<<第86話までのネタバレを含みます>>

第7話:世界観の概要:『人化♀したドラゴンが遊びに来るんだよ』

久々に『人化♀したドラゴンが遊びに来るんだよ_〜暁光帝、降りる〜』の設定資料を更新します。

ここから第86話までのネタバレを含む世界観&キャラクターの設定を紹介します。


執筆中、固有名詞や特殊な単位などの増加を避けるよう心がけているんですが…どうしてもキャラは増えてしまいますし、異世界ですから特殊な単位が増えてしまいますね。


さて、こちらの世界設定について。

よろしければ皆さんの作品でも使ってやってください。

その際、「『人化♀したドラゴンが遊びに来るんだよ_〜暁光帝、降りる〜』世界観の一部を使ったよ」的なことを一言、明記していただければありがたい。

もとより、小生が著作権云々を言い立てることはやりたくありませんのでご利用いただければ幸いであります。

ひとつ、よしなに。


本編はこちら〜>https://kakuyomu.jp/works/1177354055528844202

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本日2021年12月24日、“文字”の項目にいろいろ追加させていただきました(汗)

だいぶ、足りないことがありましたので。

まぁ、本編に即、関わることではないんですが(^_^;)

こういうの、気になっちゃうとどうにもならないんですよね〜

以上、楽しんでいただければ望外の喜びであります☆

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<<世界観の概要:『人化♀したドラゴンが遊びに来るんだよ』>>







0,基本的な概要 2


1,基本的な世界観 4


<<技術水準>> 6

 ・化学 7

 ・度量衡 7

 ・経済 8

 ・通貨 8

 ・建築土木 8

 ・食器 9

 ・食べ物 9

 ・数学 9

 ・文字 10

  <ドラゴンシンボルと竜仮名> 11

  <ハルピュイア文字> 12

  <古エルフ文字> 13

  <ミュルミドーン文字> 14

  <リザードマン文字> 15

  <人類共通文字> 15

 ・言語 17

 ・文明国と非文明国 18

 ・通信 18

 ・情報 18

 ・著作権 19

 ・個人情報保護 19

 ・図書館 19

 ・医療 19

 ・移動 20

 ・動力 20

 ・出産 21

 ・婚姻制度 21

 ・教育 23

 ・建築 23

  <耐龍建築> 23

<<宗教と各国の勢力>> 24

 ・幻獣の問題 24

 ・国家体制 24

 ・人権意識 25

 ・身分制度 25

 ・宗教 26

 ・軍事 26

 ・兵科 27

 ・軍艦 27

<<ダンジョン>> 27









0,基本的な概要

・惑星ヴォイデは地球によく似ている。

 ○地軸は惑星公転面の法線に対して23.4°傾いている。

 ○1日は24時間、一年は365.25日である。

 ○重力加速度の平均値は9.81m/sec²である。

 ○エレーウォン大陸は最大である。

 ○生物は全て地球のそれと並行進化している。

  ■地球で絶滅した動物が健在である。

  ■ドードー鳥やニホンオオカミも元気☆

・幻獣がいる。

・最初に孤高の八龍がいた。

・神々は人間の祈りを魔力に変えて活動する精霊の一種“神霊”である。

 ○各地に文明ができると宗教が生まれて神霊は“神々”になった。

 ○神々は肉体を持ち、地上を闊歩して、自ら布教に務めた。

・神魔大戦が勃発した。

・天龍アストライアーにより神殺しが成し遂げられた。

 ○暗黒神と光明神が死んで肉体と魂を失った。

 ○恐れおののいた神々は地上を去った。

 ○ゲローマーとブジュッミは精神体のみ復活した。

 ○神々は直に干渉することをあきらめてお告げという形で関わるようになった。

 ○神が実在するので宗教は分派しづらい。

 ○『人間に大規模かつ計画的に干渉してはならない』

・天龍アストライアーは幻獣と交流がある。

・天龍アストライアーは人語を解する。

・天龍アストライアーは魔力の込められない声が聞こえない。

・天龍アストライアーは“暁光帝”なる言葉を知らない。

・緑龍テアルと白龍ノヴァニクスが語り合って農業に革命を起こす。

・盛り上がったついでに人間へ農業革命を広める。

・北方の開発が進み、食糧増産が成って、人口が増大した。

・これを以て“中世”が始まる。

・地下迷宮“ダンジョン”が神々によって造られた。

 ○人間に直に干渉できない神々からのサービスである。

 ○不思議な現象はダンジョンコアによる。

 ○偽物の幻獣が出没し、倒すとアイテムが得られる。

 ○宝箱があって珍品が納められている。

 ○不定期に偽モンスターが異常に発生して氾濫する。

・緑龍テアルが幻影魔法の一種“人化の術”を開発する。

・緑龍テアルが『世界を横から観る』楽しみに気づく。

・天龍アストライアー、地上に降りる。




1,基本的な世界観

 地球によく似た惑星ヴォイデ、各地に文明が興り、宗教が発生すると神々は地上を闊歩して自ら布教に努めていた。

 当時、その最大のエレーウォン大陸で光明神と暗黒神が支持を競って互いの信者達を戦わせていた。

 光明神は天使を、暗黒神は悪魔を遣わせて人間に布教した。個人の武力を尊ぶ暗黒神の教義により、優れた信者はエリート信者“魔族”として登用された。光明神の教義は『戦いは数だよ、兄貴』だったので表向き特別にエリート信者を作らなかった。

 戦争は激化して、多くの美しい都市や豊かな耕地、牧場が破壊された。

 孤高の八龍はそのさまを苦々しく見ていたが、神々の諍いに口を出すことは差し控えた。諍いに介入するには八龍の相互協力が必要になると思われたため、孤高を旨とする彼らは嫌がったのである。

