第14話 演習その2後前編

 1時間程の休憩を取って、今度は攻守交代となった。

 つまり、青チームが惑星要塞での防衛をし、赤チームは攻撃役となるのだ。


『あー、休憩中だから何度もいうが、赤チームの諸君は青チームの使った戦術を使わないように。またそれに類する戦術も取らないように。またサーバがクラッシュなんてされたら、今度こそお釈迦になってしまうからな』


 そう放送が入る。

 そして休憩時間が終了すると、各員配置に着いた。


『全員、準備はいいか?それでは、演習開始!』


 こうして、立場を入れ替えた演習が始まった。


「指揮官、どのように動きましょうか?」


 青チームのオペレーターが艦隊指揮官役の候補生に聞く。


「そうだな……。先の戦闘で、大手を振って派手なことは出来ないからな。まずは様子見として惑星要塞に駐在している艦隊を前面に押し出していこう」


 そういって、惑星要塞の中から艦隊を出撃させる。

 数のほうはたかが知れているが、それでもないよりはマシだろう。


「さて、敵さんの様子はどうだ?」

「敵艦隊、特に動きなしです。初期地点から動いていません」

「何か策でもあるのか?作戦参謀、この状況をどう見る?」

「え?あぁ、そうですね……。惑星要塞の得意距離は、中距離から超長距離。もし初期位置から動いてないとすると、惑星要塞の危険を承知で動いていないと考えます。そうだとしたら、敵が動く前に、艦隊を丸ごと叩き潰したほうが良いかと」

「一理あるな。ではそうしよう。要塞砲、発射準備!」


 こうして、惑星要塞に生えている主砲を動かし、そして照準を赤チームの艦隊に向ける。


「主砲準備完了!」

「主砲発射!」


 惑星要塞から一斉に攻撃が行われる。

 レーザーカノン砲や長距離レールガン砲の弾丸が、赤チームの艦隊を襲う。

 それにより、早速被弾する艦艇が現れる。


「命中!続いて撃て!」


 装弾されると、すぐに発射される主砲。

 それにより、赤チームの艦隊は移動せざるを得なかった。


「敵艦隊に動きあり。進路を惑星要塞北極方面に向けています」

「よし、動いたな。奴らを逃がすな!惑星要塞の全力をもって艦隊を撃滅せよ!」


 そう艦隊指揮官役の候補生が指示を出す。

 惑星要塞の攻撃力はすさまじく、ものの数十分で敵艦隊の半分を沈めることに成功したのだ。


「この調子なら、まったく問題はなさそうだな」

「そうですね」


 フクオカはそのように返しながら、少し考え事をする。


(おかしい……。あまりにも事が順調に進み過ぎている……。これも敵の罠?それとも考えすぎ?)


 そんな感じで悶々と考えていると、艦隊指揮官役の候補生が声を掛けてくる。


「どうかしたか?作戦参謀。何かいい作戦でも思いついたか?」

「あ、いえ……。なんでもありません……」

「不安要素でもあるのなら、素直に言ってほしい。もしかしたら、我々の勝利に繋がる可能性があるからな」


 そう言ってきた。

 その言葉に、フクオカは揺さぶられる。


(そうだよね……。いまは仲間だもん。こういう時こそ、仲間に頼らないと……!)


 そう思ったフクオカは、今考えていたことを話す。


「実は……この戦闘、少々アタシたちに有利すぎないかなって……」

「有利とは?」

「先ほどから、攻撃が通り過ぎていると思いませんか?」

「それはそうかもしれないが……」

「それに、敵は反撃することなく、一定の距離を保ちながら移動しています。これまでの敵の動きをみると、反撃に消極的と言わざるを得ません」

「確かにそうだが、これまでの艦艇撃沈数を見てくれ。既に敵艦隊は半分近くを失っている。これ以上どうやって反撃の糸口を見つけるというんだ?」

「それもそうですが……」

「指揮官。敵艦隊がこちらに転進しました」

「そうか。今の数なら、こちらの艦隊を向かわせても問題ないな。駐留艦隊、前進せよ!」


 そういって艦隊指揮官役の候補生は、艦隊を前進させる。

 赤艦隊と青艦隊の砲撃戦は、すぐさま始まった。

 惑星要塞からの攻撃によって満身創痍になっている赤艦隊と、ほぼ無傷の青艦隊。

 どちらが優勢なのかは火を見るより明らかだった。


「よし、このまま押し切れ!」


 青チームは、既に勝利を確信していた。

 そんな中、フクオカがふと、撃沈した敵の艦種を見る。

 戦艦や巡航艦といった、敵の主力が沈んでいることが分かる。

 しかし、何か違和感のようなものを感じたフクオカ。


(なんかおかしいんだよね、この表……)


 じっくり見たフクオカは、その瞬間、あることに気が付いた。


「あーっ!」

「ど、どうした作戦参謀!?何かあったか?」

「指揮官!大変な事に気が付きました!」

「な、なんだ?」

「敵の空母が1隻も撃沈されていません!」


 そういって指差した表には、空母の文字は一切表示されていなかった。


「た、確かに空母は撃沈されていない……。しかしそれがどうしたというんだ?」

「もしですよ!?もし敵空母艦隊が別行動しているとしたら……!」

「……!しまった!?」


 その瞬間、警報音が鳴り響く。


「指揮官!南極方面から多数の影を感知!おそらく艦載機だと思われます!」

「なんてこった……」


 一方、赤チームの艦隊指揮官役の候補生は愉悦に浸っていた。


「はははは!空母だけを別行動させて、本隊を囮に使う作戦は上々のようだな!そのまま惑星要塞に向けて攻撃開始だ!」


 敵の艦載機は、ほぼ全てが重爆撃隊である。


「不味い状況になった……!」


 艦隊指揮官役の候補生は、そう呟く。


(アタシも頑張らなきゃ……!)


 フクオカも覚悟を決めた。

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