第8話:幻獣の概要と神々:『人化♀したドラゴンが遊びに来るんだよ』
ここから第86話までのネタバレを含む世界観&キャラクターの設定を紹介します。
『人化♀したドラゴンが遊びに来るんだよ_〜暁光帝、降りる〜』の設定資料、今回は“幻獣編”について概説でございます。
さて、こちらの世界設定について。
よろしければ皆さんの作品でも使ってやってください。
その際、「『人化♀したドラゴンが遊びに来るんだよ_〜暁光帝、降りる〜』世界観の一部を使ったよ」的なことを一言、明記していただければありがたい。
もとより、小生が著作権云々を言い立てることはやりたくありませんのでご利用いただければ幸いであります。
ひとつ、よしなに。
本編はこちら〜>https://kakuyomu.jp/works/1177354055528844202
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<<幻獣の概要と神々:『人化♀したドラゴンが遊びに来るんだよ』>>
2,幻獣について概説 1
<<魔女化け物連盟>> 4
<<最終調整者>> 4
3,人化について 5
・人化:緑龍テアルのオリジナル版 5
・人化:上位の幻獣 5
・人化:ふつうの幻獣 6
・人化:魔族 7
4,幻獣の勢力 8
5,神々について概説と各キャラ 11
<<享楽神オヨシノイド>> 13
<<光明神ブジュッミ>> 14
<<暗黒神ゲローマー>> 14
<<天使と悪魔>> 15
6,神殺し 15
2,幻獣について概説
・幻獣は虚無の空間から湧出する。
・幻獣は魔石を持ち、肉体の核とする。
○幻獣の肉体は魔力により集められた分子で構成される。
○幻獣は死ぬと死体が消え失せる。
■死体はほとんどが水と二酸化炭素に分解される。
■魔石とアイテムをドロップすることがある。
○並の幻獣は大気中に存在する精霊の霊気を呼吸して魔気を補っている。
○高位の幻獣は自力で魔気を生み出すので精霊の霊気が不要である。
○幻獣に感染できる病原体は存在しないので病まない。
■寄生虫は幻獣の体内で生きられない。
■バクテリアも同様。
■ウイルスは幻獣の体内で増殖できない。
○幻獣も呪われはする。
・下位の幻獣には酒や毒が効くが、上位の幻獣には効かない。
○邪魔法の産物である咒毒なら上位の幻獣にも効く。
○憎悪を込めて丁寧に調合された毒は幻獣にも効く。
○生物由来で醸造された酒精には酔う。
○エチレンの水和反応や蔗糖のアルコール発酵で合成された酒には酔わない。
・幻獣は世代交代しない。
○幻獣に性別はない。
○幻獣は生殖しない。当然、親もいなければ子もいない。
○幻獣は成長しない。当然、老いない。
・幻獣は嘘が吐けない。
○嘘つきは極めて稀である。
■嘘つきは非常に恐れられる。
■嘘つきの証言は認められない。
・幻獣は社会性に乏しい。
○幻獣に上下関係はないことが多い。
○群れることはあるが、組織的な行動は苦手。
○“所有”の概念はあり、財宝を貯め込む者もいる。
○“譲渡”や“貸与”の概念は曖昧。
○貨幣経済について概念すらもない。
・幻獣は同士のトラブルを話し合いで解決する。
○上位の幻獣が調整者になることがある。
■最終調整者は話し合いの最後の調整を図る。
○証言が疑われることがない。
○約束は障害がなければ必ず果たされる。
○話し合いは現在の問題に限定される。
○“罪”の概念がなく、過去に起きて今に関わらないことは話し合われない。
○同様に“罰”の概念も希薄で、終わったことは罰せられない。
○現在、問題になっていることを繰り返す当事者のみが罰せられる。
○罰せられた者が反省と以後の行動について改善を約束すれば許される。
○損害が過去に遡って補償されることはない。
○“復讐”の概念を持たない。
■ただし、人間を対象にする場合、その限りでない。
・幻獣が自力で人化するには幻影魔法の習得が必須。
○例外として、幻獣は“妖女サイベルの呼び鈴”でも人化できる。