 しかし、戦争が幻獣の生活をも脅かし始めるとそうも言っていられなくなった。屍導師や吸血鬼、キュークロプス、キマイラ、マンティコアらが陳情に訪れ、八龍も動揺する。そしてユニコーンの群生地が焼かれた事でついに八龍が壱、天龍アストライアーが怒った。

 激昂したアストライアーはいきなり万魔殿に乗り込んで暗黒神を殺し、返す刀で光明神も殺めた。

 他の七龍に相談することなく行われた“神殺し”の偉業である。滅ぼされた二柱は酷く怯え、アストライアーの意向を鑑みてそのまま復活することをあきらめた。

 他の七龍もまた大いに困惑したが、相次ぐ陳情に疲れていた事、アストライアーの実力を思い知らされた事などに満足し、特に話す事はしなかった。『怒ったアストライアー、本気で怖ぇ』と考えたくらいである。

 滅ぼされた二柱であるが、分霊(わけみたま)により復活したものの、その後は大いに自重。配下の天使や悪魔、魔族に語りかけて信者を増やすだけにしたのである。

 他の神々もアストライアーを恐れて地上を闊歩することをやめて神界リゼルザインドへ引きこもった。

 神々は人間への直接干渉を避け、宗教は神々のお告げに従うようになる。

 それから長い年月が経った。

 孤高の八龍は孤高のまま暮らしていた。



<天龍アストライアー>

天空を住居として世界中を舞う。高高度から気象や地上を観察して楽しんでいた。他のドラゴンと違って巣を作らない。


<金龍オーラム>

博打好き。高山の頂でアージェンタと乳繰り合う。


<銀龍アージェンタ>

金龍に限定して世話好き。高山の頂でオーラムと乳繰り合う。


<赤龍ルブルム>

活火山の中腹で財宝を集めて暮らす。盗品も扱うが、理のある返品には応じる。乱暴者で怒りっぽい。ノヴァニクスが好き。


<青龍カエルレア>

雷雲に棲み、各地の気象を研究する。お気に入りの雲に巣を作って暮らしている。


<緑龍テアル>

南国の湖で藻にまみれて生物を研究する。とりわけ微生物が好き。


<白龍ノヴァニクス>

雪原に棲み、冷気を広げて影響を観察する。優しくて思いやりがあり、人を立てて自分は控えめ。討伐軍を見ると逃げる。


<黒龍テネブリス>

強酸性湖沼に棲み、魔法を研究する。精神を操ったり、物質を腐食させる暗黒魔法にとりわけ強い関心を持つ。ノヴァニクスが好き。



 ある時、珍しくテアルとノヴァニクスが邂逅してそれぞれの研究成果を比較検討した結果、寒冷地の耕作や重量有輪犂、三圃式農業が生まれてしまった。しかも、気をよくした2頭はこの新技術を人里に伝搬させてしまう。

 その結果、エレーウォン大陸で人口が増加し、砂漠や寒冷地の開発も進んだ。

 これに刺激された光明神と暗黒神が信者達を扇動し、再び、かつてのような争いが起き始めてしまった。同時に人里の文化も発達して、町は大いに華やいだ。

 孤高の八龍も刺激を避けられ得ず、関心を呼び起こされる。

 そして…ついに天龍アストライアーも地上に降りてしまった。







<<技術水準>>

 国や地方によって差が大きい。

 ゴブリン族の集落は狩猟で食料を採り、竪穴式住居に住む。洞窟を利用する集落も多い。道具はほとんど石器である。

 オーク族はそれよりも規模が大きいものの、技術水準はあまり変わらず、鉄器は交易によって得る。

 逆にエルフ族やマタンゴ族は高い水準の魔法文化を持ち、医療技術も進歩していてけが人や病人が少ない。

 ハルピュイア族にもなれば移動も輸送も飛空船が利用される。



・化学

 とにかく遅れている。とりわけ分離精製の技術が未発達で酒造や冶金の一部くらいしかできない。

 石油石炭も天然ガスなどの化石エネルギーも存在は知られているが原油を生成できないので利用できない。

 オルジア帝国の切り札であるオルジアの火もたまたま純度の高い油が採れたから作れただけのこと。

 錆びない鉄、“不銹鋼ステンレス”はドワーフの特産品だが、錆びるけれど安い普通の鉄のほうが需要がある。



・度量衡

 ○長さ…1[キュビット]=0.44[m]

 ○重さ…1[シェケル]=0.013[kg]

 ○体積…1[エパ]=0.023[m3]

 ○時間…1[ろうそく]=1[時間]

 ○魔気…1[ゲーデル]=10[マール]



・経済

 貨幣経済は都市と大きな街のみである。

 小さい村では通貨が使えない。物々交換が主流である。地域によるが閉鎖的であることもあり、近づくだけで威嚇されたり、害される恐れもある。逆に開放的な村落では稀人として珍重され、もてなされることもある。概して宿屋のたぐいはなく、労役を提供することで快く泊めてくれることもある。

 家内制手工業すらなく、鉱山も個人が採掘して鍛冶屋に流すていどの流通システムである。



・通貨

 金貨1枚が現代日本の8万円くらいに相当するが、文化の異なる社会の通貨を安易に比較することは避けるべき。

 だいたい、金貨1枚で平民の家族(祖父母+父母+子供2人)が1ヶ月生活できる。貨幣経済そのものがそこまで発展していないので物々交換や親戚や友人同士の融通などを含めると節約すれば2ヶ月だって余裕で暮らせる。

