第40話 調査

 第219巡航艦隊作戦課の面子が集められ、今回の任務内容を確認していた。


「正体不明の恒星間天体、ですか?」

「あぁ。普通の天体ならスルーで構わないんだが、これの異常な所は、過去にも使われたことのない周波数帯で電波を飛ばし続けている点だ」

「そういう偶然でもあるんじゃないでしょうか?」

「まぁ確かに、偶然だったらいいんだが、他にも異常な点が見つかってだな」

「他にもあるんですか?」

「この電波が、一定の周期で繰り返しているんだよ。そのため、第13艦隊司令部は、何らかの知的生命体がいる、もしくはいたとして調査をするように我々に出撃命令を下してきたって訳さ」


 これには、フクオカたちも顔を合わせるしかない。


「このままスルーしてもいいんだが、万が一ということもある。それに何らかの存在があったとしても、被害が拡大する前の初期段階で対応が可能だ。そういった点を鑑みて、司令部は俺たちに命令を下したんだろう」


 そう上官が説明する。


「まぁ、司令部からの命令だし、仕方ないかな」

「そうだな。今回は命令内容が調査だから、幾分かは楽だろう」


 そういって、任務内容の確認は終了する。

 そして第219巡航艦隊は、その正体不明の恒星間天体に向けて出発した。

 艦隊には、調査団として何人かの科学者が搭乗している。学術的な観点から、何か判明するかもしれないからだ。


「目標まで41万光分。相対速度3590km/s」

「少し遠いな。司令部の連中は、よくこの電波を拾ったものだ」

「指揮官、ワープしますか?」

「そうだな……。距離が距離だからな。ワープの後、目標とランデブーせよ」

「了解、短距離ワープ準備」


 そういって第219巡航艦隊は、短距離ワープに入る。

 そして、ワープが終了した後、再び観測する。


「目標まで30光分。艦隊、進行方向に対して推力-500GNギガニュートン


 艦隊は進行方向に対して、艦首を180度回頭する。

 そして目標に対して、相対速度を合わせるため、全力でエンジンを回す。

 艦尾に設置されているブースターから火が噴く。

 数十分を使って減速、進行方向を逆転させる。

 こうして2時間後には、目標に対して相対速度を合わせる事に成功した。


「指揮官、目標と速度が合いました」

「よし、調査団を降ろせ。作業可能時間は24時間とする」

「了解。小型飛行艇、降下準備」


 その小型飛行艇では、科学者とフクオカたちが宇宙服を着こんでいた。

 最新の宇宙服は、体に密着させるスウェット部と、生命維持に必要なジャケット部によって構成されている。これによって、従来よりも遥かに高い運動性能と、軽量化に貢献している。実際に着てみると、冬服を重ね着したような感覚だ。


「ところで、なんでまたアタシたちが行かなきゃならないのよ?」

「知るか。俺に聞くな」

「また上官が無茶を承知で護衛に駆り出したんでしょ」


 フクオカたちは愚痴を言い合う。

 彼女らにはそれしか出来ないのだろうか?

 そんな事を言いつつ、フクオカたちが小型飛行艇に乗り込むと、艦底の装甲板が開く。


「降下準備完了。いつでも行けます」

「よろしい。降下せよ」


 そして艦と切り離される。

 下方向に向けてスラスターが噴射された。

 それによって少しずつ速度が上がっていく。

 一定の速度に達すると、スラスターの動作が停止した。

 その後は目標の天体の引力に引かれて自由落下だ。

 小型飛行艇が落下している間に、旗艦が惑星スキャンをして情報を集める。

 目標は球形で、大きさは直径3500kmと惑星としては小さめだ。

 その情報が、小型飛行艇の科学者にもたらされた。


「この程度だと、重力は1/6Gっていった所だな」

「惑星スキャンには何か異常なものは写っていなかったか?」

「それらしい物は見当たらないな」

「とにかく、降りてみないことには何も分からないだろう」


 そういって、小型飛行艇が降りるのを待つ。

 それから1時間もしないうちに、小型飛行艇は目標の天体に着陸した。


「さて、これから調査に入る。君たちは我々の護衛を頼むよ」


 そう、科学者がいう。

 そうして小型飛行艇の扉が開く。

 そこは大気のない、殺伐とした世界であった。

 よくある、典型的な未開拓惑星のようなものである。


「さて、まずは電波がどこから出てきているか調べよう」


 そういって手のひらに収まる機器を取り出す。

 簡易的な電波収集装置である。

 それを問題の周波数に合わせて、どこから電波が飛んできているかを調べる。

 装置を起動させた瞬間、「Error」の文字が表示される。


「なんだこれ?どうしてエラーになる?」


 科学者は装置をいろいろといじってみるものの、残念ながら装置はうんともすんとも言わない。


「こんな時に故障か?」

「困ったな。とりあえず上に報告だ。上からでも信号は捉えられるだろ」

「そうだな」


 そういって科学者は、今度は土を掬う。

 ハンディタイプのX線分析器によって、土の成分を調べるのだ。

 それを調べると、予想外の物質が出てきた。


「何だこれ……。鉄系とアルミ系の成分が主体になってるだと?」

「見た目普通の砂のようにも見えるんだがな」


 そうして科学者は次のように結論づけた。


「この惑星には何かがある」


 さらなる調査のために、科学者は小型飛行艇に乗り込んだ。

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