世界観とキャラ紹介:『人化♀したドラゴンが遊びに来るんだよ』
Et_Cetera
<<第30話くらいまでのネタバレを含みますよ>>
第1話:世界観の概要:『人化♀したドラゴンが遊びに来るんだよ』
0,基本的な概要 1
1,基本的な世界観 2
<<技術水準>> 4
・度量衡 4
・数学 4
・文字 4
・言語 5
・文明国と非文明国 5
・通信 5
・情報 5
・図書館 6
・医療 6
・移動 6
・動力 6
・教育 7
・建築 7
<<宗教と各国の勢力>> 7
・人権意識 7
・身分制度 7
・宗教 8
・軍事 8
・兵科 8
・冒険者ギルド 9
・商業ギルド 9
3,幻獣について概説 10
4,幻獣の勢力 10
5,神々について概説と各キャラ 11
6,神殺し 13
0,基本的な概要
惑星ヴォイデは地球によく似ている。
地軸は惑星公転面の法線に対して23.4°傾いている。
1日は24時間、一年は365.25日である。
エレーウォン大陸は最大である。
最初に孤高の八龍がいた。
幻獣がいる。
神々は人間の祈りを魔力に変えて活動する精霊の一種である。
各地に文明ができると宗教が生まれて神々が生じた。
神々は肉体を持ち、地上を闊歩して、自ら布教に務めた。
神魔大戦が勃発した。
天龍アストライアーにより神殺しが成し遂げられた。
暗黒神と光明神が死んで肉体と魂を失った。
恐れおののいた神々は地上を去った。
ゲローマーとブジュッミは精神体のみ復活した。
神々は直に干渉することをあきらめてお告げという形で関わる。
神が実在するので宗教は分派できない。
天龍アストライアーは幻獣と交流がある。
天龍アストライアーは人語を解する。
天龍アストライアーは魔力の弱い声が聞こえない。
天龍アストライアーは“暁光帝”なる言葉を知らない。
農業革命で北方の開発が進み、食糧増産が成る。
緑龍テアルが「世界を横から観る」楽しみに気づく。
天龍アストライアー、地上に降りる。
1,基本的な世界観
地球によく似た惑星ヴォイデ、各地に文明が興り、宗教が発生すると神々は地上を闊歩して自ら不況に努めていた。
当時、その最大のエレーウォン大陸で光明神と暗黒神が支持率を競って互いの信者達を戦わせていた。
光明神は天使を、暗黒神は悪魔を遣わせて人間に布教した。個人の武力を尊ぶ暗黒神の教義により、優れた信者はエリート信者“魔族”として登用された。光明神の教義は「戦いは数だよ、兄貴」だったので表向き特別にエリート信者を作らなかった。
戦争は激化して、多くの美しい都市や豊かな耕地、牧場が破壊された。
孤高の八龍はそのさまを苦々しく見ていたが、神々の諍いに口を出すことは差し控えた。諍いに介入するには八龍の相互協力が必要になると思われたため、孤高を旨とする彼らは嫌がったのである。
しかし、戦争が幻獣の生活をも脅かし始めるとそうも言っていられなくなった。屍導師や吸血鬼、キュークロプス、キマイラ、マンティコアらが陳情に訪れ、八龍も動揺する。そしてユニコーンの群生地が焼かれた事でついに八龍が壱、天龍アストライアーが怒った。
激昂したアストライアーはいきなり万魔殿に乗り込んで暗黒神を殺し、返す刀で光明神も殺めた。
他の七龍に相談することなく行われた“神殺し”の偉業である。滅ぼされた二柱は酷く怯え、アストライアーの意向を鑑みて復活することをあきらめた。
他の七龍もまた大いに困惑したが、相次ぐ陳情に疲れていた事、アストライアーの実力を思い知らされた事などに満足し、特に話す事はしなかった。「怒ったアストライアー、本気で怖ぇ」と考えたくらいである。
滅ぼされた二柱であるが、肉体の喪失で震え上がった。そこで精神体として配下の天使や悪魔、魔族に語りかけて信者を増やすだけにしたのである。
他の神々もアストライアーを恐れて地上を闊歩することをやめて神界リゼルザインドへ引きこもった。
神々は人間への直接干渉を避け、宗教は神々のお告げに従うようになる。