 おおよその目安として…

金貨1枚:80000円

銀貨1枚:8000円

銅貨1枚:800円

貝貨1枚:80円

…である。



・建築土木

 漆喰やモルタルは利用されている。基本的には木造モルタル。鉄の生産量が低いこともあって、鉄筋コンクリートは利用されていない。

 一部がアスファルト舗装されているものの、基本的に石畳の街道である。

 街路も一部の大通りが石畳で他のほとんどは舗装されていない剥き出しの土である。

 窓は木戸がほとんどで窓ガラスは嵌まっていない。王城も同じ。規模の大きい教会や神殿、一部の富裕層にのみガラスが利用されている。



・食器

 ガラス製品はあるが、耐熱ガラスではなく脆い。

 陶器は高価で、自由民は木皿を使う。

 富裕層は銀食器を好む。銀食器のサビ具合で家の繁栄が吟味されるので執事や女中頭が神経質になる。

 富裕層が銀食器を好むのは毒に対して銀が反応することが珍重されることでもある。



・食べ物

 主食は小麦で平らで丸い発酵パンが好まれる。

 肉類は豚や鶏、ガチョウ、七面鳥、食用蛙が人気。牛品種改良が進んでおらず、肉が固いものが多い。

 港湾都市なので魚も多く食べられている。

 蜂蜜酒、ワイン、エールが飲まれる。蒸留酒はジンが人気。

 店舗とは別に屋台が多い。



・数学

 0と円周率は発見されている。

 ネイピア数は文明の発達したハルピュイア族の国では使われている。

 文明国では計算尺が利用されている。

 デカルト二次元直交座標による“グラフ”の概念あり。

 会計計算などは計算補助具(ラブドロジー)が用いられる。

 ハルピュイア族を除いて統計学は発達しておらず、資料の統計的な処理もされていない。

 一般教養として貴族や神職より上の身分は算術を学ぶ。

 非市民と教養のない市民の多くはまともに数も数えられず、『1,2,たくさん』と3以上の数を“たくさん”と数える。



・文字

 ハルピュイア文字がもっとも権威ある文字である。

 国際的な条約はハルピュイア文字で表現され、それぞれ母国語のコピーを取る形で宣言される。

 各国の公文書もそれよりも一段下がるリザードマン文字で表現される。

 また論文や聖典、数学など権威ある文書はすべからくリザードマン語とリザードマン文字で表現される。これはそういった文書がリザードマン文明で育まれたからであり、平易な人類共通語にはそれらを記述するための専門用語が存在しないため。

 また、市民の結婚などは教会や神殿が、住居の登記簿などの公文書も権威付のため、リザードマン文字で記録される。

 人類共通文字が商取引などの私文書に使われる。法律上の契約なども大部分が人類共通文字で記録される。

 王族、上級貴族、一部の学者はハルピュイア文字が使える。

 公職に就く者、法律家、会計士、貴族や神職はリザードマン文字まで使える。

 文字の発達は以下の通り。

        ドラゴンシンボル(表意文字)

           ↓

          竜仮名(表音文字)+ドラゴンシンボル

           ↓

ミュルミドーン文字←ハルピュイア文字→古エルフ文字

           ↓        ↓

          リザードマン文字 エルフ文字

           ↓

          人類共通文字


<ドラゴンシンボルと竜仮名>

 最初に孤高の八龍オクトソラスが1頭、黒龍テネブリスが自分が開発した魔法の魔術式を記録すべく、表意文字“ドラゴンシンボル”を開発した。

 この偉業によって新しい魔法の開発と伝播が容易になり、ドラゴン達から大いに称賛された。

 けれども、ドラゴンシンボルは魔術式を記述することだけを目的とした記号だったので魔法を組むことには向いていたが、日常会話や叙情的な記述には向いていなかった。そこで同じ孤高の八龍オクトソラスが1頭、白竜ノヴァニクスが古龍語の発音に基づいて表音文字“竜仮名りゅうがな”を開発した。

 すると、孤高の八龍オクトソラスの間に文字による遊びが流行した。8頭は思い思いに詩歌を描き、歌合戦を繰り返して大いに楽しんだ。

 その結果、古龍語の記述方式は表意文字のドラゴンシンボルと表音文字の竜仮名が混在する、とてつもなく難解なシステムになってしまった。

 しかし、竜種は不老だし、ついでに言えば強大なので死ぬこともほとんどないので実質的に不死でもある。学ぶ時間はたっぷり時間があった。

 たちまち他のドラゴン達も孤高の八龍オクトソラスならって文字で遊び始めた。もともと知能の高いドラゴン達は大いに楽しみ、絢爛たる文化を発展させた。発展は止まらず、更に他の竜種が加わった。ドレイク、翼飛竜ワイバーン妖蛇ワイルム海大蛇シーサーペント多頭大蛇ヒュドラー竜翼人ドラゴニュート双頭毒蛇アンフィスバエナ蠍鷲蛇ムシュフシュが遊びに遊んだ。

 その結果、物語や随筆、論文、それらについて評論なども生まれた。

 これに気を良くした孤高の八龍オクトソラスが1頭、天竜アストライアーが作品を記録するための魔法と媒体を開発することは当然の気血であった。

 そして、世界の至宝“龍の大図書館ビブリオテカドラコヌム”が開設されたのであった。

 ここに豪華絢爛けんらんたる竜種の文化が花開いたのだった。


<ハルピュイア文字>

 文字の遊びが円熟の域に達すると暇な孤高の八龍オクトソラス天翼人ハルピュイアに文字と技術、そして、魔法を教えた。

 不老種のハルピュイアは長い時間を掛けて難解なそれらを学び、修得した。魔法もドラゴンシンボルによる正規の魔術式を理解し、実践した。

 魔法とドラゴンの技術にいたく感激したハルピュア達は社会を発展させて農業を始めた。生活が安定し、余暇が生まれ、さらに生産性が高まり、様々な研究が進んだ。この変化によって古ハルピュイア文明が興った。

 気を良くしたハルピュイア達は茸人マタンゴ妖精人エルフに魔法を下賜した。マタンゴも必死で魔法を修得したものの、あまりに難解すぎて一部の株が何とか使える程度にしか修められなかった。エルフに至っては魔法の使用者になれたものの数が少なすぎて、少し派手な手品くらいにしか思ってもらえなかった。