・幻獣は話す場合、声に魔力を乗せて語る。
○声のみで伝えるには聞く方が注意しないといけない。
○魔気信号の方を聞く者が多い。
○言語が異なっても会話が可能である。
・幻獣は魔術式を魂に刻み込んでいるので無詠唱で魔法を使う。
・幻獣は魔力の回復が速く、約2秒前後で全回復する。
・人間は嘘を吐く者として広く了解されている。
○人間の謝罪は受け入れられないことが多い。
○人間は復讐の対象になり得る。
■謝罪が信用できないので痛めつける必要がある。
○人間との交渉は忌避されることが多い。
○人間との約束は禁忌であり、尊重されないことが多い。
■一度、違えると約束は破棄される。
■補償されても約束は破棄されたままである。
■改めて約束する場合は保証を要求する。
・人間を幻獣の側に引き込むことは極めて難しい。
○人間と世代交代しない幻獣の合の子は絶対に生まれない。
○アンデッドモンスターは動く死骸なので幻獣である。
■吸血鬼は生きた人間を下位の吸血鬼にできる。
○魔女の中にはかつて人間だった者が幻獣になった者もいる。
○仙女、仙人は人間から幻獣になった者である。
・幻獣を人間の側に引き込むことは不可能。
○召喚獣となった者は珍しく“いい人間”を見つけたとされる。
○召喚の契約は契約主の一代限りである。
■遺言による引き継ぎは不可。
■血縁や交友関係による優遇はなし。
<<魔女化け物連盟>>
話し合いのできる幻獣の集まりである。
議長は天龍アストライアーではなく、面白い顔の水棲モンスター“ドゼウ皇帝”である。
魔女化け物連盟によって幻獣は以下の四種に分類される。
・甲種1類:言葉による対話が可能で加盟している。
・甲種2類:言葉による対話が不可能だが、加盟している。
・乙種1類:言葉による対話が可能だが、加盟していない。
・乙種2類:言葉による対話が不可能で加盟していない。
定期的な会合は設けられておらず、ドゼウ皇帝に陳情が集まると議題が設定されて会合が設けられる。会合を開くためには孤高の八龍の1頭が参加しなければならない。
会合では裁判なども開かれるが、幻獣は社会性に欠けるため、過去に起きたことについて責任を問われない。それ故、“罪”を問われることはない。過去に起きたことが現在に影響を及ぼしていても、それを起こした者が責めを負うことはない。
“罰”の概念も薄く、現在の問題を起こしている者についても罰せられることはない。単純に行動を改めるよう要請されるだけである。これについても問題を起こしている者が反省して行動の改善を約束すれば、それ以上に何かを言われることはない。
ただし、反省せず行動も改めなければ“乙種”とみなされて、連盟からの脱退を求められてしまう。
乙種1類については、連盟について知らない者、連盟に入ることを保留している者、連盟と敵対している者などがいて、対応は複雑である。
天龍アストライアーは乙種2類を“親切な連中”と好ましく思っている。自分に裁定を求めないからだ。もちろんぶん殴ってもいいのでとても気に入っている。
<<最終調整者>>
魔女化け物連盟に於いてトラブルの調整を図る者を“調整者”という。
社会性に乏しい幻獣達は役職を設けることを嫌い、“調整官”ではなく“調整者”と表現する。
調整者はトラブルを起こした者と起こされた者などの間を取り次いで、事件について議論し、調整を図る。双方の言い分を聞いて責任の所在を明らかにし、当事者達に注意する。
注意するだけ。
あくまでも言葉で調整を図るのみ。
これがさらに揉めると更に上の調整者にお鉢が回る。
最後に出てくるのが最終調整者である。
天龍アストライアーは有名な最終調整者である。
3,人化について
幻獣や魔族が人間に変化する魔法を「人化」と云う。
これは幻影魔法から緑龍テアルが開発したものである。
先ず、魔力による幻影を実体化させて、自分自身の実存を形而上学的に畳み込むことで完成する。
比較的難度の高い幻影魔法であり、素の状態で使える者は少ない。
