第41話 門

 小型飛行艇が目標の天体を飛行している時だった。

 科学者からの要請によって、天体の遥か上空から電波の出所を調べる。


「どれ、いっちょ調べてみますか」

「しかし、急にハンディタイプの電探が使えなくなるとはなぁ。確かあれ、この間導入したとかなんとか言ってなかったか?」

「最新型って導入されて日が浅いから、案外信用に値しないことがあったりするんじゃないか?」


 そんな事を言いつつ、通信士は例の電波を探し出すため、アンテナを操作する。

 そして電波を拾う。

 その瞬間だった。

 装置がけたたましい音を発する。


「なんだなんだ?急にどうした?」

「想像以上に電波が強いようだ。このままだと装置がイカれるぞ」

「感度を下げるぞ」


 装置の感度を下げて、何が起きたのかを究明する。


「この電波のエネルギーは相当だぞ。これでよくヒューズが飛ばなかったな」

「しかしこんな電波、一体どこから飛んできたんだ?」


 通信士は、電波の出所を調べる。


「他の艦の通信課にも連絡をしてくれ。受信装置を並列に繋げて、電波の出所を確かめるぞ」


 そういって、互いに情報を交換しつつ、電波を受信し続ける。

 そして電波の出所が判明した。


「こ、これは……!」


 通信士は、衝撃的な情報を得る。

 すぐさま、目標の天体の地表を飛んでいる小型飛行艇に乗っている科学者に情報を共有する。


「おっ、電波の出所が分かったようだ」

「ずいぶんと時間がかかったんじゃないか?」

「まぁとにかく見てみよう」


 そういって共有ファイルを開く。

 それを見た科学者は驚いた。


「何だと!?」

「どうした急に?」

「これを見てみろ」


 そういって、他の科学者がデータを見る。

 そしてそれに、一同驚いたのだった。


「なんと……」

「こんなことがありえるのか?」

「可能性としてはなくはないが……」


 その様子に、フクオカたちも気になる。


「あの……。どうしたんですか?」

「あぁ、君たちには説明をしておいたほうがいいな。このデータを見てくれ」


 そう言って科学者は、送られてきたデータを見せる。


「これは、この恒星間天体から発せられている電波の位置を特定しているものなんだが、これが少しおかしいんだ」

「おかしいって、どのようにですか?」

「普通、電波というのは、ある一点から放射状に伸びるように出来ている。しかし、正体不明の電波は、天体から一様に照射されている。これはつまり、この天体の地面から電波が直接放たれていることになるという証拠になっている」

「天体の地面から……」

「直接電波が……」

「放たれている?」


 フクオカたちは少し混乱している。


「少し分かりづらいか。つまりだな、恒星から放たれる光のように、この天体全体から電波が放たれているんだよ」

「確かに。それは少しおかしいですね」


 フクオカはなんとなく理解する。


「このデータから、この天体は自然に出来たものじゃなくて、人工的に造られた可能性がある」


 そう科学者は結論づけた。

 その時、外を見ていた科学者が声を上げる。


「おい、あそこになにかあるぞ!」


 小型飛行艇に乗っている皆が、そちらの方向を見る。

 そこには、巨大な構造物があった。


「何でしょう、あれ?」

「ここからでは断言出来ないな。運転士さん、あちらのほうに向かってください」

「了解」


 そういって、小型飛行艇は謎の巨大構造物へと向かう。

 その巨大構造物に接近すると、小型飛行艇はゆっくりと着陸する。

 そして一行は、小型飛行艇から降り、その巨大構造物の前に立つ。


「こいつはデカいな……」

「おい、カメラ回しとけ」

「これは明らかに人工物だよな?」


 その巨大構造物は、まるで門のようであった。

 ただ無骨に四角い、機能だけを追及したような門である。


「おい、あそこに何か書いてあるぞ」


 フクオカの男性同僚が指を指す。

 門の上部にあたる部分に、見た事もない文字が書かれていた。


「あれ、なんて書いてあるんだ?」

「さぁ?俺たちは言語学者じゃねぇからな」


 そんな事を話していると、その文字が砂嵐のようにかすれる。

 すると、文字が鮮明になると、共和国で一般的に使用されている文字になった。


「な、共和国の公用語になったぞ?」

「ンラシュット……?」

「この天体は共和国の中で生まれたものなのか?」


 そんなことを推察する科学者。

 しかし、ここで議論していても、何も解決はしない。


「さっきの文字、映像に残っているよな?」

「えぇ、ばっちり捉えました」

「そうだな……。さっきの文字を、この名前から取って、ンラシュット異文体と呼ぼう」


 何かと名前を付けたがる科学者。

 それも科学者としてのさがなのだろうか


「とにかく、この門に入ってみるしかないだろう?」

「そうだな。この門自体も調査してみたいものだがな」


 そういって科学者は門の入口まで入る。

 その先を見ると、地下に向かって暗い洞窟のようになっていた。


「こりゃライトがない調査は難しそうだな」

「ライトは全員持っていたな。ではライトを点灯させてくれ。これから地下の探索だ。お互いを見失わないようにしよう」


 そういって、科学者とフクオカたちは地下に向かって降りていく。

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