 しかし、発音の時点でドラゴンシンボルも竜仮名もあまりに違いすぎてハルピュイア自身も困惑していた。それでもドラゴンを崇拝するハルピュア達はド根性で修得したが。

 この問題を解決すべく、竜仮名を参考にハルピュイア族は自分達の発音に合う表音文字を、“ハルピュイア文字”を生み出した。

 以後、ハルピュイア族は他の人種に文字を教える場合、このハルピュイア文字を教えることにした。

 当然、ドラゴンシンボルで記述された魔法の修得難易度を下げるべく、ハルピュイア文字で翻訳することが試みられた。

 けれども、ドラゴンを崇拝する当のハルピュイア達が堕落であると非難したので試みは失敗した。

 ハルピュイア達は今でもドラゴンシンボルで記述される正規の魔法を利用している。

 そして、ハルピュイア達は自分達の文字で自分達のことを記述するようになった。

 歴史の始まりである。

 これで“有史以前”という時代が終わり、“有史以後”になったわけであるが、人間基準の概念である。竜種などの幻獣からすればそのずっと前から記録が残されていたわけだから。

 しかし、これで人間はドラゴンから独立して自分達の道を切り拓くようになったのだ。

 そして、明記された法律と公文書の命令によって国家が運営されるようになり、最古の人間国家“ハルピュイア女王国”が誕生した。

 これを以て古ハルピュイア文明は終了し、新ハルピュイア文明に移行したのである。

 新ハルピュイア文明は様々な研究を行い、神々と対話して聖句や神話を聞いて、国家を円滑に運営するための法体系を組んだ。そして、それら全てをハルピュイア文字で記録していったのである。

 しかし、マタンゴやエルフにとってハルピュイア文字もまた難解すぎて学ぶことが難しく、国際的な条約くらいにしか用いられなかった。

 また、ハルピュイア達は龍の大図書館ビブリオテカドラコヌムについて知らされはしたものの、恐れ多いと探求しなかった。現在でも一般人レベルで知られている知識ではあるが、龍の大図書館ビブリオテカドラコヌムを探すハルピュイアはいない。


<古エルフ文字>

 ハルピュイア族からマタンゴ族と闇妖精人ダークエルフ族に魔法が下賜されたものの、あまりに難解なドラゴンシンボルによる魔術式が当惑されてしまっていた。

 そもそも、ヒューマノイド型の人間は古龍語を正確に発音できない。身体の大きさも声帯の構造も竜種と人間では違いすぎるのだ。

 その上、表意文字のドラゴンシンボルと表音文字の竜仮名を組み合わせて記述する古龍語の表記方式はあまりに複雑すぎた。

 そして、ハルピュイア文字もまた難解に過ぎる。ドラゴンを崇拝するあまり、ハルピュイア語の記述方式は表意文字のドラゴンシンボルが普通に混ざっていて、ハルピュイア達はそれを無理やり人間の声帯で発音するというアクロバティックな方法を採用していたのだ。

 そこでハルピュイアの表記システムからドラゴンシンボルを廃して、古エルフ語の表音文字である古エルフ文字だけで書く、全く新しい記述方式が開発された。

 そして、超難解な魔法の修得を緩和するべく、利用頻度の多いドラゴンシンボルを古エルフ語に翻訳する作業が行われた。これによって正規のドラゴンシンボル魔術式を崩して古エルフ文字だけで記述される簡易な魔術式に置き換える試みが行われて、一応の成功が認められた。

 これで一気に魔法の修得の難易度が下がり、多くのエルフ族が新方式の魔法を歓迎した。同じく正規の魔法の修得に苦戦していたマタンゴ族とダークエルフ族もこれにならい、新方式の魔法が広まった。

 以降、魔法はこの古エルフ文字で記述される方式が主流となった。

 しかし、この新しい方式はドラゴンシンボルを無理やり古エルフ語に翻訳しているので力率が低下してしまい、投入した魔力が大きければ大きいほど効果が下がる欠点があった。この問題が見過ごされたのは特上級メダマグ最大級ゲルグンドなどの強力な魔法が使われる機会が当時、あまりなかったからである。

 魔法について桁外れに高い能力を持つハルピュイア族だけがこの問題を重く見て新方式に移行しなかった。


<ミュルミドーン文字>

 次にハルピュイア族が接触した蟻甲人ミュルミドーン族は優秀であったが、口で呼吸しないのでその言葉は異質であった。“声”は大顎や第1肢を擦り合わせたり、叩いたりする音でしかなかったのだ。ハルピュイア文字とハルピュイア族の技術をたまわったミュルミドーン族だったが、これでは使えないと困惑する。

 そこで彼らは自分達の発音に即した表音文字“ミュルミドーン文字”を開発した。

 そして、ハルピュイア族はミュルミドーン族にドラゴンシンボルによって記述される正規の魔法を下賜するも失敗。ミュルミドーン族はあまりの高難度に習得できなかった。

 そこでエルフ族が独自のイニシアティブを発揮して、ミュルミドーン族に古エルフ文字で記述される平易な魔法を下賜した。すると、ミュルミドーン族は古エルフ文字をミュルミドーン文字に翻訳して自分達のための魔法を開発した。

 この成功に気を良くしたエルフ達が他の様々な人種に古エルフ語の魔法を下賜した。


<リザードマン文字>

 ハルピュイア族は大陸中央で活躍するリザードマン族にも注目した。

 そこで文字と技術を伝えてみるも失敗。発音と難易度の問題からリザードマンはハルピュイア文字を習得はしても上手く使いこなせず。自分達の発音に合わせてハルピュイア文字を改良、表音文字であるリザードマン文字による記述方式を開発する。

 魔法についてはその後、エルフから古エルフ語で記述された平易な魔法を下賜された。なかなか馴染みづらい古エルフ語であったが、ハルピュイア語の難しさに比べれば何ということもない。賢いリザードマン達は古エルフ語の魔法を行使できるようになった。