そこで妖女サイベルがこれを改良し、より正体が露見しづらいよう、自然な人間として振る舞えるように制限を増やして、使いやすいマジックアイテムにした。
“妖女サイベルの呼び鈴”である。
最近、これが幻獣や魔族に広まりつつある。
・人化:緑龍テアルのオリジナル版
妖女サイベルの呼び鈴に頼らない。
特徴のある、変わった人化を見せる。
・人化:上位の幻獣
幻影魔法が得意な幻獣は妖女サイベルの呼び鈴に頼らない。
自前で人化の魔法を発現できる。
人化すると魔気容量が1/23に減少する。
人化しても怪力と異常な頑丈さを示す。
いずれの状態でも呼吸しない。当然、水に溺れない。炎に焼かれないし冷気に凍えない。強酸や強塩基にも侵されない。高電圧を印加されても絶縁体として振る舞う。毒物や病原体に侵されることもない。
なので、これらの影響から完全に免れているところを見られれば人でないことは明かになってしまう。
また、意識しなければ瞬きもしない。空腹にもならないから食事もしない。当然、排泄もしない。疲れないし、眠らない。
よく観察されると正体が露見してしまう。
視力や魔気感知などの感覚も異常に鋭く、望遠鏡を使わなくても遥か彼方の鳥を識別できる。
更に小柄な体型に人化すると魔法が一切使えなくなる代わりに、魔力線の放出を強く抑えることが出来る。完全に0にしたり、微量な一定量に抑えてしまえば、魔気検知に引っかからなくなり、隠密行動に適する。
その代わり、魔力線を全く発生しない生物などいないから疑われてしまう。
全身を自在に操れる。
そのため、耳や髪の毛など本来動かせない部位まで動かせるのでこれもまた正体を露見させる要因になりかねない。
総じて、強い幻獣の人化はふつうの幻獣の人化よりも露見しやすい。
童になると魔法は使えない上に能力も減じているが、感覚は衰えていないので相手の魔気力線は見えるので人間と幻獣を容易に区別できる。しかし、人化したふつうの幻獣を見破れない。
人化した後に着る服まで作る。
・人化:ふつうの幻獣
妖女サイベルのマジックアイテムに頼る人化である。
人化すると魔気容量が1/11に減少する。
格段に弱くなり、元の力も頑丈さも失われてしまう。
特殊能力も使えなくなる。魔気容量が十分であれば魔法は使えるものの、力率が減じて威力はだいぶ下がってしまう。
その代わり、呼吸するようになり、毒に中り、病に罹るようになる。体力も落ち、怪我もするので場合によっては死にかけるようなことも起きる。
死にかけると人化が解けて元の姿に戻ってしまう。
ただし、どんなに死にかけても死にはしない。首を刎ねられても、頭から股まで半分に裂かれても、その瞬間に人化が解けて受けたダメージもなかったことになる。
もともとの弱点が克服される。トレントは火に焼かれなくなり、吸血鬼は祝福された物品に触れるようになる。
意識しなくてもまばたきし、動けば空腹になって食事も摂る、食べて飲めば排泄もする。疲れれば眠くなる。
ふつうの幻獣が使う人化の方が露見しにくい。
また、人化することで魔気容量が1/11に減じるが、魔気の回復量は相応なので人化しても幻獣は魔法を連発できる。人間は魔力を使い切るとその回復にかなり時間がかかるので、その様子を比較されると正体が露見してしまう。
人化した後に着る服までは作れない。
・人化:魔族
妖女サイベルの呼び鈴を魔界で劣化コピーしたものに頼る人化である。
人化すると魔気容量が1/11に減少する。
ある程度の魔気容量が必要なのでそれが小さい魔族だと1人では人化できない。
どんな人種にも人化できるが、魔気容量の低下もあってハルピュイアやミュルミドーン羽蟻に変身しても飛べるようになるわけではない。それでもマーフォークになれば水中で呼吸できる。また、コボルト奴隷に変身すれば目立たなくなり、スパイとしては都合がよい。
変身後、魔気容量は低下するが、パタゴン族などに変身すれば力は強くなる。
言語機能もセットになっていて、それぞれの人種に変身後はその人種の言語が理解できるようになる。
他人に変身できることも利点の1つである。
