第2話:龍と竜:『人化♀したドラゴンが遊びに来るんだよ』
<<龍と竜>>
【龍と竜】 1
<<天龍アストライアー:Ἀστραία>> 1
<<赤龍ルブルム:Rubrum>> 4
<<緑龍テアル:Teal>> 5
【龍と竜】
全ての幻獣の頂点。
孤高の八龍は当然として、下位種に至るまで強力である。空を飛び、恐るべきブレスで敵をなぎ払い、様々な魔法を操る高い知能と膨大な魔気容量を持つ。頑丈な鱗と驚くべき再生能力は受けに回っても脅威である。
龍はドラゴン、竜はドレイクと呼称される。ドレイクはドラゴンより二桁または三桁劣る。
「竜の血を浴びれば不死身になれる」
「竜の血は万病に効く」
「竜の鱗はあらゆる武器を跳ね返す」
「竜の牙はあらゆる盾をつらぬく」
こんな噂がまことしやかに流れるほど。
今日もドラゴン達は天を舞う。
<<天龍アストライアー:Ἀστραία>>
“唯一無二の、大いなるアストライアー”
愛称はアスタ|(Asta)。
三対の角は真っ直ぐ延びる、六翼の途方もなく巨大な龍である。
翼の内、肩と腰それぞれから伸びる二対は巨大で首から伸びる一対は小さい。
瞳は宇宙から観た地球のような虹色のアースアイ。
全身、紫に輝く金属光沢の鱗に覆われ、その巨体と合わせて存在感が著しい。
沈着冷静で好戦的でなく穏やかだが、一度怒り出すとまさに激昂であり、“破滅の極光”で眼前のすべてを消し飛ばす。
かつて“神殺し”の偉業をやってのけた。
孤高の八龍は互いに対等な関係であるが、アストライアーの実力が突出している事と偉業のせいで他の七頭から一目置かれている。
人間には興味を抱かないが、幻獣には関心があり、一角獣やニュムペーと交流がある。また、クラーケンやキマイラなど、大型の幻獣とも付き合う。
その所業と威風堂々たる姿から一般的なドレイクや古龍から敬遠されている。
神界リゼルザインドの神々は畏怖を込めて「唯一無二の、大いなるアストライアー」と呼ぶ。
惑星を東から西へ移動することが多いため、暁を輝かせながら現れる。
これを受けて人間達は「この世の真の支配者」、「天空の覇者」、「暁の女帝」または単に「暁光帝」と呼ぶことが多い。もっとも光明神と暗黒神の信者からは声を潜めて「あの女帝様」と囁かれている。
神殺しの後は上空を舞うまま、あまり地上には降りていない。それでもたまに湖で水柱を上げたり、砂丘を疾走する姿が目撃されている。また沿岸を泳いで津波を起こしていた。
ある時、何故か地上を曲がらずに一直線で走る遊びを始めて、鉱山と山脈に大穴を空けた。トンネルはヒト族が見上げて首が痛くなるほどに広く高く…それは大陸の各地をつなぐ重要な通路となり、“女帝の散歩道”と呼ばれるようになった。
人間からは存在そのものが禁忌とされ、関われば死を免れ得ぬと恐れられている。
実際、いくつかの国がアストライアーを利用して世界に覇を唱えようと試みて滅びている。魔法の儀式を行って召喚しようとしたものの、呼び出された女帝に王城が踏み潰されて果てたのだ。城下町は女帝が飛び立った時の風圧で壊滅した。
「九死に一生を得る」と同じ意味で「暁光帝の御前を駆け抜ける」が使われる。
動きも意向も全く予測できないので突然、現れてとんでもない被害をもたらすので「忍び寄る天災」とも呼ばれる。
いくつかの破滅的な災害が記録され、「暁光帝に関わる」=「この上ない愚行」との図式が出来上がった。
アストライアーから見れば人間はセンチコガネほどの大きさしかなく、悪意のあるなしに関わらず、近づけば大変な被害を引き起こしかねないのだ。
一部の人間達が宗教団体を作って拝んでいる。
人魚やユニコーン、ニュムペー、キマイラ、クラーケン、フェニックスなど、幻獣と親しい。
「自分、二番手ですから」と自分を卑下するキマイラのことを困ったものだと思っている。
海峡で歌うセイレーンが好き。
人語を解するが、人間と話すことはない。
幻獣は言葉に魔力を乗せて語るからアストライアーの鋭敏な魔気感知で容易に聞けるし、話すことも楽だ。しかし、人間は魔気容量の関係で言葉に魔力を乗せて話せないし、そんなことをしても魔気感知の鈍い人間同士では意味がない。
だから、人間の声はアストライアーには届かなかった。
そもそもアストライアーは人間が地上にいることすら気にしていなかった。人魚やニュムペーがしばしば人間について語るので「面白そう」くらいにしか考えていなかったのだ。
緑龍テアルから『世界を横から観る』ことを教わって初めて関心を寄せたくらいだ。
巡航高度1万m、亜音速で飛行する。呼吸しない。深海でも大気圏外でも生活できる。巣はないが月にもお気に入りの場所がある。
最高速度は激高して神を殺した時に1時間もかからずに大陸を横断していたからマッハ20くらいは出せるようだ。
天空を高く舞い、海洋を渡り、大陸間を駆けて世界中を眺めて暮らしていたが、緑龍テアルに誘われて人里に興味を持つ。人化の魔法も教えてもらい、その「世界を横から見る楽しみ」は初めて得られた経験であった。