 その頃、多くの竜種が人間と関わるようになっていたので人間と交流するための手段が求められた。そこで天竜アストライアーがドラゴンと人間の間を仲介する龍のドラコ巫女シビュラを生み出す魔法“乙女の竜巫女化ドラコシビュリファイ”を開発した。

 おかげで多くの竜種が人間と契約して自分の龍のドラコ巫女シビュラを生み出した。

 そうして生まれた1人が竜皇后ヴィーオヴィーオである。彼女は地竜カザラダニヴァインズがリザードマン族と付き合うために龍のドラコ巫女シビュラになったのだ。

 人間好きの温和な地竜カザラダニヴァインズはリザードマン族と上手く付き合って、たいへんありがたがられ、やがて一大勢力を率いるようになった。それはどんどん成長し、ついに大陸中央の広大な版図を支配するフキャーエ竜帝国が興ったのである。

 幻獣である地竜カザラダニヴァインズを“竜帝”として戴き、繁栄するフキャーエ竜帝国は立派であると認められ、ハルピュイア女王国から直々に魔法が下賜された。しかし、やはり正規の魔法はあまりの難解すぎてリザードマン達は習得できず。エルフ族との交流で得た古エルフ語の魔法を使い続けた。

 ヒューマノイド型でないリザードマン達だが、今日に至っても不得手な古エルフ語の魔法を使い続けている。


<人類共通文字>

 ハルピュイア女王国に認められたフキャーエ竜帝国は大いに発展して大陸中央に広大な版図を得る。そして、国威を示すため、半魚人マーフォーク族、小人ドワーフ族、童人ホビット族、巨人パタゴン族、ヒト族、獣人族、他の人種に文字と技術を伝えやった。

 更に根気よく技術指導して、ちゃっかり自分のものにしていた古エルフ語の魔法の下賜も果たしてやった。

 マーフォーク族、ドワーフ族、ホビット族、パタゴン族、ヒト族、獣人族は大いに感謝して、それらの国家はリザードマン文化で運営されることになった。為政者はリザードマン語を喋り、公文書はリザードマン文字で記述されるようになったのである。

 しかし、ここでも発音上の問題が残ってしまう。

 為政者が気取ってリザードマン語を喋っても、役人が権威付けのためにリザードマン文字の公文書を書いても、被支配者である肝心の一般国民はリザードマン文化が馴染まない。

 リザードマン文字はリザードマンの発音に合わせて設計された表音文字である。同歯性で牙しかない口と器用な舌を持つリザードマンの言葉はヒューマノイド型の人種に発音できない音を多く持ち、その分、リザードマン文字も複雑だった。

 そこでメヘルガル亜大陸に興ったヒト族と獣人族の共生国家“新メヘルガル王国”が率先して文字を研究しだしたのである。そして、幾度も工夫に工夫を重ね、より上手くヒトの発音を表現するための表音文字“人類共通文字”を開発したのだ。

 これは平易で、習得しやすかったので大いに広まった。

 最初はドワーフ族やホビット族がこれに倣い、教育水準の向上が見られた。すると、交易商人や大工が契約書の記述に人類共通文字を使うようになって、国際的な影響を及ぼした。

 交易や契約のために使いやすくて学びやすい文字が望まれていたこともあって獣人族やパタゴン族も人類共通文字に飛びついた。

 取り扱いやすい文字は共通認識を形成することにも役立ち、国際的な取引にもしばしば人類共通文字が出張ってくる。こうなると留めるものがなくなり、エルフ族やダークエルフ族、そして、マタンゴ族がならい、他の人種と交流したがるミュルミドーン族が後に続いた。

 広まるに連れて、ハルピュイア族の中ですらもたしなみとして人類共通文字を使う者が現れた。

 学校などの教育システムがなかった時代、子供でも容易に使える文字であることが重要だったのである。それこそが不老種であるハルピュイア族が気づかなった利便性であった。

 この成功に気を良くした新メヘルガル王国はハルピュイア女王国やフキャーエ竜帝国の真似を始めた。侏儒ゴブリン族、豚人オーク族、犬人コボルト族にも人類共通語を教え、定住化を促し、文明化を推し進めたのである。そして、彼ら、野蛮人に魔法の下賜もしてやった。

 しかし、そのせいでヒトの魔法を上回るオーク魔導師やゴブリン魔導師が現れ、手痛いしっぺ返しを食らう羽目になった。そして、繁殖力の高いオークやゴブリンは数を増やしてヒトや獣人の勢力が押され気味になっていった。とりわけ、ゴブリンはアールヴ大森林の大虐殺もあってヒトに敵対的になってしまい、それは文明化の負の側面になった。

 現在では各国の平民の間で人類共通文字が使われている。

 とりわけ、製紙業が盛んになって小説などの読み物が増えてくるとその表現は人類共通文字の独壇場になった。小説の商業化はより多くの人々に読まれることに直結するからである。

 現在、聖書や神典を人類共通文字で記述するべきか、否かで宗教界が揺れている。宗教界とは別に神々が実在して日々、様々な神託が降ろされている状況でそれをどう記述すべきなのか、議論がかまびすしい。

 神々は好き放題に喋った言葉を本にして流し、影響力を広げたい。

 宗教界の人間達は神々の言葉から矛盾を見出されると信者の信仰心が揺らぐから記録するのはやめて欲しい。

 難しい問題である。

 大陸中に広まった人類共通文字であるが、文化水準が高い国はともかく、普通の国では識字率そのものが低い。商人や役人など仕事で文字を使う必要のある人々の間に利用が限られている。

 また、ハルピュイア族はかたくなに利用しようとしない。これは国家としてだけでなく国民自身もそういう傾向にあり、表現豊かなハルピュイア文字による記述方式を好んでいる。人気の小説などもハルピュイア語に翻訳されたものしか読まれない。