しかし、これを味方に使われると混乱が起きるので強制解除ワード『魔王様に栄光あれ』がある。これを自分で言ってしまうと人化が解けてしまう。これはマーフォーク語やミュルミドーン語で言っても同じ。
加えて、もうひとつの欠点として真水を飲むと酔ってしまう。
これはアルコールによる酩酊状態とは異なり、マジックアイテムの副作用であるから酔いどめの薬草が効かない。熱いお湯を飲むことで醒める。
真水を飲むことで起きる副作用だから、ワインなどの酒を薄めたものを飲むことでは起きないから代用できる。
人化した後に着る服までは作れない。
4,幻獣の勢力
下記の表はあくまでも個体としての能力を評価する。
<頂点>…5000Z
{
松:{天龍,世界樹}
竹:{赤竜,黒龍}
梅:{金龍,銀龍,青龍,緑龍,白龍}
}
<神々>…50M
{
松:{オルゼゥブ}
竹:{マァルト,ブジュッミ,ゲローマー,ズバッド,オヨシノイド,神王その他}
梅:{キルウルウグング}
}
<一番手>…5M
{
松:{火龍,氷龍,風龍,地龍,雷龍,水龍,光龍,闇龍,フェニックス}
竹:{エキドナ,ヒュドラ,クラーケン,夢魔,人食いサソリ}
梅:{テュポーン,人食いシャチ,カリュブディス,スキュラ}
}
<二番手>…50k
{
松:{キマイラ,マンティコア,グリフォン,ケルベロス,ギガース}
竹:{屍導師,吸血鬼,ワイバーン,ワイルム,サンダーバード,人食いクジラ}
梅{ベヒーモス,レヴィアタン,ジズ,人食いザメ}
}
<三番手>…5k
{
松:{火竜,氷竜,風竜,地竜,雷竜,水竜,光竜,闇竜}
竹:{タロス,ヘカトンケイル,シーサーペント,ケートス,ラミア,人食いカブトガニ}
梅{キュークロプス,幽鬼,ドラゴニュート,上級魔族,人食いグソクムシ}
}
<四番手>…5h
{
松:{オーガ,トロル,ヒポグリフ,ゴーレム,ペガサス,ミノタウロス,人食いワシ}
竹:{ユニコーン,人魚,ニュムペー,アルラウネ,オウルベア,セイレーン,ヘルハウンド,墓鬼}
梅{スレイプニル,ケルピー,人食い象,人食いワニ,マンイーター,フェアリー,中級魔族,人食いウツボ}
}
<五番手>…5da
{
松:{マンドラゴラ,モスマン,ピクシー,人食いトラ,人食いライオン}
竹:{トレント,フォモール,ペリュトン,人食い熊,人食いヤドカリ}
梅{人食い牛,人食い馬,下級魔族,人食いヒモムシ,人食いヒラムシ}
}
<六番手>…5
{
松:{人食いコンドル,人食いグモ,人食いヒトデ,人食いカタツムリ}
竹:{人食いイノシシ,人食いイソギンチャク,人食いオオカミ,スケルトン戦士}
梅{人食いロバ,人食いガニ,人食い羊,暗黒卿信者}
}
<七番手>…0.5
{
松:{人食い蝶,人食いバチ}
竹:{人食いアリ,人食いニワトリ}
梅{人食いコウモリ,リビングデッド,スケルトン労働者,暗黒卿信者見習い}
}
フォモール族は手足の欠損、または過剰を示す異形の巨人。しばしば、他の生物の特徴を備えていた。海底に居を構えてしばしば地上を侵略する。
冒険者ギルドでは幻獣を一番手から七番手までに分類する。対応する冒険者パーティーのランクは以下の通りである。
・七番手(E級)……初級冒険者パーティー
・六番手(D級)……下級冒険者パーティー
・五番手(C級)……中級冒険者パーティー
・四番手(B級)……上級冒険者パーティー
・三番手(A級)……特級冒険者パーティー
・二番手(AA級)…超特級冒険者パーティー
・一番手…該当するランクなし
以上が冒険者ギルドの決めた対応方法である。
オクトソラスや神々についても対応できる冒険者パーティーはいない。けれども、神々についてはローカルな地神など冒険者パーティーでも十分対応できるくらいの実力しか持たない者もいる。
5,神々について概説と各キャラ
「神」と呼ばれる者は幻獣の一種であり、正式な分類では「神霊」である。精霊に近い。
精霊との違いは信仰によって神格(魔気容量)が増減すること。
神霊は精霊や亡霊が変化した、それらの亜種である。