それから長い年月が経った。
孤高の八龍は孤高のまま暮らしていた。
ある時、珍しくテアルとノヴァニクスが邂逅してそれぞれの研究成果を比較検討した結果、寒冷地の耕作や重量有輪犂、三圃式農業が生まれてしまった。しかも、気をよくした2頭はこの新技術を人里に伝搬してしまう。
その結果、エレーウォン大陸で人口が増加し、砂漠や寒冷地の開発も進んだ。
これに刺激された光明神と暗黒神が信者達を扇動し、再び、かつてのような争いが起き始めてしまった。同時に人里の文化も発達して、町は大いに華やいだ。
孤高の八龍も刺激を避けられ得ず、関心を呼び起こされる。
そして…ついに天龍アストライアーも地上に降りた。
<<技術水準>>
国や地方によって差が大きい。
ゴブリン族の集落は狩猟で食料を採り、竪穴式住居に住む。洞窟を利用する集落も多い。道具はほとんど石器である。
オーク族はそれよりも規模が大きいものの、技術水準はあまり変わらず、鉄器は交易によって得る。
逆にエルフ族やマタンゴ族は高い水準の魔法文化を持ち、医療技術も進歩していてけが人や病人が少ない。
ハルピュイア族にもなれば移動も輸送も飛空船が利用される。
・度量衡
長さ…1[キュビット]=0.44[m]
重さ…1[シェケル]=0.013[kg]
体積…1[エパ]=0.023[m3]
時間…1[ろうそく]=1[時間]
・数学
ネイピア数は発見されている。
三角法はすでに確立している。
文明国では計算尺が利用されている。
会計計算などは計算補助具(ラブドロジー)が用いられる。
・文字
ハルピュイア文字がもっとも権威ある文字である。
国際的な条約はハルピュイア文字で表現され、それぞれ母国語のコピーを取る形で宣言される。
各国の公文書もそれよりも一段下がるリザードマン文字文字で表現される。
また論文や聖典、数学など権威ある文書はすべからくリザードマン語とリザードマン文字で表現される。
リザードマン文字を簡略化した人類共通文字が商取引などの私文書に使われる。
王族、上級貴族、一部の学者はハルピュイア文字が使える。
公職に就く貴族、神職はリザードマン文字まで使える。
・言語
各国の支配階級はリザードマン語を話し、日常会話もリザードマン語である。
平民達は母国語で話す。
公文書はリザードマン語をリザードマン文字で描く形で表現され、権威を与えられる。
告示は母国語を人類共通文字母国文字で表現する形式でリザードマン文字の記述に並列して表記される。
商取引は各国の母国語、または人類共通語と人類共通文字で記述される。
・文明国と非文明国
自国の歴史を自国の言葉と文字で記述できる国を文明国と言う。政府が公式書類に従い、告示を文字表現できる。
対して、政府が公式文書を持たず、歴史は口伝、告示も口頭のみの国を非文明国という。
オーク族の多く、ゴブリン族の殆どが非文明国である。パタゴン族も怪しいが、ホビット族が補佐している。
・通信
平民は手紙、主に冒険者が配達する。伝書鳩による配達は高額である。エリートは光魔法による光通信で情報のやり取りを行い、短距離であれば風魔法により通話できる。
・情報
紙媒体が主である。情報の記録も基本的に紙で文字表現。活版印刷は土魔術師が鉛合金を加工して行う。肝心の紙が少し高価であるため、活字の本は高い。読み物は大切にされて回し読みされる。
高密度の記録媒体として魔石があるが、高価。扱いがデリケートで強い魔気力線に晒すと情報が破損する。映像データなどはこの魔石に保存する必要がある。読み取るにも書き込むにも光魔法が必要。
マーフォーク族の使用する“紙”は特殊であり、ある生物の分泌物を平たく固めたもので耐水性が強い。
・図書館
広く知らせたいことを公開する国営の図書館がある。利用は無料。これに対して富裕層が自分が売りたい情報を展示する図書館もあり、こちらは有料。稀少な魔法技術などは後者が主である。
・医療