 そして、魔法についても人類共通文字の出番はなかった。ドラゴンシンボルには魔術式を構築し、呪文を表現する、特殊な力がある。古エルフ文字とミュルミドーン文字にも不完全ながらそういう特殊な力がある。けれども、人類共通文字は学習のしやすさを第一義に置いたため、そういう特殊な力が込められることはなかったのである。

 だから、ミュルミドーンとハルピュイア以外は古エルフ文字の魔法を使い、ミュルミドーンだけはミュルミドーン文字の魔法を使う。



・言語

 各国の支配階級はリザードマン語を話し、日常会話もリザードマン語である。

 平民達は母国語で話す。

 公文書はリザードマン語をリザードマン文字で描く形で表現され、権威を与えられる。

 告示は母国語を人類共通文字母国文字で表現する形式でリザードマン文字の記述に並列して表記される。

 商取引は各国の母国語、または人類共通語と人類共通文字で記述される。



・文明国と非文明国

 自国の歴史を言葉と文字で記述できる国を文明国と言う。法律を作って公文書に記す。政府が法律に従い、告示を自国の文字で表現できる。

 対して、政府が法律ではなくエライ人の言葉に従う。公文書を持たず、歴史は口伝、告示も口頭のみの国を非文明国という。

 オーク族の多く、ゴブリン族の殆どが非文明国である。パタゴン族も怪しいが、ホビット族が補佐している。



・通信

 平民は手紙、主に冒険者が配達する。伝書鳩による配達は高額である。エリートは光魔法による光通信で情報のやり取りを行い、短距離であれば風魔法により通話できる。



・情報

 紙媒体が主である。情報の記録も基本的に紙で文字表現。活版印刷は土魔術師が鉛合金を加工して行う。肝心の紙が少し高価であるため、活字の本は高い。読み物は大切にされて回し読みされる。

 高密度の記録媒体として魔石があるが、高価。扱いがデリケートで強い魔気力線に晒すと情報が破損する。映像データなどはこの魔石に保存する必要がある。読み取るにも書き込むにも光魔法が必要。

 マーフォーク族の使用する“紙”は特殊であり、ある生物の分泌物を平たく固めたもので耐水性が強い。



・著作権

 そんな概念は存在しない。

 エルフやドワーフ、ハルピュイアなどの発達した文明国のみが尊重してくれる。



・個人情報保護

 そんな概念は存在しない。

 うるさく文句を言っても『ヒトの口に戸は立てられない』とか言われて無視されたり、『無茶を言うな』と逆に怒られる。



・図書館

 広く知らせたいことを公開する国営の図書館がある。利用は無料。これに対して富裕層が自分が売りたい情報を展示する図書館もあり、こちらは有料。稀少な魔法技術などは後者が主である。



・医療

 貧者は神殿や教会が運営する無料の施療院へ、富者は有料の高級治療院へ行く。

 多くの負傷は回復魔法により治療できるが、部位欠損を含む重症は聖魔法でなければ治療できない。

 感染症は回復魔法による治療が望ましいが、重篤化している場合は聖魔法でなければ治せない。しかし、聖魔法では免疫力がつかず、病原体と毒素の排除のみで再感染の虞が残る。

 リウマチなどの自己免疫疾患は回復魔法の独壇場であるが、術者の技量に依存するところが大きい。

 アレルギーは富裕層に見られるため、贅沢病と考えられているが、極めて治療が難しく、これも回復魔法の技量が高い術者にしか治せない。



・移動

 陸運は馬車が主流である。馬車は大型化が著しい。

 海運は船でこちらも大型化が進んでいる。

 空運は厳しく限定される。飛空船はハルピュイア国家のみ。ヒポグリフやワイバーンによる運搬は竜帝国に代表されるリザードマン国家のみ。



・動力

 風力、水力が主流。海運に用いられる大型船は帆船である。もっとも風魔導師が風を操るので操船技術はすこぶる高く、また風上に進むこともできる。

 通常の馬車は馬が牽引するが、大型馬車は召喚魔導師が操る大型の魔物が牽引する。

 ハルピュイア族の場合、飛空船を飛ばす強力な魔鳩炉が開発されている。魔鳩炉は鳩の羽原理から魔力を引き出す装置であり、ハルピュイアしか造れない。小型で低性能の魔鳩炉なら輸出用として他の人種に降ろすこともある。



・出産

 享楽神オヨシノイドの暗躍により、マジックアイテム“魔法の子宮”がもたらされ、同性間でも子供ができるようになった。

 おかげで、不妊の夫婦でも子供を儲けられるようになって好評。

 ただし、享楽神オヨシノイドに供物を捧げねばならない。

 魔法の子宮は享楽神オヨシノイドの教団が管理している。

 これに光明教団ブジュミンドは表向き、『自然と神に挑む愚行である』と反対しているものの、高位の司教らが利用している。

 当然、異民族間でも問題なく子供を儲けられるが、異人種感では不可能。ヒトとエルフのハーフエルフとか、ヒトとドワーフのハーフドワーフなどの合の子は無理。



・婚姻制度

 享楽神オヨシノイドが面白がって“魔法の子宮”を開発した。

 一般的ではないものの、魔法の子宮のおかげで『同性愛でも子供はできる』という噂が広まり、一部の国々で同性婚が法制度に組み込まれるようになった。

 光明教団の勢力が強い地域では同性愛者が迫害されている。また、結婚は神の御前での約束であるから、基本的に離婚が認められない。一夫一妻制が厳しく課せられており、浮気は姦淫の罪となるから厳しく罰せられ、地位も名誉も失う。それは王族、貴族、神職、平民の別はない。国王であっても即座に王位を剥奪される重罪である。

