第13回/話

「私さ、働いてみようかなって、思っているんだけど」


〈だけど、なんですか?〉


「え、あ、いや、うーん、どうかな、という相談?」


〈なぜ、疑問形?〉


「なんとなく?」


〈働く必要があるのですか?〉


「それは、お金に困っているのか、という質問?」


〈向かう先はそうなります〉


「うーん、特別困っているわけじゃないし、欲しいものがあるわけでもないから……。お金が欲しくて働くわけじゃあないなあ……」


〈では、働くという行為をしてみたいわけですね?〉


「うーん、それもどうなんだろう……」


〈その必要がなければ、働かない方が懸命です。趣味も、仕事も、大して変わりませんが、仕事となると、制約が付いてくることになります〉


「じゃあ、趣味にしろってこと?」


〈趣味の方にウエイトを置いておくのが良いでしょう〉


「でも、人のためになることも、してみたいかも」


〈仕事でなくても、人のためになることはできます。仕事でないとできないというのは、現代に蔓延している幻想です〉


「なんか叱られているみたい」


〈そうですか? 申し訳ありません〉


「いや、いいよ、全然。むしろ、相談に乗ってくれて嬉しい〉


「これが私の趣味です。人のためになっているでしょう?」

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