貧者は神殿や教会が運営する無料の治療院へ、富者は有料の高級治療院へ行く。
・移動
陸運は馬車が主流である。馬車は大型化が著しい。
海運は船でこちらも大型化が進んでいる。
空運は厳しく限定される。飛空船はハルピュイアのみ。ワイバーンによる騎乗は竜帝国のみ。
・動力
風力、水力が主流。海運に用いられる大型船は帆船である。もっとも風魔導師が風を操るので操船技術はすこぶる高く、また風上に進むこともできる。
通常の馬車は馬が牽引するが、大型馬車は召喚魔導師が操る大型の魔物が牽引する。
ハルピュイア族の場合、飛空船を飛ばす強力な魔鳩炉が開発されている。
・教育
ヒト族の場合、識字率は平民が10%ほどでエリートは90%以上。数学については幾何学がそれぞれ1%と60%、算術がそれぞれ5%と70%ていどである。
数学は“グラフ”の概念あり。
エルフなどの種族は識字率、数学ともに100%である。
法学、医学、哲学を教える大学がある。理学、数学、魔学を教える大学は別で軍学校であり、入学審査が厳しい。主として首都に開かれている。
武術や魔法を教える実学メインの予備校は大きな街にあり、富裕層の私塾として人気である。
初歩的な読み書きと算術を教える私塾は町村レベルで存在する。読み書き計算ができる者は一族に一人は欲しいのでこちらも盛況である。
・建築
文明国はそれぞれ適した素材を土魔法で操って建築する。
非文明国は土魔法が発達していない上に建築工学も発達していないので竪穴式住居だったり、洞窟をそのまま利用していたりする。
<<宗教と各国の勢力>>
・人権意識
非常に薄い。いや、無い。
権利と義務が明文化されているのは文明国のみである。
・身分制度
多くの場合、神官&王侯貴族、市民、非市民、奴隷の順番に権利と義務が緩くなる。
例えば、犯罪の通報は市民の義務だが非市民にとっては義務にならない。市内に不動産を得ることは市民の権利だが、非市民は許されない、等。
性別を基準とした偏見や差別はなくなりつつある。
魔法技術の発展が女性の兵役を易くさせたから。
筋力は♂が、魔力は♀が強い傾向がある。
・宗教
光明教団と暗黒教団が主な一神教で、信者の囲い込みによる祈りの質の強化を図っている。
他は多神教である。一人の信者を複数の神々が共有する形になるのでそれらの神々は一神教を厚かましく思っている。
エレーウォン大陸の各国は多くの神殿や教会を擁する多神教タイプと国教を決めて熱心に奉ずるものがある。
かつて、“神殺し”の偉業が為される前は神々が地上をのし歩いて直に信者を導き、光明教団と暗黒教団が隆盛を極めて信仰を押し付けていたが、現在は神々が隠れて両教団もおとなしい。今のところは。
・軍事
封建制国家は地方領主とそれが率いる傭兵が主体である。傭兵はしばしば盗賊に変わる。同じく、盗賊が傭兵になることも少なくない。
中央集権国家には職業軍人がいて国軍が主力である。
海軍は海賊も私掠船も国軍も盛ん。商船が武装化して私掠船になることも。漁師が勇んで海賊になることも。
・兵科
以下の区分があるものの、魔導師化が進んでいる。
歩兵:強化&弱化魔法による支援が求められる。
工兵:光魔法による撹乱、土魔法による陣地の構築など。
騎兵:召喚獣に騎乗して戦う。召喚獣は利点が多い。
砲兵:精霊魔法による遠距離攻撃を担う、戦場の花形。
輜重兵:土魔法によるゴーレムが陸送の主体を担う。
・冒険者ギルド
大陸の各国で利用できる個人の証明書、冒険者ギルドカードを管理する。これは複製が難しく信用されている。
冒険者ギルドは冒険者と傭兵に信用を与えると同時に信用を維持するべく内部の規律を正す部署を持つ。
しかし、冒険者と傭兵の区別は判然としない。すべて自己申告である。
ギルドが斡旋する仕事、そして内部の業務は…
事務…冒険者登録、ギルドカードの発行、違反者の告知、仕事の斡旋、冒険者ギルドの広報&宣伝など。
代筆…代筆する。
会計…会計する。
調査…調査する。
採集…鉱石や薬草を取ってくる。
狩猟…貴重な素材の原料をモンスターを狩る。
討伐…有害なモンスターや危険な盗賊を討伐する。
護衛…用心棒として依頼主を守る。
戦争…傭兵として戦争に加わる。
訴訟…弁護士として訴訟を受け持つ。
暗殺…隠れて人間を殺す。
拉致…武力で強引に人間をかどわかす。
粛清…ルール違反した冒険者を懲らしめて公開する。
…以上である。下の三件は特殊であり、「冒険者ギルドの裏稼業」と呼称され、一部の選ばれた冒険者もしくは傭兵のみに斡旋される。
メンバーは登録証によって管理されている。
初級:木札
下級:素焼き札→瀬戸物札→銅板札
中級:鉄札
上級:銀札
特級:金札
超特級:白金札
・商業ギルド
大陸の各国で利用できる個人の証明書、商業ギルドカードを管理する。これは信頼性は冒険者ギルドカードに劣るが、登録がかんたんでそれなりの身分証明書として機能する。
主に商人が利用する。
3,幻獣について概説
幻獣は虚無から生まれる。
幻獣に性別はない。
幻獣は生殖しない。当然、親もいなければ子もいない。
幻獣は成長しない。当然、老いない。
幻獣は病まない。しかし、呪われはする。
幻獣は嘘が吐けない。
幻獣は社会性に乏しい
幻獣が自力で人化するには幻影魔法の習得が必須。
幻獣は妖女サイレンの呼び鈴で人化できる。
幻獣は話す場合、声に魔力を乗せて語る。
幻獣は魔術式を魂に刻み込んでいる。
幻獣は魔力の回復が速く、2秒前後で全回復する。
4,幻獣の勢力
あくまでも個体としての能力を評価する。
一番手から七番手までに分類される。
・七番手(E級)……初級冒険者パーティー
・六番手(D級)……下級冒険者パーティー
・五番手(C級)……中級冒険者パーティー
・四番手(B級)……上級冒険者パーティー
・三番手(A級)……特級冒険者パーティー
・二番手(AA級)…超特級冒険者パーティー
・一番手…該当するランクなし
以上が冒険者ギルドの決めた対応方法である。
もっとも、冒険者ギルドはこれらの対応を推奨しているだけで規制しているわけではない。初級冒険者パーティーが一番手の幻獣に挑んだところでそれは自由。
また、仲間の冒険者が暴挙を止めることもない。
その結果、死んでしまっても、一生逆立ちして歩く呪いを掛けられたりしても、冒険者ギルドは関知しない。
それが冒険なのだから。
5,神々について概説と各キャラ
「神」と呼ばれる者は幻獣の一種であり、正式な分類では「神霊」である。精霊に近い。
精霊との違いは信仰によって神格(魔気容量)が増減すること。
神霊は精霊や亡霊が変化した者である。
神霊と精霊、そして亡霊、どちらが有利なのか。信仰を集められれば神霊が強くなり、集められなければ弱まる。場合によっては信仰の象徴を残して失せる…なんてこともあるらしい。
だから、多くの神々は信仰を集めることに熱心である。
祈られれば祈られるほど神格は上がる。
祈りが失せれば消滅の危機。
人間に依存する存在なのだ。
神格が上がれば、驚異的な奇蹟をもたらせる。
それが影響すれば更に祈りが集まる。
しかし信者たる人間の数は有限である。
だから取り合いになる。駆け引きが生まれる。
それでも過当競争は避けたい。
そこで生まれたのが神々の住まう国リゼルザインドだ。
大陸の東、高山の頂に作られた神々の場所。
神界リゼルザインドには神々が住まい、互いに牽制しながら過当競争を避けつつ、人里から信者を募っていた。
神々は人間と同じように肉体を持ち、ある者は子供のように小柄で、ある者は見上げるほどの巨体で、地上をのし歩いていた。時には王の前に現れてあれこれ命令し、ある時は神殿に赴いて自ら祭りを執り行い、人々に賛美歌を歌わせて悦に入っていた。
神界の有力者は…
怠ける大御神オルゼゥブ:最大の神格を誇る。怠け者だがなぜか信仰は篤い。
主神:神界リゼルザインドのそのもののまとめ役、管理責任者。神のお告げを使いこなし、神力で命令を遂行させる。
天王:軍務に就かない天使の管理責任者。神々に仕える天使らをまとめる。
地王:大陸に住む人々の管理責任者。神々の規則違反を取り締まる。
海王:海洋や湖に住む人々の管理責任者。神々の規則違反を取り締まる。
軍王:武闘派の天使を集めて軍隊を組織している、まとめ役。自身も切っての武闘派であり、魔法も物理も遠戦も白兵戦もこなす。神々の諍いを幾度となくいさめてきた実力者である。
豊穣神マァルト:信者の獲得数、二位を大きく引き離して圧倒的に第一位。「万年豊作」を唱えて人気を集めている。祈りの質が低いことが悩み。
光明神ブジュッミ:新進気鋭の人気者。“唯一絶対神”を標榜し、信者の獲得数№2である。狂信的な信者が多く、祈りの質が高い。配下の天使も数が多い。
暗黒神ゲローマー:新進気鋭の人気者。“恐怖の大王”を標榜し、信者獲得数№3である。祈りの質は更に高く、狂信者が更に多い。有力な信者を選抜して奇蹟を授け、強力な手駒“魔族”とする。配下の悪魔も武闘派そろい。
博打の神ズバッド:商売や博打の神。「買って、売って、打って、打って、大もうけ!」を説く。人気があって祈りの質もなかなか。
享楽神オヨシノイド:トリックスター“Oiosynoid”、酒と酩酊、淫蕩、乱痴気騒ぎの女神(Διϝνυσοιοの逆読み)
立ち昇る烟りの神キルウルウグング:かまどに佇み、人々の祈りを神界リゼルザインドに届ける神。どんなに祈っても届かなければ意味がない。きっちり届けて聞かせる神は便利である。
…と言った形である。
<<光明神ブジュッミ>>
信者の獲得と維持を最優先にして、修行はほどほどにさせている。個人技よりも協調と協力を重んじる。その戦術は数を頼みとした人海戦術である。
特別な信者は作らない。指導者の選別も信者に任せている。
宣教師は既存の知識と技術の啓蒙に努めるだけで神から奇跡を授かるようなことはあまりない。
天使は信者を見守るが助けることは禁じられている。
「産めよ、増やせよ、地に満てよ」を勧め、ひたすら数を優先する。そのため、同性愛を疎んじており、表向き禁じている。
唯一絶対神を標榜し、他の宗教を同時に信じることを禁じている。
<<暗黒神ゲローマー>>
信者に過酷な競争を課し、修行を奨励している。信者それぞれの個人技を重視して「より優れて有れ」と煽る。
直属の悪魔とは別に有力な信者から選抜して奇蹟を授けて“魔族”と成し、エリートとして厚遇している。
魔族は強力な魔法を使って信仰の拡大に努める宣教師である。
悪魔は魔族を補佐するだけで、人間への直接的な干渉は禁じられている。
魔族の勝利は信者の獲得である。改宗であればなお良い。
しかし暗黒神崇拝は過酷であり、棄教も少なくない。
どうしても数の面で不利になりがちなので軍事的には消耗を抑制する戦術を取る。魔族も回復系や防御結界の術が使えるものを優遇している。
「戦って死ね」が教義なので恋愛は自由。同性愛だろうが死体愛好癖だろうが干渉しない。
“恐怖の大王”を標榜し、他の宗教を信じることを禁じている。
6,神殺し
かつて、光明神ブジュッミと暗黒神ゲローマー、それぞれの信者が激しく布教合戦を行い、それが高じて大陸全土を巻き込む戦争に発展した。
光明神の側は国家連合が総力を挙げて、暗黒神の側は最強のエリート信者“魔王”が魔族の軍団を率いて、各地で死闘を繰り広げた。多くの国々が巻き込まれ、否が応でもどちらかに付くことを迫られた。そして信仰はともかくとにかくどちらかに付いた人々は争いを強制され、無駄に多くの血が流された。
エルフ族、ダークエルフ族、コボルト族、ドワーフ族、オーク族、ゴブリン族、パタゴン族、リザード族、マーフォーク族、獣人族、マタンゴ族、ハルピュイア族、そしてヒト族。同じ種族が宗教の違いで分かたれて、血で血を洗う激戦となった。
激化する戦いは幻獣にも及んだ。
トロルが、オーガが、キュークロプスが。
キマイラが、マンティコアが、フェニックス、グリフォン、ケルベロスが。
ヒポグリフが、オウルベアが、ヘルハウンドが、モスマンが。
ペガサスが、ユニコーンが、スレイプニルが、ケルピーが。
人魚が、半魚人が、クラーケンが、シーサーペントが。
やがて死人が蘇った。
屍導師が、吸血鬼が、幽鬼が、亡者が、骸骨が、墓鬼が。
そしてドラゴンまでもが参戦してしまい。
ヒュドラ、ワイバーン、ウィルム、甲冑竜、火竜、水竜、地竜、氷竜、雷竜が海に空に激闘を繰り広げた。
只、孤高の八龍だけが関わりを絶って世界を眺めていた。
そんな戦争がついに百年を迎えた、ある日…
勇者が魔王を討った。
光明神の勢力は大いに喜んだ。これで戦争が終わると。
だが、逆に戦争は激化した。
仇討ちに燃える魔族は今までにもまして激しく戦い。
やがて新たな魔王が復活し、
くだんの勇者も英雄と称えられたものの、すぐに戦場に斃れてしまい。
今度は英雄の仇討ちに燃える騎士達が雄叫びを上げる。
そんな中、ユニコーンの森が焼かれ、ニュムペーの泉が糞尿に汚された。
魔族と騎士が参戦を促したものの、拒んだユニコーンとニュムペーに対して両陣営が見せしめにと報復合戦を仕掛けたのだ。
ユニコーンは嘆いて逃げ出し、ニュムペーが悲劇を歌った。
それらの涙を、立ち昇る烟りの神キルウルウグングが天龍アストライアーに届けたのだった。
その森はたまたまアストライアーのお気に入りだった。
嘆き悲しむユニコーンとニュムペーを見て天龍は激怒。
まず、西は魔界の万魔殿に赴き、暗黒神ゲローマーを誅殺した。魔族の群れが頑強に抵抗したがものともせず、命がけで抗う暗黒神に破滅の極光を喰らわせて一瞬で肉体も魂も消し飛ばしたのだ。
そしてすぐさま、神界リゼルザインドに向かう。
神々はその威光を賭けて迎え撃ったが、天使の軍勢もまるで歯が立たず。門ごとエーテル颶風で吹き飛ばされた。
神々の王は天王、地王、海王を集めて声を合わせ、「悪竜よ、去れ!」と神の声で命じたが。
天龍アストライアーは「聞くか、呆け!」と一喝、神々の王を怯ませた。
おののく神々の中で只、一柱、軍王だけが剣を手に立ち向かうものの。
命がけの一撃は天龍の鉤爪にはじかれてしまい、「失せろ、雑魚が!」と罵られ、軍王は体ごと壁にめり込んで動かなくなった。
一柱残された光明神ブジュッミはまぶしい光を放とうと構えた。目をくらませた隙に「死なばもろとも!」と他の神々の中に逃れようとしたのだった。が、その動きを察知されてしまう。奇蹟が発動する前に床から吹き出したエーテル颶風に宙高く吹き飛ばされ、そのまま破滅の極光を喰らい、同じく肉体も魂も消し飛ばされてしまった。
天龍アストライアーは一言、「迷惑をかけるな」と告げて去った。
大御神オルゼゥブは何もできず、只、立ちすくむだけだった。
ここに神界リゼルザインドの地位はどん底まで下がってしまい。
神々の多くが光明神と暗黒神を恨んだ。
それでも天龍を呼んだ立ち昇る烟りの神キルウルウグングは恨まれなかった。
そもそも神々は二柱のやり過ぎをうとんでいたのだ。
分け御霊から光明神と暗黒神は魂だけ復活し、精神体としてのみ活動するようになった。
奇蹟の乱発を控えて、お告げを活動の基本に置いたのだった。
百年続いた戦争は“神魔大戦”と呼ばれるようになり、ここに終わった。
光明神と暗黒神の勢力は著しく衰退した。
戦争に巻き込まれた国々は押しつけられた信仰を捨て、無駄に血を流させられた幻獣は「唯一絶対神(笑)」、「死んだぜ!あれで恐怖の大王だってよ」と口々にあざけった。
神々の威光は色あせて。
のし歩くことをやめて地上より去った。
ドラゴン達は今更ながらに孤高の八龍を敬った。
戦争終結の鍵となったユニコーンと精霊は森の再生に向かう。天龍への感謝を歌いながら。
そして神々は長くうつむく羽目に陥った……
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