やがて重力魔法を開発して質量をごまかすことを考えた。そのまま翼の力だけで飛ぶと地上が「やかましく」なるからである。また限定された範囲で重力を強めたり、逆に弱めたりできる。
「天龍の咆哮」は神々、人間、悪魔、天使、アンデッドの別なく震え上がらせる“不動金縛りの術”である。対象を恐慌に陥れる副次効果がある。
神気颶風|(エーテル颶風)はエーテルの奔流で霊体であろうが、物質であろうが関わりなく、ありとあらゆるものを翻弄する。暗黒神と光明神の戦い、その末期に立ちふさがる天使や悪魔、そして神々を吹き飛ばした。
ブレス“破滅の極光”は物質であれ、魔法障壁であれ、霊体であれ、神であれ魔物であれ、問答無用で無差別に消し飛ばす、威力、速度、範囲、いずれに於いても圧倒的な力そのものである。避けられない、防げない、受け流せない、この反則級のブレスが吐かれることはあまりないが、神殺しの偉業のおかげで世にあまねく知られており、“天龍アストライアー”が破滅の代名詞として恐れられている。
時間魔法を研究しており、対象の時間を進めたり遅らせたりできる。また、逆行させて以前の状態に戻せる。文字通り、覆水盆に帰らせる魔法だ。これを応用すれば回復魔法の代わりとして使える。ただし、知的生物に使えば記憶も巻き戻ってしまう。患者は自分が怪我をしたことさえ憶えていない。更に自分を治療できない欠点もある。
また、未来視や過去視もできるので予言の的中率も高い。戦闘に於いては相手の次の攻撃が視えるので来る前に対処できる。
天龍アストライアーは存在そのものが完全に反則であり、さすが“神殺しの怪物”である。
<<童女アスタ>>
身長1.41mの体重36kg。金属光沢の紫髪を腰まで流す、可愛らしい女児である。怪力と異常な頑丈さを除けば外見はヒト族と変わらない。だが、手足を動かす要領で長髪も操ってしまうのでヒト族であることが露見しやすい。“初級冒険者アスタ”を名乗る。
他人に警戒されたくない場合は童女の姿でヒト族に似せるが、行使できる能力に制限がかかる。
<<赤龍ルブルム:Rubrum>>
“強きルブルム”
二対の足と一対の翼、曲がりくねった角を生やす、典型的な姿の恐ろしく巨大な龍である。
獰猛で乱暴、頭に血が上りやすく、激高すると手が着けられない。もっともほぼ誰に対しても怒っているのでやり方を知っている者にとっては意外と扱いやすい龍だ。
近所のキュクロープス達やヒドラ、巨人からは親しまれている。
たまに青銅巨人タロスの軍団に挑まれて暴れているが、さすがは赤龍、ほとんど相手にならない。
活火山の中腹に棲み、しばしば溶岩の風呂に浸かる。当然、炎の魔法は無効である。
ドラゴンらしく、洞窟に金銀財宝を蓄えているが噴火による消失を恐れて気が休まらない。
そこで空間魔法を研究していざという時のために転移の魔法陣を備えている。
恐るべき火炎ブレスはまさしく業火であり、鉄ですら蒸発させる。
乱暴者だが天龍アストライアーには一目置いており、ルブルムにしては珍しく落ち着いて話す。
また、白龍ノヴァニクスについては完全に例外で本気で慕っている。ともに暮らすことも提案したが、火山は暑いのでと断られてしまった。
黒龍タブリスとはノヴァニクスを巡って対立しており、本気で争うことも。
<<緑龍テアル:Teal>>
“おぞましきテアル”、“病魔大帝プラーグェ”
三対の足で泳ぎ、一対の翼で飛ぶ巨大な龍である。膨れた胴体と大きな口、一本角と並んで突き出す牙は凶相を示す。翼のあるワニと言ったところか。
冷徹で慎重、根気強く観て、試す。失敗を嫌うが、厭わない。財宝には関心がないものの、自分の研究を大切にしている。研究成果を他の龍に告げるのが何よりの楽しみ。近隣の龍が学術に興味を示さないことを嘆いている。
ダヴァノハウ大陸の東、メスリエールの地にある藻が繁茂する緑瘴湖に棲み、普段は湖底に潜んでいる。
微生物を好み、難培養の生物を単離して観察している。
人里に降りることが多いのでその発展にいち早く気づいた。
真っ先に人化の魔法を開発して自ら実践、人里に隠れ住み、対象を横から観察することの面白さに気づいた。
天龍アストライアーとも親しかったので「世界を横から観る」遊びを語り、大いに感動させた。同時に人化の魔法も教えて人里での生活を指導した。
悪夢の病毒ブレスは生物に選択的な影響をもたらし、急激に生命を消耗させる。緩慢な死が地獄の苦しみを与えて対象は悶えながらテアルを怒らせたことを悔いて死ぬ。このブレスの恐るべきは威力よりも選択性にある。大勢の中の一人だけにも効くのだ。究極の暗殺手段である。
幻影魔法を得意として微生物を大きく見せたり、遠くの月や惑星を近くに見せて調べている。人化の魔法は対象の本質そのものを幻に落とし込み、質量や体積を無視して変化させる。当然、千里眼も得意で遥か彼方の出来事をその場にいるかのように観察できる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます