

「神様を殺してください」

「えっ? 神様? 殺す?」

 とても天使から聞く内容じゃなかった。

 神を殺すだって? そんなことが可能なのだろうか。

 少なくとも僕みたいな凡人にできるようなことには思えない。

「見える才能だけが全てじゃないんです」

「遺伝子とか?」

「それとはまた別の問題ですね。遺伝子は基本的に遺伝子でしかありえません。書き換えてよくするなんてフィクションがあったりしますが、結局のところ本人次第です」

 そういうものだろうか。

 やっぱり凡人の僕にはわからない。

「話がズレ始めたので、もう一回いいますが神様を殺してください。私はあなたを連れに下界に降りてきたんです」

「……神様を殺していいの?」

 名前の通り神様だ。殺してしまったら、世界が壊れちゃったりするんじゃなかろうか。

「はい、今の神様はとてもアホです。やることすべてが間違ってます。だからこ、殺して新しいよい神様を誕生させる必要があります」

 アホなのか……。天にも個性というものがあるのか。

「神様に壊させるわけにはいきません。統制する必要があるのです」

「でも、僕にはそんな力がないよ? 間違えてない? 大丈夫」

 何度も口にする。

 僕には大それたことができない。

「あなたの家系は神族に繋がってます。見かけはただの人間かもしれませんが、精神は人のモノとは異なります。不思議に思ったことはありませんか?」

「……どうだろう」

 あまりにも普通すぎた。だからこそ、変化がわからない。特別だという部分が見えてこない。

「……わからないけど、期待されてるなら……してもいいかもしれない」

 人を殺したことはないし、殺したいと思ったことはない。

 でも、不思議と神様を殺すことへの躊躇いが徐々に消え始めてた。

「神を堕とす。それがあなたが受け継いでる力なんです」

 そうして、僕は彼女の手を取り、天へと向った。

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破壊する人間の形 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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