神霊と精霊、そして亡霊、どちらが有利なのか。信仰を集められれば神霊が強くなり、集められなければ弱まる。場合によっては信仰の象徴を残して失せる…なんてこともあるらしい。
だから、多くの神々は信仰を集めることに熱心である。
祈られれば祈られるほど神格は上がる。
祈りが失せれば脆弱な素の神霊に戻ってしまう危機。
人間に依存する存在なのだ。
神格が上がれば、驚異的な奇蹟をもたらせる。
それが影響すれば更に祈りが集まる。
しかし信者たる人間の数は有限である。
だから取り合いになる。駆け引きが生まれる。
それでも過当競争は避けたい。
そこで生まれたのが神々の住まう国リゼルザインドだ。
大陸の東、高山の頂に作られた神々の場所。
元は随一の最高峰だったが、世界樹よりも高かったことで天龍アストライアーの不興を買ってしまい、蹴飛ばされて低くなった跡地を利用している。
神界リゼルザインドには神々が住まい、互いに牽制しながら過当競争を避けつつ、人里から信者の祈りを募っていた。
神々は人間と同じように肉体を持ち、ある者は子供のように小柄で、ある者は見上げるほどの巨体で、地上をのし歩いていた。時には王の前に現れてあれこれ命令し、ある時は神殿に赴いて自ら祭りを執り行い、人々に賛美歌を歌わせて悦に入っていた。
それよりも昔、最初、精霊よりも脆弱な神霊達は小さくなって暮らしていた。
ところが、人間が栄えて村が街へ、街が国へ発達してゆくに連れて、神霊達が人間に関わって手助けするようになった。人間はその代償として祈りを捧げるようになり、宗教が生まれた。
宗教の発生によって崇め奉られるようになった神霊達は神力を高めて“神”を名乗るようになった。
それと同時に人間と関わった神々は染まった。
社会性を持つようになって、“罪”や“罰”の概念を得た。神々は人間の創り出した学問、“哲学”や“神学”に惑わされるようになり、やがて人間を弄び、罰するようになった。
そして、ドラゴンをも上回る神力を振るうようになって周辺に迷惑をかけ、ついに魔女化け物連盟へ陳情が集まって孤高の八龍が1頭、赤龍ルブルムが介入した。
当時、ドラゴン達に服従を迫っていた軍王ガロンゴディヴァーが厳しく懲らしめられたのである。
神界の有力者は…
・怠ける大御神オルゼゥブ:最大の神格を誇る。怠け者だがなぜか信仰は篤い。信仰は広く薄く世界中に広がっており、神力も最高。信者の獲得数、二位を大きく引き離して圧倒的に第一位。
・主神ジーノウ:神界リゼルザインドのそのもののまとめ役、管理責任者。神のお告げを使いこなし、神力で命令を遂行させる。
天王:軍務に就かない天使の管理責任者。神々に仕える天使らをまとめる。
・地王タニーテミャイバクト:大陸に住む人々の管理責任者。神々の規則違反を取り締まる。
・海王:海洋や湖に住む人々の管理責任者。神々の規則違反を取り締まる。
・軍王ガロンゴディヴァー:武闘派の天使を集めて軍隊を組織している、まとめ役。自身も切っての武闘派であり、魔法も物理も遠戦も白兵戦もこなす。神々の諍いを幾度となくいさめてきた実力者である。かつては荒ぶる神々の代表であり、幻獣達を脅していた。その後、赤龍ルブルムに打ちのめされておとなしくなった。
・豊穣神マァルト:信者の獲得数、第二位。「万年豊作」を唱えて人気を集めている。祈りの質が低いことが悩み。
・光明神ブジュッミ:新進気鋭の人気者。“唯一絶対神”を標榜し、信者の獲得数№2である。狂信的な信者が多く、祈りの質が高い。配下の天使も数が多い。
・暗黒神ゲローマー:新進気鋭の人気者。“恐怖の大王”を標榜し、信者獲得数№3である。祈りの質は更に高く、狂信者が更に多い。有力な信者を選抜して奇蹟を授け、強力な手駒“魔族”とする。配下の悪魔も武闘派そろい。
・博打の神ズバッド:商売や博打の神。「買って、売って、打って、打って、大もうけ!」を説く。人気があって祈りの質もなかなか。
立ち昇る烟りの神キルウルウグング:かまどに佇み、人々の祈りを神界リゼルザインドに届ける神。どんなに祈っても届かなければ意味がない。きっちり届けて聞かせる神は便利である。
