第27話 説明
ナリムトルに介入が決定してから、共和国の動きは早かった。
まず、地上戦を見越して、第1空挺団から第6空挺団を招集することを決定する。
さらに、その後の地上戦を見込んで、陸軍3個師団を準備した。今回は紛争を止めるだけなので、過剰な攻撃を行わないようにする。
そして、宇宙軍も動かすことになった。ナリムトルに対する優位性を確保するための措置でもある。
早速空挺団を乗せた輸送艦隊が、ナリムトルに向けて出発する。
一方で、宇宙軍のほうも出撃の準備をしていた。
今回も第219巡航艦隊の出番となる。
「今回の作戦に関してだが、上からの注文で、周辺地域に遠距離狙撃を行うようにとのことだ」
「それってつまり、紛争地域には直接手を出すなってことですか?」
「おそらくはな。まぁ、こちらの軍勢としては、陸軍3個師団が降りるとのことだから、援護射撃程度の仕事を期待しているんだろう」
フクオカたちは顔を見合わせる。
同僚である男性幹部が質問した。
「ということは、今回の軍事行動では、宇宙軍の活躍はそんなに期待していないということですか?」
「簡単に行ってしまえば、そういうことになるな。しかし、これは決して悪い話ではない。ナリムトルにとってみれば、自分たちの知っている以上の技術力で殴られることになるんだからな」
「しかしナリムトルは、一部とはいっても共和国の技術を持っているわけです。それを使われるという可能性はありませんか?」
「まぁ、可能性としては否定できないね。しかしナリムトルでは、これまで共和国の技術がまともに使われた事実は存在しない。研究は進んでいるんだろうけど、市民感情が反対に進んで、まともに機能していないんだろうな」
そう言われてしまえば、反論することはできない。
その前提条件の元、フクオカたちは作戦を立案させられる。
「どうしたものかねぇ……」
同僚の男性幹部が、パソコンを前にうなっていた。
「宇宙軍はサポートに回るとはいっても、今回の作概要を読む限りだと、後方への支援砲撃が中心じゃないか。これじゃ、作戦を立てる以前の問題だよ」
そんなことを冗談半分で答えてると、フクオカが案を提示してきた。
「こんなのでどうかな」
フクオカは作戦の困難さに対して、非常に簡単なもので返した。
単純に紛争の発生していることから、その周辺に対して簡単な砲撃を行うというものである。
「本当にこれでいいと思ってるんか?」
男性幹部が、確かめるように聞く。
「正直これしか思い浮かばなかった。でもそれって、これが最良の判断であるってことにならない?」
「そうかも知れないが、それを提出するのは時期尚早とも言えるだろう」
「……ここで出さなかったら、アタシ、後悔すると思う」
「まぁ、内閣の国家事業レベルでも、簡単に命令できる時間があるか問題だしな」
そんな中、フクオカのもう一人の同僚が、声をかける。
「でも、宇宙軍の出撃自体が凍結される可能性はないかな?」
「というと?」
フクオカが言葉を返す。
「宇宙軍の活躍次第では、今後の宇宙軍の活動に制限がつくかもしれない。だから私たちは普段からきちんとしてることを、宇宙軍の話題として世間に発表したほうが、ダメージは少ないと思うの」
「貴女が何を言ってるのかはよく分からないけど、結局のところ、宇宙軍の活躍次第では、世間が宇宙軍を避難する可能性があるってこと?」
そういうと、同僚の女性幹部はうなずく。
「でも宇宙軍って、今じゃ必要不可欠な存在だよね?今更廃止とかできないでしょ」
「いや、案外そうでもないみたいだ」
男性幹部が説明しだす。
「ある惑星の話らしいが、惑星全体が統一されて平和になったことから、武力集団である軍を解体した国家があったそうだ。しかしその惑星は、後に隣の惑星国家からの侵略を受けて滅亡したらしい」
「それマジ?」
「本当にあった話だ。これは小学生の道徳の時間でやった内容だぞ?覚えてないのか?」
「あー、でも小学校って7年前に卒業したわけだし……」
「だが、この話って割と重要な話だから、重点的にやるはずなんだが……」
「意外と道徳の時間って寝てたりしてたからなぁ……」
真面目な男性幹部と、不真面目なフクオカ。意外と対照的なのである。
「まぁいい。とにかく、今回の作戦案を考えて、さっさと提出するぞ」
「はーい」
こうしてフクオカたちは、第219巡航艦隊で行う援護射撃の概要を考え、そしてそれを提出するのであった。
その間にもナリムトルの様子は、日々悪い方向に転がっていく。
ある日は、捕虜として捕らえた敵兵を、人々が見ている前で突然処刑したり、お互いに核搭載の弾道ミサイルを発射しまくったり、とにかく考えられる最悪のシナリオを辿っていた。
この事態に、共和国政府は緊急声明を発表する。
「ナリムトルでの戦闘行為は、最悪なシナリオに基づいて動いている。一刻もこの事態を解決しなければならない」
もちろんこの声明は、ナリムトルの両陣営にも送信されたものの、聞いていないのか無視された。
この行為が決定打になったのか、ナリムトルに対して、本格的に軍事介入をすることを強めたのだった。
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