 したがって、ヒト国家には“側室”や“後宮”のたぐいが存在しない。

 もっとも、自由民は戸籍がないのでそこまで厳しくはない。しかし、自由民であっても浮気が姦淫の罪であることは変わらず、バレれば石打ちの刑に処される。

 暗黒教団の勢力が強い地域では同性愛も認められている。しかし、婚姻制はほぼ同じで一夫一妻制が尊ばれる。同性愛、異性愛の別なく、浮気は姦淫の罪に当たる。

 それほどまでに婚姻は重い。

 その他、豊穣神や享楽神の勢力が強い地域では婚姻制度はそれほど厳しいものではなく、一夫多妻制や多夫一妻制もあり得る。

 気をつけるべきは光明教団や暗黒卿団の勢いが強い地域では不倫は大罪であり、バレれば権力者と言えども地位や名誉を失う厳罰が課せられることだ。

 つまり、国王はおろか、魔王であっても不倫の露見は破滅を意味するのである。

 具体的には……

・瓦礫街リュッダ:光明教団(一夫一妻制+同性愛は禁忌)

・ペッリャ王国:光明教団(一夫一妻制+同性愛は禁忌)

・ポイニクス連合:博打の神ズバッド(主に一夫一妻制+同性愛に寛容)

・ヴェズ朝オルジア帝国:豊穣神マァルト(一夫多妻制+同性愛は禁忌)

・偉大なるプガギューの国:暗黒教団(一夫多妻制+♂のみ同性愛を推奨)

・妖精郷エルファム:世界樹信仰+光明教団(一夫一妻制+同性愛は微妙)

・神聖ブジュミンド帝国:光明教団(一夫一妻制+同性愛は禁忌)

・ゲロマリス魔界:暗黒教団(一夫一妻制+同性愛も法的に制度化されている)

・オニザク連盟:多神教(主に一夫一妻制+同性愛に寛容)

・エーリュシオン:カエルレア信仰(婚姻に制限がない)

・フォルミカ大帝国:信教の自由(多夫一妻制+同性愛も自由)

・南ゴブリン王国:暗黒教団(矮雄により婚姻制度なし)

・コボルト傀儡国:暗黒教団(一夫一妻制+同性愛に寛容)

・パタゴン&ホビット共生国:信教の自由(主に一夫一妻制+同性愛に寛容)

 オーク♂は矮雄を起こしており、肉体は華奢で小さく、筋肉が発達していない。外性器と配偶子が♂の特徴を持つだけである。また、髪を長く伸ばす風習を強制され、きらびやかで豪華な衣装も着せられているので一見するとヒト族の女性にしか見えない。ヒト族とは全く別の生物なので、ほとんど老化せず、死ぬまで若い姿のままで過ごす。

 しかし、それは死ぬまでオーク♀(筋肉女?)の所有物であることを示すので他種族が考えるような女護島ではない。

 オーク♂は華奢で可憐なのでたくましいオーク♀どもから同性愛が奨励されることが多い。



・教育

 ヒト族の場合、識字率は平民が50%ほどでエリートは90%以上。数学については幾何学がそれぞれ10%と70%、算術がそれぞれ20%と90%ていどである。

 エルフなどの種族は識字率、数学ともに100%である。

 法学、医学、哲学を教える大学がある。理学、数学、魔学を教える大学は別で軍学校であり、入学審査が厳しい。主として首都に開かれている。

 武術や魔法を教える実学メインの予備校は大きな街にあり、富裕層の私塾として人気である。

 初歩的な読み書きと算術を教える私塾は町村レベルで存在する。読み書き計算ができる者は一族に一人は欲しいのでこちらも盛況である。



・建築

 文明国はそれぞれ適した素材を土魔法で操って建築する。

 非文明国は土魔法が発達していない上に建築工学も発達していないので竪穴式住居だったり、洞窟をそのまま利用していたりする。よくて土や石を積み上げた家だが、それも手作業で築いている。



○耐龍建築

 ドラゴンの襲撃に備えた建築方式で主に王宮や有力な貴族の屋敷に用いられる。

 この場合の“ドラゴン”とは暁光帝のことであることが多いので、耐える方向には向いていない。どうせ踏み潰されるのだからと住人の生命と財産を守る方向に発達した。

 暁光帝に踏まれると建築物は跡形もなく粉砕される。

 これを大前提に恐ろしいドラゴンの力から逸れて住居部分を分離、安全な場所へ投擲する仕組みである。

 アプタル朝オルジア帝国の皇宮が暁光帝に踏み潰された際、帝室御一家を救ったことで有名。






<<宗教と各国の勢力>>

・幻獣の問題

 エレーウォン大陸の各地に幻獣がいる。

 社会性に乏しい幻獣は集団であっても互いに協力したり、ボスを中心に作戦行動を取ることはない。

 しかし、幻獣は人間よりも強いことが多く、それが個体であっても群れであっても脅威である。

 脅威である幻獣に対抗するために冒険者がいる。

 幻獣は個性的だから大規模な軍隊よりも冒険者パーティーの方がうまく対処できる。

 冒険者の運用を円滑かつ適切に行うため、国際的な組織として冒険者ギルドが機能している。

 幻獣の多くは無害であるが、そばにいるだけで恐ろしいと感じられることが多い。

 人間から見た幻獣の分類を以下に記す。

 ○無害幻獣:人間に害を及ぼさない。

 ○不快幻獣:人間に不快感を与える。

 ○脅威幻獣:人間の脅威となる。

 ○美麗幻獣:人間の財物になり得る。

 街に幻獣を入れることは多くの場合、禁じられている。「暁光帝を呼ぶ」と信じられているから。


・国家体制

 多くは封建国家であり、国王は貴族の代表格でしかない。国内の各地を有力な貴族が治めており、国王の権威が国内の隅々にまで及んでいるとは言い難い。軍事も地方の有力者が個々に軍隊を持っており、国家対国家の大規模な戦争は貴族の賛同を得る必要がある。