・影の女神レイヴン:大陸西方のガリアにある特殊な暗殺ギルドで信仰される。化身は大鴉。闇龍メトセラと協力関係にある。
…と言った形である。
<<享楽神オヨシノイド>>
トリックスター“Oiosynoid”、酒と酩酊、淫蕩、乱痴気騒ぎの女神(Διϝνυσοιοの逆読み)である。
数少ない、地上を歩くことを許された神の1柱であり、今でも人間に直接、干渉できる。
普段は享楽的に遊ぶばかりだが、戦渦や疫病禍の下では真面目に働き、様々な活躍を見せる。
あべこべのギャグを好み、同性愛を奨励して、同性間で子供を作るマジックアイテム“魔法の子宮”を創造した。
神にしては非常に珍しい嘘つきであり、そのことを隠している。
そのため、陰謀と策謀にも長け、世界を揺るがす大異変にもしばしば関わる。金龍オーラムの神器が流出したときも疫病禍のときも事態の沈静化に努めた。
<<光明神ブジュッミ>>
信者の獲得と維持を最優先にして、修行はほどほどにさせている。個人技よりも協調と協力を重んじる。その戦術は数を頼みとした人海戦術である。
特別な信者は作らない。指導者の選別も信者に任せている。
宣教師は既存の知識と技術の啓蒙に努めるだけで神から奇跡を授かるようなことはあまりない。
天使は信者を見守るが助けることは禁じられている。
「産めよ、増やせよ、地に満てよ」を勧め、ひたすら数を優先する。そのため、同性愛を疎んじており、表向き禁じている。
唯一絶対神を標榜し、他の宗教を同時に信じることを禁じている。
<<暗黒神ゲローマー>>
信者に過酷な競争を課し、修行を奨励している。信者それぞれの個人技を重視して「より優れて有れ」と煽る。
直属の悪魔とは別に有力な信者から選抜して奇蹟を授けて“魔族”と成し、エリートとして厚遇している。
魔族は強力な魔法を使って信仰の拡大に努める宣教師である。
悪魔は魔族を補佐するだけで、人間への直接的な干渉は禁じられている。
魔族の勝利は信者の獲得である。改宗であればなお良い。
しかし暗黒神崇拝は過酷であり、棄教も少なくない。
どうしても数の面で不利になりがちなので軍事的には消耗を抑制する戦術を取る。魔族も回復系や防御結界の術が使えるものを優遇している。
「戦って死ね」が教義なので恋愛は自由。同性愛だろうが死体愛好癖だろうが干渉しない。
“恐怖の大王”を標榜し、他の宗教を信じることを禁じている。
<<天使と悪魔>>
“神”とは祈りによって力を得た、“神霊”という幻獣である。
それなら、信仰を失った神はどうなるのか。
只の神霊に戻る。
そして、また、一からやり直すのである。
しかし、それは過酷な道だ。信仰を得られない神霊は精霊に及ばない幻獣である。
だが、1つの抜け道がある。
他の神にすがって祈りのおすそ分けをもらうのだ。
そこで他の神と契約して臣従を誓い、その配下になる神霊が生まれた。これが“天使”と“悪魔”である。
すなわち、“落ちぶれた神”である。
光明神に従った神霊が“天使”、暗黒神に従った神霊が“悪魔”ということになる。
6,神殺し
かつて、光明神ブジュッミと暗黒神ゲローマー、それぞれの信者が激しく布教合戦を行い、それが高じて大陸全土を巻き込む戦争に発展した。
光明神の側は国家連合が総力を挙げて、暗黒神の側は最強のエリート信者“魔王”が魔族の軍団を率いて、各地で死闘を繰り広げた。多くの国々が巻き込まれ、否が応でもどちらかに付くことを迫られた。そして信仰はともかくとにかくどちらかに付いた人々は争いを強制され、無駄に多くの血が流された。
エルフ族、ダークエルフ族、コボルト族、ドワーフ族、オーク族、ゴブリン族、パタゴン族、リザード族、マーフォーク族、獣人族、マタンゴ族、ハルピュイア族、そしてヒト族。同じ種族が宗教の違いで分かたれて、血で血を洗う激戦となった。
激化する戦いは幻獣にも及んだ。
トロルが、オーガが、キュークロプスが。
キマイラが、マンティコアが、フェニックス、グリフォン、ケルベロスが。
ヒポグリフが、オウルベアが、ヘルハウンドが、モスマンが。
ペガサスが、ユニコーンが、スレイプニルが、ケルピーが。
人魚が、半魚人が、クラーケンが、シーサーペントが。
やがて死人が蘇った。
屍導師が、吸血鬼が、幽鬼が、亡者が、骸骨が、墓鬼が。
そしてドラゴンまでもが参戦してしまい。
ヒュドラ、ワイバーン、ウィルム、甲冑竜、火竜、水竜、地竜、氷竜、雷竜が海に空に激闘を繰り広げた。
只、孤高の八龍だけが関わりを絶って世界を眺めていた。
そんな戦争がついに百年を迎えた、ある日…
勇者が魔王を討った。
光明神の勢力は大いに喜んだ。これで戦争が終わると。
だが、逆に戦争は激化した。
仇討ちに燃える魔族は今までにもまして激しく戦い。
やがて新たな魔王が復活し、
くだんの勇者も英雄と称えられたものの、すぐに戦場に斃れてしまい。
今度は英雄の仇討ちに燃える騎士達が雄叫びを上げる。
そんな中、ユニコーンの森が焼かれ、ニュムペーの泉が糞尿に汚された。
魔族と騎士が参戦を促したものの、拒んだユニコーンとニュムペーに対して両陣営が見せしめにと報復合戦を仕掛けたのだ。
ユニコーンは嘆いて逃げ出し、ニュムペーが悲劇を歌った。
それらの涙を、立ち昇る烟りの神キルウルウグングが天龍アストライアーに届けたのだった。
その森はたまたまアストライアーのお気に入りだった。
嘆き悲しむユニコーンとニュムペーを見て天龍は激怒。
まず、西は魔界の万魔殿に赴き、暗黒神ゲローマーを誅殺した。魔族の群れが頑強に抵抗したがものともせず、命がけで抗う暗黒神に天龍の鉤爪で切り裂いて誅滅した。その上、破滅の極光を喰らわせて一瞬で肉体も魂も消し飛ばしたのだ。
この時、足元を逃げ惑っていた魔王が踏み潰されて果てている。
そして、すぐさま、神界リゼルザインドに向かう。
神々はその威光を賭けて迎え撃ったが、天使の軍勢もまるで歯が立たず。門ごとエーテル颶風で吹き飛ばされた。
神々の王は天王、地王、海王を集めて声を合わせ、「悪竜よ、去れ!」と神の声で命じたが。
天龍アストライアーは「聞くか、呆け!」と一喝、神々の王を怯ませた。
おののく神々の中で只、一柱、軍王だけが剣を手に立ち向かうものの。
命がけの一撃は天龍の鉤爪にはじかれてしまい、「失せろ、雑魚が!」と罵られ、軍王は体ごと壁にめり込んで動かなくなった。
一柱残された光明神ブジュッミはまぶしい光を放とうと構えた。目をくらませた隙に「死なばもろとも!」と他の神々の中に逃れようとしたのだった。が、その動きを察知されてしまう。奇蹟が発動する前に床から吹き出したエーテル颶風に宙高く吹き飛ばされ、そのまま破滅の極光を喰らい、同じく肉体も魂も消し飛ばされてしまった。
天龍アストライアーは一言、「世界に迷惑をかけるな」と告げて去った。
大御神オルゼゥブは何もできず、只、立ちすくむだけだった。
ここに神界リゼルザインドの地位はどん底まで下がってしまい。
神々の多くが光明神と暗黒神を恨んだ。
それでも天龍を呼んだ立ち昇る烟りの神キルウルウグングは恨まれなかった。
そもそも神々は二柱のやり過ぎをうとんでいたのだ。
分け御霊から光明神と暗黒神は魂だけ復活し、精神体としてのみ活動するようになった。
奇蹟の乱発を控えて、お告げを活動の基本に置いたのだった。
百年続いた戦争は“神魔大戦”と呼ばれるようになり、ここに終わった。
光明神と暗黒神の勢力は著しく衰退した。
戦争に巻き込まれた国々は押しつけられた信仰を捨て、無駄に血を流させられた幻獣は「唯一絶対神(笑)」、「死んだぜ!あれで恐怖の大王だってよ」と口々にあざけった。
神々の威光は色あせて。
のし歩くことをやめて地上より去った。
ドラゴン達は今更ながらに孤高の八龍を敬った。
戦争終結の鍵となったユニコーンと精霊は森の再生に向かう。天龍への感謝を歌いながら。
そして神々は長くうつむく羽目に陥った……
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