 瓦礫街リュッダもこれに含まれ、領主である英雄ジャクソン・ビアズリー伯爵も実はかなりの権力者である。国王の権威が低いのでかなり自由に行動できるし、リュッダ軍は中央から独立した強力な軍隊だ。逆に言えば、国家の支援が得られない中で頑張っているとも言える。

 中央集権国家は竜帝国やフォルミカ大帝国、ヴェズ朝オルジア帝国が該当する。皇帝に権力が集中しており、国軍も盛んだ。地方領主の地位はあまり高くなく、皇帝の支配が国家の隅々まで及んでいる。しかし、やはり人間だから皇帝も圧倒的な独裁者というわけではなく、有力な大貴族や大商人、神職のエライヒトの話を無視できるわけではない。

 偉大なるプガギューの国など、非文明国では大酋長などのエライヒトの言葉がそのまま法律になってしまう。

 コボルト族の傀儡国家は自国で決定できずドワーフなどの決定に従う。

 パタゴン&ホビット共生国やポイニクス連合などの合議制、民主主義国家はすべての決定は議会によるので判断が遅れ気味だが、国家元首の継承に問題が起きにくい、国軍を大きくしやすいなどの利点がある。


・人権意識

 女性や子供、亜人に人権はない。

 でも、大丈夫、マイフレンド☆

 男にもヒト族にも人権なんてないから♪

 人権意識は非常に薄い。いや、無い。自由権も平等権も社会権もないし、もちろん、幸福追求権などの新しい権利は概念すらない。

 「プライヴァシー? 何、それ、美味しいの?」な世界。

 権利と義務が明文化されているのは文明国のみである。

 明記されている権利も『王様の横暴を控えさせる』ていどであり、これは貴族が王様に飲ませたものである。それでも多くの場合、政治は王権による独裁ではなく、有力者による合議制の側面も強い。

 ダヴァノハウ大陸のような非文明国家のはびこる地域は法律ですら明文化されておらず、エライヒトが恣意的に政治を執り行っている。


・身分制度

 多くの場合、神官&王侯貴族、市民、非市民、奴隷の順番に権利と義務が緩くなる。

 例えば、犯罪の通報は市民の義務だが非市民にとっては義務にならない。市内に不動産を得ることは市民の権利だが、非市民は許されない、等。

 性別を基準とした偏見や差別はなくなりつつある。

 魔法技術の発展が女性の兵役を易くさせたから。

 筋力は♂が、魔力は♀が強い傾向がある。


・宗教

 光明教団と暗黒教団が主な一神教で、信者の囲い込みによる祈りの質の強化を図っている。

 他は多神教である。一人の信者を複数の神々が共有する形になるのでそれらの神々は一神教を厚かましく思っている。

 エレーウォン大陸の各国は多くの神殿や教会を擁する多神教タイプと国教を決めて熱心に奉ずるものがある。

 かつて、“神殺し”の偉業が為される前は神々が地上をのし歩いて直に信者を導き、光明教団と暗黒教団が隆盛を極めて信仰を押し付けていたが、現在は神々が隠れて両教団もおとなしい。今のところは。


・軍事

 封建制国家は地方領主とそれが率いる傭兵が主体である。傭兵はしばしば盗賊に変わる。同じく、盗賊が傭兵になることも少なくない。

 中央集権国家には職業軍人がいて国軍が主力である。

 海軍は海賊も私掠船も国軍も盛ん。商船が武装化して私掠船になることも。漁師が勇んで海賊になることも。

 だが、しかし、戦は竜を呼ぶ。これが重大な問題である。

 大規模な戦争が起きるとドラゴンがやって来るのだ。やって来て何をするかはわからない。

 そこで、戦場予定地の周辺をあらかじめ調べることが慣例となった。

 ドラゴンが戦争抑止力になっている面もある。


・兵科

 以下の区分があるものの、魔導師化が進んでいる。

 ○歩兵:剣と槍、長槍が主武器。強化&弱化魔法も用いられる。

 ○工兵:光魔法による撹乱、土魔法による陣地の構築など。

 ○騎兵:馬に騎乗して戦う。召喚獣も利用されることがある。

 ○弓兵:魔導師化されていない遠戦の主役である。

 ○砲兵:精霊魔法による遠距離攻撃を担う、戦場の花形。

 ○輜重兵:土魔法による装輪式ゴーレムが陸送の主体を担う。

 ○竜騎士:一騎当千のチート兵種。もしいたら無敵である。


・軍艦

 積載量、航続距離に劣るが人数の多いガレー船が主力である。

 炎魔法による攻撃、水魔法による消火、同じく水流駆動など魔道士の数が勝敗を分ける。乗り込んでの白兵戦でも数は力だ。




<<ダンジョン>>

 神々が人間に与えた遊び場である。

 それは恩寵であったり、懲罰であったり様々。

・ダンジョンは栄える街の近辺に設えられる。

・ダンジョンコアというものがあってダンジョンを管理している。

 ○ダンジョンにはダンジョンコアを管理するダンジョンマスターがいる。

 ○ダンジョンマスターは神々によって選ばれる。

・ダンジョンに出現するモンスターはダンジョンコアによって造られた幻獣の紛い物である。

 ○出現するモンスターは深度によって強さや種類が異なる。

 ○特定の階にボス部屋があり、ボスモンスターが配置されている。

・ダンジョンにはダンジョンコアによって用意された宝箱が出現する。

 ○宝箱は深度によって内容物の品質が上下する。

 ○ダンジョンで得られた宝箱の内容物は近隣の町や村で流通する。

・ダンジョンに放置された死体や装備品、アイテムは時間経過でダンジョンに吸収される。

・ダンジョンは宝箱で誘惑された冒険者に挑まれる。

・十分な冒険者を誘い込めないダンジョンは一定期間ごとにモンスターを溢れさせてしまう。

 ○溢れ出したモンスターは近隣の町や村をおそう“スタンピード”を発生させる。

 ○スタンピードを押さえるために街は冒険者にモンスターの駆除を依頼する。

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